『遥かなる大地へ』(Far and Away)['92]
監督 ロン・ハワード

 二十八年前に、ちょうど百年前のアメリカ西部開拓を描いた作品だった。ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト['68]を観て以来、このところジェロニモ['93]、レッド・サン['71]と、同じような時期のアメリカ西部を描いた作品を観てきていることになるが、1892~3年を舞台にした本作においても、アイルランドから渡ってきたジョセフ・ドネリー(トム・クルーズ)が、大陸横断鉄道の敷設工事に従事していた。

 『ジェロニモ』に描かれていたようなネイティヴ・アメリカンの強制移住の後、どのような形で白人入植者に土地を分配していたのだろうとかねてより思っていたことが、まさに本作で描かれていたわけだが、軍隊(騎兵隊)が予め一人当たり160エーカー(65ヘクタール)ずつに区分けした分譲地をまるで陣取り合戦のように、号砲一発でスタートして早い者勝ちで旗を立てて争い、その番号地を登記するというような乱暴さで分割されていたことに驚いた。

 アイルランドの大地主の娘シャノン(ニコール・キッドマン)から強引に誘われて、亡父の仇の娘と知りつつも魅せられ、小作に落ちぶれた農民のジョセフが、新大陸アメリカに渡った当初は兄妹と偽って東部のボストンで稼いだ金によって西部開拓地を目指すなどという、かなり荒唐無稽的にダイナミックな物語を観ていたなかで出てきた話だから、本当にあったことだろうかと思ったが、どうやらその部分は史実らしい。土地を奪われたネイティヴ・アメリカンたちからすれば、本当に不埒なとんでもない話だと思った。

 トム・クルーズと結婚して二年ほどの当時25歳のニコール・キッドマンが、お嬢様暮らしからブロイラー女工や下着ショーのダンサーといった労働に勤しむ生活困窮ぶりばかりか、達者に馬を駆る西部女性まで、実に喜々として演じていたことが目を惹いた。それにしても、西部開拓地の分譲入植を描くというのは、一体どういうところから持ち上がった企画だったのだろう。

by ヤマ

'20. 9.27. BSプレミアム録画



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