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『北の果ての小さな村で』(Une Annee Polaire) | |||||
監督・撮影・脚本 サミュエル・コラルデ
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何とも不思議なテイストの映画だった。ドキュメンタリータッチの劇映画というのは、少なからずあるが、その場合、その多くを担っているのは撮影の部分で、そこのところが「タッチ」と呼ばれる所以でもあるように感じている。ところが、本作は「タッチ」の部分がまさに劇映画的だから、なんだか劇映画のスタッフワークによるドキュメンタリーフィルムを観ている感じがして、その感覚が妙に新鮮だった。 エンドロールを眺めていたら、役名と役者名とが同じだったから、まさに西嶋憲生による“空想のシネマテーク”第1回「ドキュメンタリーとアバンギャルド」['02]で聴講した、ジョン・グリアスンが1926年にフラハティの『モアナ』に対して使った造語としてのドキュメンタリーというジャンルにおける「現実のアクチュアリティをクリエイティヴにドラマ化する映画」だったのだなと思った。そして、同じくフラハティによる『極北のナヌーク』['22]に捉えらえたイヌイットの生活を思い起こすと、グリーンランドに暮らすイヌイットの生活と文化を捉えた本作の持つアクチュアリティが改めて際立ってくるように感じられた。 帰宅後に読んだチラシの記載によれば、案の定「デンマークから新人教師が赴任すると話を聞き、その青年を中心に据えることに決め、1年の撮影期間を費やして完成させたのが本作。リアリティ溢れるキャラクターは、登場人物すべてを本人が演じるという、リアルとフィクションを縦横無尽に行きかう手法ゆえ。」とのことだった。雪に覆われたグリーンランドというのは、特に珍しくもないので、雪のとけたときのグリーンランドを観たいなと待っていたら、随分待たされた挙句に、きちんと出てきたことが嬉しかった。そして、イヌイットの生活と文化を対象化した視座によるドキュメンタリーではなく、デンマーク人青年アンダース(アンダース・ヴィーデゴー)が彼らとの関わりのなかで自分の居場所を見つけていく過程を捉えたドキュメンタリーであることのほうに軸足を置いた作り手の立ち位置が好もしかった。 また、かなり地味な映画だと思われるのに、思いのほか集客を果たしていて驚いた。先の日曜にキムギヨン監督特集を美術館が上映していたときよりも、かなり多い気がした。シネマサンライズが地力を付けてきたということなのだろう。 | |||||
by ヤマ '20. 7.29. 美術館ホール | |||||
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