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『不都合な真実』(An Convenient Truth) | |||||
監督 デイビス・グッゲンハイム | |||||
地球温暖化について真摯に分かりやすく語るゴア氏の弁は、非常に論理的で大いに納得感の得られるものだった。経済活動にブレーキを掛けることになるという言い分に対する反駁など明快至極で、経済活動という言葉にすり替えて単に既得権益の保護を主張しているに過ぎない現在の自動車産業やエネルギー産業の主流派の姿が浮き彫りにされている。それを擁護しているのがブッシュ政権であり、それゆえに、国としては京都議定書に署名ができない事情にあることが浮かび上がってくる。そして、危機を訴えるだけでなく、具体的に着手すべきことを明言しているところが実用的な作りで、気に入った。 大半がアメリカの元副大統領アル・ゴア氏が語るスライド講演そのままを映し出していて、ドキュメンタリー映画としては芸がないと言えば芸がないのだが、さすがは1000回以上行っているとのことだけあって、スライド講演自体の完成度がべらぼうに高いものだから、面白く観ることができる。地球温暖化について新たに知る部分はほとんどないのに、退屈しないというのは、やはりスライド講演の出来のよさゆえだという気がする。 一瞬だけ大統領になった男という自己紹介で笑いを取って登場したゴア氏が本当に大統領になっていて、もしブッシュ政権が誕生していなければ、21世紀のアメリカのみならぬ世界の様相は大きく異なっていたはずだとの作り手の思いが、率直に伝わってくる映画だったように思う。 それにしても、二十年近く前から続けているというスライド講演が、下院議員から上院議員、そして大統領選での敗北という彼の政治活動の浮沈とは関わりなく、ライフワークとして続けられている姿には感銘を受けた。政治的ステイタスの獲得について、それ自体が目的ではなく、果たしたい公益活動のための手段であることを訴える政治家は数多いるものの妙に信用ならない気がするのだが、彼の場合、そのことが明瞭である印象を受ける。こういう政治家というのは、非常に少ないように思う。 これには、やはり動機的なところでの私的必然性と付け焼き刃ではない持続性を画面で証明していることが大きいように思う。彼の私的事情に係る部分をプライヴェート映像とともに映し出し、年代を明らかにした彼の行動として示したことは、場合によっては、この映画を“地球温暖化”に係る作品というよりもゴア氏のプロモーション・ムービーとして受け止めさせることに繋がるような気がするが、僕が最も興味を覚えたのは、この作品がチラシに掲載されているように、アメリカでドキュメンタリー映画としては記録的な大ヒットを遂げたことだった。それには、この選挙PRにも映りかねない部分が功を奏しているような気がしてならないと同時に、ブッシュ政権が末期に至り、いかに求心力を失っているかが窺われるように感じる。現在のブッシュ政権の不人気がなければ、この映画は、アメリカでここまでのヒットを飛ばせなかっただろうし、もし、この作品にそれに応えるようなゴア・ムービーの色合いがなくて“地球温暖化防止”だけを描いていたとしたら、やはりこうはいかなかったように思う。そして、例によって例のごとく、アメリカでヒットしていなければ、日本でもこういう公開のされ方はしていないはずだ。この作品の二年前に撮られた『デイ・アフター・トゥモロー』が娯楽性にも富んだ堂々たる劇映画だったのに、あまり注目を浴びなかったことには、そのあたりの状況が反映されているような気がしてならない。 そうは言っても、この作品に映し出されているゴア氏は大層かっこよく、リライアブルな印象を残してくれる。やはり政治家にはかくあってほしいものだと思う。現在に至った地球とアメリカの再生を彼が本気で信じているかどうかはともかく、少なくとも、それに向かって行動していることだけは間違いない。あくまで“可能性”としては絶望にまでは至っていないのが現況だとして、どうせなら、ダメ元でもチャレンジしてみようということを数値と図で指し示す姿が、肩の力が抜けていて実に堂々としていた。僕が励行しているのは、通勤に自家用車を使わない、タクシーには乗らない、品数が少ないときのレジ袋を断るといったことくらいで、エコ・ライフと呼ぶには程遠いのだが、それでも、少しは該当するものがあって嬉しかった。 推薦テクスト:「####【みぃ♪の閑話休題】####」より http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=9339&pg=20070508 推薦テクスト:「超兄貴ざんすさんmixi」より http://mixi.jp/view_diary.pl?id=327833023&owner_id=3722815 | |||||
by ヤマ '07. 3.21. TOHOシネマズ2 | |||||
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