『JIN-仁- レジェンド(2020年版)』
演出:平川雄一朗、脚本:森下佳子

 十年前の放映時にTVドラマの視聴も好む先輩映友から「なかなか面白い」と薦められながらも、TVドラマにまで手を出し始めてしまったら…と従わなかったのだけれども、同じ先輩から後日また薦められながら放置していた逃げるは恥だが役に立つを過日観たところ、思いのほか面白かったものだから、タイミング良く放送された「レジェンド(2020年版)」を観ることにしたものだ。

 噂に違わず、内野聖陽の演じる坂本龍馬の造形の見事さにすっかり観惚れてしまった。未来人の南方仁(大沢たかお)という道標を得てこそ振れ幅の広い足跡を遺し得たとしていたことに納得感があり、NHK大河ドラマ『龍馬伝で造形され強調されていたように思われる“ぼんぼん気質”とは違う形で、『龍馬伝』の観賞備忘録に妙なこだわりがないからこそ吸収力に富み、誰の元にでも直に会いに赴くことができるわけで、その脳天気なまでの行動力が、一介の浪士に過ぎなかった龍馬に恐るべき影響力を持たせ得たのだろうと記したものと同じものを描き出しているように感じられた。内野龍馬には福山龍馬にはない野性味が備わっていて、歴代龍馬のなかでも出色の造形である竜馬暗殺(黒木和雄監督)の原田龍馬に並ぶ出来映えだという気がした。

 そして『龍馬伝』で僕が最も感銘を受けた第43回「船中八策」での、各師に育ててもらった龍馬の吸収力の高さを描き出していた造形と重なる形で、更にフィクショナルな強調を凝らした「船中九策」に恐れ入り、江戸無血開城に至る西郷と勝の会談に龍馬を繋げている運びにほくそ笑ませてもらった。

 何かと言えば、パラレル・ワールドで煙に巻く始末の付け方というのは気に入らない傾向にある僕が、そうはならずに了解できた作劇には、橘未来(中谷美紀)による友永未来の再来という顛末に納得感が湧いたからだと感じているが、この友永未来の存在は、原作漫画にはなかったものらしい。僕の観た『JIN-仁-』は、彼女の存在をなくして成立しない物語だったように思うので、改めて原作漫画を読んでみたい想いとともに、森下佳子の脚色の見事さを感じた。
by ヤマ

'20. 8.26. 地上波放送録画


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