『温泉おさな芸者』['73]
『東京ふんどし芸者』['75]
監督 鷹森立一
監督 野田幸男

 鈴木則文監督の『温泉みみず芸者』['71]&『温泉スッポン芸者』['72]を観たら、続きが届いたものだ。いずれも初めて観たが、予想を上回る“おゲレツさ”に唖然とした。

 先ごろ再見した巨人と玩具['58]について、あの当時の「猛烈」ではない「モーレツ」の時代の空気と記したが、それで言うなら、「あの当時の「下劣」ではない「おゲレツ」の時代の空気」そのもので、いまの時代なら到底やれない昭和ならではの馬鹿映画という外ない気がする。もはや性愛映画とも言えないフーゾク映画を観ながら、ある意味、ポルノ映画よりも顰蹙を買うように思えて仕方がなかった。

 小煩い始まり方がずっと続く騒々しさに些か閉口した『温泉おさな芸者』では、おゲレツ芸者遊びに現を抜かしているのが、当時の政権与党に対する献金や大票田を抱えた業界としての強力な圧力団体を擁していた医者と農協と土建屋のグループで、お約束のように大学教授も出てくるなか、政治家が登場しなかったのが意外だった。そして、浅はかで無鉄砲な高校生芸者たちの見舞われた窮地を救うのが、本作の二年後に映画になり、その後、シリーズ化されるほどの人気を博した“トラック野郎”だったりするところが、いかにも東映作品らしくて可笑しかった。

 あのねのねがしれっと♪アンネがなければできちゃった…できちゃったのは赤ん坊♪などと歌う『赤とんぼの唄』は、当時、大流行したので聞き覚えがあるし、ゲストの女性がジャンケンに負けて脱いだ服をその場で競り売りに掛ける“コント55号の野球拳”がテレビ放映されて高視聴率を稼いでいた時代なのではあるが、それらを真似て歌いながら高校生芸者がおゲレツ座敷を務めるおふざけ映画など、今ではもう絶対に作れないに違いない。当時、テレビコマーシャルで一世を風靡した小川ローザの「Oh!モーレツ!」など及びもしないモーレツさだった。

 続いて観た『東京ふんどし芸者』でもまた、呆気に取られる「花電車九番勝負」に恐れ入った。女性器を使った、①書初め、②火消、③ラッパ吹き、④煙草吸い、⑤綱引き、⑥バナナ切り、⑦銭つかみ、⑧卵飛ばし、⑨ビール飲み、勿論おふざけ映画としての誇張があるのは間違いないが、それを考慮すれば、一応どれもが実際にあった芸なのだろうか。なんとも凄いものだ。そして、その戯画化が山田風太郎の忍術もどきの派手さで笑いを誘うのだが、いかにも「おゲレツ」で、ちょっと突き抜けていたように思う。和世(堀めぐみ)にも花蝶(茜ゆう子)にも、勝負に入る前に必ず舐らせてから差し入れていたのは、まさに「おゲレツ」演出の真骨頂だという気がした。

 また、伊丹十三監督・脚本の『あげまん』['90]のタイトルにもなった呼称が、本作では専ら「のぼりまん」となっていたことに馴染みがなく、何とも興味深かった。「確かに「昇り龍」とは言うけれども「上げ龍」とは言わないよな」と思いながら、「上げ潮」とは言うけれども「のぼり潮」とは言わないなどと思ったりもした。古くは「あげまん」と「のぼりまん」のどちらが主流だったのだろう。例によって、関東、関西で違っていたりしたのだろうか。しかし、「まん」は関西ではないような気がする。
by ヤマ

'21. 9.26. TOEI.ch録画



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