『逃げるは恥だが役に立つ ムズキュン!特別編』
TBSドラマ

 人気ドラマを妻が観逃していたからと、今回の特別編を観ようとしていたので、かねて先輩映友から面白いと聞いていたし、僕も相伴することにしたものだ。そしたら高知では、7話で放送が打ち切られてしまい、唖然とした。おかげで、初めてTVerにアクセスして、8話以降を二日がかりで観た。(後から教えてもらったが、深夜枠の地上波放送でも放映された。

 そうか、これがあの大流行したダンスのフルバージョンかと納得。エンディングダンスとドラマのテイストが見事に呼応していて、なんか猛烈めんどくさそうで、楽しそうで、面白い。みくり(新垣結衣)の妄想というのがウケたのだろう。くだんの先輩映友とは異なるネットの映友によれば、原作漫画を読むと脚色の巧さに驚かされるそうだが、全11巻あるとのことなれば、第10話+1としているドラマ版と巻数は一致する。けれども、原作漫画では、最終巻はみくりの妊娠・出産のエピソードらしいから、家事労働に着眼して労働経済のみならずジェンダーやセクシュアリティ、結婚観について問題提起を企図したドラマの最終回が妊娠・出産になることを回避していると知るだけでも、脚色した野木亜紀子のセンスの良さが窺えるような気がした。

 普段の映画観賞メモなどには、滅多にコメントを寄せてこない高校の同窓生が「いやぁ、おじさんにとっては新垣結衣は女神です。」と書き込んでくるだけのことはある新垣結衣が出色で、あの健気な可愛らしさは、彼女ならではという感じだった。みくりは、少々めんどくさいキャラだけれども、自省心があるから、そのめんどくささにも付き合い甲斐があるように思う。それに津崎(星野源)は、みくりに輪をかけためんどくさい奴だから、得も言われないお似合い感が愉しかった。

 労働対価として何で報われることを欲するかは、本当に人それぞれで、働き甲斐をどこに見出すかは、人の労働観の根幹をなすものだという気がする。損得勘定が全てではないとよく言われるが、その損得一つとっても、経済的、処遇的、心理的など、諸相があってカネ勘定だけで測れるものではなかったりする。それでも、人はそれらを包括したものを感覚的に捉えて、不満や満足といった応分感を抱くことができるし、捉え直すことができる。

 36歳、童貞との津崎くんのドラマを観たあとで、そう言えば、先輩映友から託されているディスクに『40歳の童貞男』があったのを思いだし、いまが観どきかもしれないと思った。


◎追記('20. 7. 6.)
 『40歳の童貞男』(The 40 Years Old Virgin)['05](監督・脚本 ジャド・アパトー)は、随分と俗っぽいコメディだったが、アンディ(スティーヴ・カレル)と津崎のキャラクターに何処か相通じているところのある点が興味深かった。また、ベスの役柄を演じているエリザベス・バンクスに驚いた。
 そして、1分と保たなかった初体験に続く2ラウンド目を果たした2時間後に、1ラウンド目と違い、脱力して放心したような表情を見せていたトリシュ(キャサリン・キーナー)から感想を求められ、アンディが歌い出した最後の輝く星座が妙に可笑しかった。




推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-f637.html
by ヤマ

'20. 7. 6. 地上波放送録画&TVer


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