『最高の人生をあなたと』(Late Bloomers)
監督 ジュリー・ガブラス


ヤマのMixi日記 2012年09月01日01:28

 敬老の日直後となる次回第168回市民映画会は、なんともストレートに本作と人生はビギナーズという特老二本立て(笑)なのだが、例によって依頼のあった紹介稿に向けて、短いほうからとの妻の要望により、こちらを鑑賞。

 アダムのビジネスパートナーであるリチャードが屈託を滲ませて、ペースメーカーを入れてるからバイアグラを使うわけにもいかないと笑いながら「年を取るのは勇気が要る」と零す姿が沁みてくる作品だった。

 老いの受容に迫られて、夫に強いることで自らにも納得させようとしていたメアリー(イザベラ・ロッセリーニ)こそ、老いに抗っているように見える夫アダム(ウィリアム・ハート)以上に、実は受容できていないことがありありと見えるイタさにヤング≒アダルト還暦版とも言えるようなところがあった気がする。

 でも、『ヤング≒アダルト』のメイビス(シャーリーズ・セロン)ほどの痛ましさではなく、どこかユーモラスでさえあったのは、やはり家族に恵まれていたからなのだろう。そして、それこそが60年の人生を掛けて彼女が成し遂げている業績なのだとしみじみ思った。

 メアリーが、アクアビクスジムのオーナーのピーター(ヒューゴ・スピアー)と交わした情事の空しさに、夫が家出した後のベッドに腰掛けて虚脱していた姿とメイビスの貧相なヌーブラヌードの痛切とでは、比べるべくもないような気がした。メアリーは、アクアビクスもボランティアも婚外情事も全て試して、結局のところ、そんなものでは埋まらないことを実感したうえでの納得を得て帰すべき地点に戻ってくることができたわけで、文句なしといえば、文句なしのハッピーエンドなのだから、実感したうえでの納得という点では同じでも、メイビスとは雲泥の差があるように感じられるのは、当然だ。

 さて、どんなふうな紹介稿にしようかなぁ。



コメント

2012年09月01日 15:12
(ムーマさん)
 そういう話だったんですか・・・。
 パスして「ビギナーズ」だけ観ようかと思ってたけど、こっちも観たくなってきました。困ったな・・・(って、まぁ困ることもないんですが)

2012年09月01日 16:19
ヤマ(管理人)
 ◎ようこそ、ムーマさん。

 そう思ってくだされば、とても嬉しいです。
 ちなみに紹介稿は、こんな感じにすることにしました。

2012年09月01日 16:41
(ムーマさん)
 ヤマさ〜ん、

 そうかあ・・・結婚30年(以上〜)
 還暦前の夫婦って、ウチなんて正にソノモノだから・・・

 最後の段落、なんだか心惹かれます。読んだお客さんが増えそう〜

2012年09月01日 22:33
(ケイケイさん)
 私は子供たちが親の夫婦関係の修復に躍起になる姿に、もう感激しちゃって。
 これこそが幸福な家庭であった、証だと思いました。
 浮気もまあ、還暦近くだと、女性の貞操にはうるさい私もいいかしら?と(笑)。
 墓場まで持っていくならありかな?

2012年09月02日 10:29
ヤマ(管理人)
 ◎ようこそ、ムーマさん、

 紹介稿としては、それに勝る褒め言葉はありません。どうもありがとうございます。
 ムーマさんも是非ご覧ください。さぞかし微苦笑されることだろうと思います(笑)。


◎ようこそ、ケイケイさん。

 普段は滅多に会ってもいないであろう三人の子供たちが寄り集まって協議し、日頃の自分たちの関心事ではない老後について雑誌で俄か勉強しながら、自ずと分担される役割に沿って、長男が父、長女が母、次男が場とうまく連携しつつ、結局いちばん機能したのは、ばあちゃんの存在だったのが効いてましたよねぇ〜。若い愛人を連れてきたと勘違いしたり、金の事だったら…と父親の頭を抱き寄せて額にキスをする長男が、とりわけよかったです。子供たちの取った距離感の持ちようは、理想的でしたね。おそらくは子供世代である作り手がそこに込めたものを僕は“祝福”と受け取ったので、上記のような紹介稿になりました。

 ケイケイさんがメアリーのアバンチュールを許容できるのも作り手のそういう眼差しを汲んでのことなんでしょう?(笑) 若い女性たちに引け目を感じながら焦ってた私の求めていたものはこんなことだったのか、という虚脱が効いてましたね(笑)。

 アダムのほうにしても、気まぐれ的にハイになった感じの若い女性のほうから求められ、もちろん拒むにはならないのは当然ですが、あとでリチャードとしていた会話の感じでは、うまくいかなかったようでしたね。魂萌え!』談義でのとめさんの指摘を思い出したのですが、妻とは難なくできても、不慣れな椿事に緊張したんでしょうね(哀)。まぁ、言うなれば、何十年ぶりの初夜ってことになるんでしょうから、そのほうが自然なのかもしれません(笑)。

 リチャードの弁によれば、アダムは、セックスよりも仕事のほうで興奮するタイプという慰めになるわけですが、本作の最初と最後を締め括っていた場面が何であったかを思うと、彼がそういうタイプではないことは明白。そっちが普通だと思います、男っちゅうのは(笑)。



推薦テクスト:「チネチッタ高知」より
http://cc-kochi.xii.jp/hotondo_ke/12093003/
推薦テクスト:「映画通信」より
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20120311
推薦テクスト:「TAOさんmixi」より
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1823034500&owner_id=3700229
編集採録 by ヤマ

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