『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ Ⅲ
監督 山田洋次

 イオンシネマは初めて行ったのだが、僕が幼い時分のTV番組「タイムトンネル」を思わせる通路を抜けて各室に行くようになっているのが、妙に新鮮だった。場内は見事に年配カップルばかりで、単独観賞は、気づいた範囲では僕一人だけ。そうか、そういう客層に向けた番組だからだったのか、と今更ながらに気づいた。

 この「家族はつらいよ」シリーズの第1作目から、橋爪功の演じる周造と西村まさ彦の演じる幸之助のいささか度の過ぎるトホホぶりが、僕にとっては笑いを誘われるよりも妙に気に障ったりする部分につながったりしていたのだが、年配カップルの誰もが「あれよりゃましだよな、あれほどのことはないよな」と互いに我が身を振り返って、夫も妻もともに安心できるように作ってあったから、そうなっていたようだ。

 平田周造の友人として登場する小林稔侍は、一作目『家族はつらいよの丸田【探偵】、二作目『家族はつらいよ2の沼田【落ちぶれ坊ちゃん】に続き、本作では、角田【町医者】だった。次は、?田になるのだろうか。周造が元サラリーマンで長男もサラリーマンだから、サラリーマンにはしないはずなのだが、職業は何にするのだろう。また、夜の屋外から平田家を捉える映像をラストカットに持ってくるのは、本シリーズの定番となりつつあるように思うが、作を重ねるごとに寄ってきているような気がするから、次はもう変えてくるかもしれないとも思った。

 こんなふうな次作への思いを誘発してくれる安定感と安心感の備わった映画は、いまどき実に貴重な気がする。もはや山田洋次監督以外、誰にも撮れないのではないだろうか。

 ところで我が家は、丸ごと家計を妻に渡してあるから、へそくりなんぞする必要もないだろうなと思い、後で尋ねてみたら、案の定そのとおりだった。だが、家計の通帳も印鑑もどこに置いてあるかを僕が知らないというのは、還暦も過ぎ、ぼつぼつ老後を迎えるようになってきているので、少々まずいかなと思い始めたが、それよりも先に、隣家に住む老いてなお壮健なる母八十二歳のほうの置き場所をきちんと把握しておかないといけないことに思い当った。前に聞かされているように思うのだが、すっかり忘れている。
 
by ヤマ

'18. 5.25. イオンシネマ広島西風新都



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