『スタンピード』(The Rare Breed)['66]
監督 アンドリュー・V・マクラグレン

 邦題になっている“牛の暴走”は、確かに見せ場として出てはくるけれども、仕掛けた悪牧童サイモンズ(ジャック・イーラム)の意図がただの嫌がらせにしか映ってこず、タイトル同様に何とも取って付けた感が否めなかった。原題の“希少種”のほうが遥かに真っ当に作品を表している気がする。

 1884年の全国牧畜博覧会の場面から始まった本作において、米国で主流のロングホーン種に対する英国原産のヘレフォード種を意味する原題なのだろうが、そのこと以上に、日本の“火事と喧嘩は江戸の華”に通じるようなアメリカ産の喧嘩っ早い牧童サム・バーネット(ジェームズ・スチュワート)に対する退役英国軍人の俺様牧場主ボーエン(ブライアン・キース)を対照させた、昔気質のカウボーイたちのことを指し示しているような気がした。序盤で例によって、鉄道の普及に伴う牛追い廃業の話が出てきていたのも、それ故なのだろう。

 それはともかく、年頃の娘ヒラリー(ジュリエット・ミルズ)を連れた寡婦マーサを演じていたモーリン・オハラの気丈で凛とした女傑っぷりが、なかなか見目麗しく大いに魅せられた。カラフルな衣装をとっかえひっかえ披露していて、西部劇らしからぬ看板ぶりだった。マーサもまた、レア・ブリードとしたものだろう。

 そして、ダラダラぼんやりのミスターバーネットよりかは、見掛けによらぬ紳士的メンタリティを備え、立ち居振る舞いにもメリハリの効いていた英国産ボーエンのほうが、何を取ってみても上回っていて魅力的だと感じられたものだから、マーサの選択の気が知れなかった。




推薦テクスト:「やっぱり映画がえいがねぇ!」より
https://www.facebook.com/groups/826339410798977/posts/2103332639766308/
by ヤマ

'22. 6.26. BSプレミアム録画



ご意見ご感想お待ちしています。 ― ヤマ ―

<<< インデックスへ戻る >>>