『プロフェッショナル』(The Professionals)['66]
『シノーラ』(Joe Kidd)['72]
監督 リチャード・ブルックス
監督 ジョン・スタージェス

 先に観た『プロフェッショナル』では、オープニングでトップにクレジットされるリー・マーヴィンの演じたリコがメキシコ革命戦線から離れ、アメリカに戻ったのが1915年だとか言われていた。だから、既に20世紀に入っていていわゆる西部開拓時代を過ぎている時代の物語で、列車や車が登場するのはまだしも、目的地襲撃に際して三人が懐中時計で分刻みの作戦を遂行するような映画を西部劇とすることが妥当かどうか疑念が湧いてくるところもあるが、本作が極普通に西部劇として位置づけられているのは、プロフェッショナルとして集められた男たちのキャラクターが数多の西部劇を彩ってきたマッチョたちの典型と言えるものだからだろう。

 場所がメキシコで、時代が第一次世界大戦中だろうと、これは西部劇でいいわけだ。それなら、先ごろ観たばかりのクライ・マッチョも紛れもなく西部劇だと改めて思った。

 ジーザスを名乗っているとのラザ大尉(ジャック・パランス)の語っていた「革命は大恋愛のようなものだ」との台詞がなかなか含蓄があって感心した。惚れた相手は女神ではないから、至らぬ点も欠点もあるけれど、それでも成就に向けて命を燃やすに足るものに間違いはないというわけだ。そして、愛なき恋愛が欲情でしかないように、革命に大義は欠くことができないと言う。恋愛において愛を変質させずに貫くことは極めて困難で、時間とともにその在り様が変わってくるように、革命における大義も変化するというようなことまでも語らせていて驚いた。

 ラザ大尉率いる山賊に誘拐された人妻(クラウディア・カルディナーレ)の奪還を請け負ったプロフェッショナルたちを描く娯楽活劇だと思っていたら、誘拐ではなく身代金目当ての逃避行であって、しかも単純な不倫逃避行でもない話だった。敵味方に分かれて銃撃戦も繰り広げながら、かつては同志として革命戦線に身を投じた因縁のなかで育んだ友愛も信頼も変質させずに内に抱えつつ、出し抜かれないよう最大限の注意を払い合うという一筋縄ではいかないスケール感のある人間関係が描かれていたところに、先ごろ読んだばかりの手塚治虫のシュマリを想起したりもした。

 射撃の名手で豊満な肉体に惜しみのない革命の女戦士チキータ少尉とビル(バート・ランカスター)の間でも、ラザとリコの間でも、それが交わされていて、革命戦線から離れて帰国した後、博奕に敗れ騒ぎを起こし入獄していたビルを保釈させ、爆薬プロフェッショナルとして呼び寄せたリコとビルの関係にもなかなか妙味があった。

 そして、メキシコから豊満美女マリアを娶って強引に連れてきたテキサスの富豪グラント(ラルフ・ベラミー)の象徴する“強奪アメリカ”に対置された、革命戦士として生死を共にしたラザ、リコ、ビル、チキータのその後の生き様に託されていたように感じる“混迷メキシコ”と、そのなかに潜む意気地が面白かった。

 弓矢とナイフの達人である黒人ジェイク(ウディ・ストロード)はまだしも見せ場があったけれども、馬のプロフェッショナルであるはずのハンス(ロバート・ライアン)に至っては、ここからなら北の水場を目指して南には戻らないはずだから馬を殺すなとビルを制してリコに注進したことでビルを窮地に陥れたことはあっても、ほとんど見せ場がなかったように感じられ、少々勿体なかった。もっともっと面白い作品にできたのではないかと思うと同時に、むかしのエンタメ映画の懐の深さに感心させられる作品でもあったような気がする。


 翌日に観た『シノーラ』は、邦題がどういう意味なのだろうと思っていたら、地名だった。祖父たちが入植を認めたばっかりに自分たちの土地が白人に奪われたと訴えていたルイス・チャマ(ジョン・サクソン)が、メキシコ人なのかインディアンなのか、よく分からないままだったけれども、チャマに対するジョー・キッド(クリント・イーストウッド)のスタンスが、前日に観たばかりの『プロフェッショナル』に近く、大地主のフランク・ハーラン(ロバート・デュバル)からの請負仕事としてチャマ追跡団に加わることになる展開も同じだった。どうやらBSプレミアムの番組編成者の趣向によって仕組まれたプログラムだという気がしてならなかった。

 ジョン・スタージェス監督作品だけあって、画面の充実度とか運びのスマートさでは、本作のほうが優位にあるように思われたが、人物造形の妙味や台詞の含蓄においては、『プロフェッショナル』のほうがワンランク上のような気がする。

 メキシコが舞台ではなかったから、チャマたちがメキシコ人ということならば、アメリカが米墨戦争で割譲を受けたというニュー・メキシコ州なのかもしれない。時代的なものも定かではなかったけれども、『プロフェッショナル』のような列車も車も懐中時計も出てこなかったし、シノーラの町の感じからも同作よりは古く、メキシコ革命前の時代なのだろう。

 こうして並べて観ると、改めて『プロフェッショナル』は、なかなかの作品だったのだなという気がしてきた。
by ヤマ

'22. 2. 5,6. BSプレミアム録画



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