『牙狼<GARO> ~蒼哭ノ魔竜~』
監督 雨宮慶太


 予告編すら観ていない作品ながら、チラシの図柄から何となく目新しい映像が見られるかもしれないとの漠然とした思いがあって観に行くと、魔法少女まどか☆マギカの実写版のように思わせるところがあって、思わぬ拾い物というか、なかなか面白く興味深く観た。

 実写と言うのが少々憚られるほどのCGワールドで、また、キャラクター造形に『ハウルの動く城』千と千尋の神隠しを思わせるジブリ色やら、仮面ライダー・ゴレンジャー系の東映変身もののような意匠があって、どこにもオリジナリティがないようで変に独特とも思える“ごった煮感”にオリジナリティを感じるという、何やら不思議な妙味があったような気がする。

 主題として浮かび上がってきていた“モノづくりの値打ち”が直接的に描出されていた製造物としてのモノづくりに留まらず、ハードもソフトも交えた“創造に対するリスペクト”を惹起してくれたのが、何だか嬉しく感じられた。こすっからいトレードで利得を貪ろうとする営みに比して、クリエイションにエネルギーを注ぐ営みは、やはり崇高だと思う。冴島鋼牙(小西遼生)の付けた“カカシ”(久保田悠来)という名前がなかなか効いていた。

 名づけや記憶というのは、本能や習性によってのみ生きるのではない人間の人間たるゆえんの最たる部分だという気がする。忘れられるということに敏感な生き物は、自然界においては人間だけではなかろうか。認知されなければ存在していないことと同じで、忘れられると同時に名前を失うというのは、人にまつわる総ての物・事・人に通じるということを含んでいたように思う。そして、名づけや名前の取り戻しによって蘇るということが、非常にシンボリックなイメージを喚起してくれていたような気がする。

 聞くところによると、TVの深夜枠での人気特撮シリーズの映画化作品で、劇場版第2作とのことだ。その存在すら全く知らなかったし、出演者についても、緑ノ城の女王ジュダムを演じた松坂慶子以外はまるで馴染みがなく、からくも冴島鋼牙(小西遼生)の父・大河を演じた渡辺裕之に覚えがあるくらいだった。

 それにしても、松坂慶子がよかった。凄いCGパワーだ。そして、『さくや 妖怪伝』['00]のときの売りは美少女の安藤希だったことを思うと、本作は今どき風にイケメン集めが売りなのがあからさまで、時代の変遷を感じた。それだけに、両作品において不動の位置に松坂慶子が君臨していることに改めて敬服した。ジュダムの魔鏡を裸形で支える白魚頭の女体が身をくねらせている珍妙な妖しさもよかった。
by ヤマ

'13. 2.27. TOHOシネマズ2



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