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『陽のあたる場所』(A Place In The Sun)['51] | |||||
監督 ジョージ・スティーヴンス
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一ケ月ほど前に観た『若草物語』の映画日誌に記したように、本作も『クレオパトラ』['63]を再見してエリザベス・テイラーを観直し、十代時分の作品は、『緑園の天使』を半世紀近く前に観たっきりだと録画していたものだ。作品タイトルは、かねてより知っているものの、むかし観ているのかどうか心許なかったが、観覚えのある映画だった。 この時分のエリザベス・テイラーの右頬には黒子があったんだなと思いつつ、ジョージ(モンゴメリー・クリフト)の人生を狂わせたアンジェラ(エリザベス・テイラー)に観惚れていた。いや、彼の人生が狂ったのは、そもそも富豪の叔父チャールズから声を掛けられ、ホテルのベルボーイの仕事を辞めたことに始まるのだろう。 彼が水着メーカーの大会社であるイーストマン社の社長の甥として工場に現れなければ、アリス(シェリー・ウィンタース)との恋は始まっていなかった気がしなくもないし、アリスと出会う前に見初めた彼の♪モナリザ♪とも言うべき憧れのアンジェラから声を掛けられることもなかったに違いないと思うと、何が禍で幸やら、判らなくなる。 事の顛末の仔細はともかく「君は心で殺人を犯した」と牧師から宣告されて、法廷でのマーロウ検事の主張には反発しながらも、その弁には納得しているふうであったジョージは、悪人と言うよりも不運な男に映ってくる造形がされていて、なかなか奥の深いところのある作品だ。台詞にもあったように“別れを言うために出会った二人”という運命のもと、死刑判決を受けたジョージを訪ねてきて「生涯愛するわ」と告げるほどの真情を得たのであれば、アンジェラとの出会いは必ずしも禍とは言えなかったのかもしれないと思わせるだけのものを若き日のエリザベス・テイラーは、湛えていたような気がする。 長年来のネットの映友女性が「昔、モンティが好きで、何回か見てますが~。今は何の魅力も感じません(笑)。ボートでアリスと揉め、アリスが落ち助けないのでしたっけ。ジョージの心変わりは、女性としては、いい感じはしなかったか~曖昧な記憶でした。」と言っていたが、女性としては、いい感じがしないのは、ある意味、当然だろう。ただ僕は、心変わりというのではない気がした。約束違反にはなったけれども、婚姻届けを出しに行った役所が閉まっていなければ、彼らは、どうなっていたのだろうなどと思うと、ジョージは、何事につけ、巡り合わせが悪かったという外ない気がしてくる。 そこに、ある意味“人生の真実”というものが宿っているからこそ、本作は名の知れた作品になっているのであって、そこのところは、単にエリザベス・テイラーの邪気のない美しさの輝きだけで残っている映画ではないと改めて思った。 推薦テクスト:「映画ありき」より https://yurikoariki.web.fc2.com/aplaceinthesun.html | |||||
by ヤマ '21. 9.28. BSプレミアム録画 | |||||
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