『嫌われ松子の一生』
監督 中島  哲也


ヤマのMixi日記 2006年06月08日23:53

 このところ忙しくてネタなし状態だったうえに、結局『ナイロビの蜂』は観られないままに終わってしまい、今宵のレイトでは『嫌われ松子の一生』を観てきた。
 映画のなかで、何度も松子が「なんで〜!」と叫ぶが、僕のほうも、作り手の松子の人生に向けるまなざしに対して、何かが違うという気がしてならなかった。
 それよりも、今日、初めて予告編を観て、俄かに楽しみになってきたのが初恋。松子もある意味、今流行の昭和ものだったわけだが、『初恋』にもそれがあったことは、僕にとっては、興趣的には決してプラスには働かなかったのだけれども、画面がなかなか魅力的だった。(もっとも、それで言えば、松子も画面はイケてたんだけど。)そして、何よりも『Tokyo Skin』でとても感銘を受けた覚えのある塙幸成監督の名に十数年ぶりで再会した驚きと喜びが、予告の画面の魅力とあいまって、僕に興奮をもたらしてくれた。


*コメント
2006年06月09日05:50 (sikiさん)
 なるほどー。わたくしわ、ムシロ「松子そのもの」に対してスカン感情がアッタので(原作から)、作り手の姿勢のオカゲで面白く観られたのデシタ(* ̄‥ ̄)b
 『初恋』もーすぐデスね! わたくしも、絶対観たいと思いマシタにょー♪


2006年06月09日08:03 (TAKUMIさん)
 ヤマさん、こちらにもちょっとコメントを。内容と映像がちぐはぐなのは今のノリなのかな。そういう手法に私がついていけないんでしょうかね(笑)。
 自分を幸せにしてくれる人や、幸せになる為の努力や犠牲ならいくらでも払うけれど、あれはなぁ〜。「自虐的」とも言える松子さんは、やっぱり私には理解不能。にも拘わらず面白おかしく描いていて、だからと言って笑い飛ばしてしまうには重過ぎる現実で、それも私には苦しゅうございました〜。


2006年06月09日23:32 ヤマ(管理人)
 >四季さん、
 原作を読んでると読んでないでは、観る角度がどーしても違って来ちゃいますよね、どっちが良し悪しというわけではなくて、それぞれ楽しみどころがあるんだけどね。
 他でも書いたんだけど、本作を観て僕が想起した映画は、十五年前に観たトト・ザ・ヒーローだったんだよねー。「どちらかというとエキセントリックで構成も錯綜した物語なのに、見終えた後、静かに湧いてくるのが人の生の沁み入るような深い哀しみの感情なのは、どうしてなのだろう。恐らくそれは、主人公トマの殆ど劇画的と言えるほどにカリカチュアライズされた記憶という名の幻想を描き出す監督の眼差しが、このような作品の文体とは裏腹に人の生の核心に触れているからである。」と昔の日誌に綴った作品なんだけど、『嫌われ松子の一生』鑑賞後にこの作品を想起しながらも、『トト・ザ・ヒーロー』のような観後感が湧いてこないのは、どうしてなんだろうと考えてました。
 たぶん、“神の愛のごとき…”として持ち上げてしまった扱い方に、興醒めさせられたんじゃないかなぁ。それって違うんじゃない?って感じ。慇懃無礼とまでは言わないにしても、ちょびそれに近い感じがあって、そうしといて松子の最期をああいう殺害にしてることに、なんだかヤなものを感じたんだよね。

 >TAKUMIさん、
 僕もキャラ的には共感不能みたいな松子でしたねー(苦笑)。ただまぁ、松子は女性ですから、僕からすれば、まぁ共感不能みたいなところが致命的になったりはしませんけどね。わからないのが当たり前みたいな受け取り方、しやすいですし(笑)。
 「面白おかしく描いていて、だからと言って笑い飛ばしてしまうには重過ぎる」ことでの苦しさみたいなのは、確かにありましたね、僕も(苦笑)。
 そこんとこが『トト・ザ・ヒーロー』のように、観終えた後、静かに湧いてくるのが人の生の沁み入るような深い哀しみの感情とはならなかった原因の一つなのかもしれませんねぇ。


2006年06月10日07:38 (sikiさん)
 >“神の愛のごとき…”として持ち上げてしまった
 なるほどー・・・ そー感じた方も多かったみたいですね! わたくしわ、どっちかとゆーとドロドロしたオンナの不幸バナシを「ツクリバナシ」風味にしてあったから、ソコが気になりませんデシタ(*‘ ‘*)b
 オンナのヒロインゴコロをくすぐるよーなツクリでわないってゆーかー・・・(原作のソコがおスキな方々にも、不評だった模様デスねー)
 松子・・身近にいたら、単なる「ディープ自己中」だものー(*‘ ‘*A``
 キモチわわかるトコもアルケドねー・・・


2006年06月10日09:09 (TAKUMIさん)
 「殴られるより一人が嫌」なんて女性はよく分からない私。それなら一人が百倍良いです。万が一殴られても、当然殴り返しますし。ほら、その為に日々筋トレとボクササイズの毎日なんですよ(笑)。他でも書きましたが、松子のような女性がいる限り、ヒモという職業は安泰ですよね。
 『トト・ザ・ヒーロー』はあまりに昔見たので忘れてしまいました。再見してみます。


2006年06月11日01:05 ヤマ(管理人)
 >四季さん、
 「ドロドロしたオンナの不幸バナシを“ツクリバナシ”風味にしてあった」ってとこは、僕もOKなんよ。それはあくまで文体の問題であって、そこんとこでは、ある意味下妻物語以上にエキセントリックで魅力的だったよ。中谷美紀も大熱演でさ。
 けど、それが「文体とは裏腹に人の生の核心に触れている」ような感慨を僕にはもたらしてくれなかったわけやけど、それは別に松子自身のキャラのせいじゃあなかったように思う。僕的には、作り手の松子に向ける視線のありようがしっくり来んかったっていう感じやね。

 >TAKUMIさん、
 いやもう全く、僕も松子の心境なんぞ到底わからないクチの一人でね(苦笑)。まぁ、あんまりモロに分ってしまえる境遇にはなりたくもないんだけど(笑)。
 ただ四季さんへのレスにも書いたように、この作品が僕にフィットしなかった理由っていうのは、僕が松子に共感できなかったからということじゃあないんだよね。逆に言えば、フィットした作品の全てが、主人公のキャラへの共感に基づいているわけではないみたいなもんで(笑)。
 で、僕は、いつもこの手の究極の選択みたいなのには、けっこう困っていて(苦笑)、殴られるのも、一人も、どっちも嫌ってことでしか答が出ないんですよ(笑)。日々鍛錬する根性もないし(たは)。  しかし、TAKUMIさん、その鍛錬って、実戦に役立ったことってあります?(笑)


2006年06月13日23:46 (ミノさん)
 そうそう、「神の愛」みたいな持ち上げ方してるのには「へ?」でしたね。「東電OL殺人事件」のドキュメント読んだ時もそうでしたが、どうしてああいう男でダメになっていく系の女を、聖女にして持ち上げたがるんだろう・・と不思議です。
 松子のキャラをヒロインにして物語世界を作るのはまあいいとしても、もっと冷静な視線で描くか、きちんと描きこむとかすれば、物語に奥行きが出たと思うんですけどね。なんかこう、なが〜いミュージッククリップ見たな・・みたいな。(笑)


2006年06月14日21:48 ヤマ(管理人)
 そういう持ち上げって、必ずと言っていいほど、男の側から差し出されるでしょ(苦笑)。
 ある種の手向けなり贖罪感のようなものがあるように思うのだけれど、それって随分なことじゃないかって気がしてて、慇懃無礼に近いような失礼な話じゃないかと思ったりしたんですよね(あは)。
 ちょうど、遠藤周作の『私が・棄てた・女』のイージーな仮借のようにも思えて、ちょっといただけなかったんですよねー(たは)。


2006年06月14日22:48 (sikiさん)
 >そういうのって、必ずと言っていいほど、男の側から差し出されるでしょ
 そーゆえば・・・原作者も男性デシタねー・・・(* ̄‥ ̄)。。
 んー、わたくしが原作を「スカン」理由もソコラへんなのかもー・・・


2006年06月16日06:43 ヤマ(管理人)
 別にああいう女性が男にとって都合がいいなんてことで持ち上げているんじゃあなくて、男には到底真似のできないスタイルだってことでの畏敬なんじゃないかと思うんだけど、畏れっていうのは、ある意味、距離を取ろうとするものだよね。
 それって、いわば捨て身で生きてた松子が、何よりもツライと感じてた孤独というものについて、彼女が一番求めてた“寄り添い”とは正反対のものだって思う。何せ神の位置にまで遠ざけるんだもの。  だから、畏敬で臨んでは、何ら彼女の真情を汲み取ることにはならないのに、なんとな〜く自分は松子の真価を認めているんだってな自己満足はもたらすのだろうから、随分と身勝手で失礼な崇めだなって思ったりするんだよねー。
 龍がそう思ってしまうのは致し方ないにしても、作り手にそれを肯定するまなざしを作品に宿らせてしまっては、松子、救われないじゃない。
 男にとっての都合の良し悪しということで言えば、ああいう思い込みの強いタイプというのには、むしろ手を焼き、閉口してしまうことが多いのが男というものだろうという気がするんで、男は、けっこう苦手に思いがちなんじゃあないかなぁ。悪意のなさや懸命さが透けて見えるだけに、却って対処のしようがなく、妙に苛立たされたりしがちだと思う。
 だから、必ずと言っていいほど、男の側から差し出されるものではあっても、男の側の願望や理想が松子という女性像に込められているっていうのとは、少々違うような気がするんだけどね。


2006年06月16日21:51 (ミノさん)
 うーむ。なるほどなあ。
 そういや畏れとかも、あるいは「チヤホヤする」ってのもある種、奉っていながらも、少し蔑みというか、自分とは距離置きたいっていう意識がアリアリなんですよね。
 私がこの映画で一番ナゾなのは、監督の、松子という人間への気持ち、ですね。とってつけたような肯定とか、聖女化とかは彼自身の本心ではないだろうし、本音のとこはどうなのよ?ってのが見えてこない。だからなんかこう、見終わった後、空々しい気分になってしまう。大騒ぎしたけれど・・って感じで。松子に対して、愚かで、バカな人だけれど、愛情を持って描きました・・っていうのも伝わってこないわけですよ。あくまで、私の目には、ですけどね。
 主人公が共感できない人物だから好きになれない映画じゃなくて、やはり作家の視線に共感出来ないんですよね。だから「どうしてこの題材でなきゃいけなかったの?」って感じたんでしょうね〜


2006年06月16日23:34 (sikiさん)
 ソレにしても『嫌われ松子』わ、ミンナいろいろ語りたいデスねー・・
 さっきムスメと『下妻物語』を見マシタ。同じ監督の映画デスにょねー。コレの主人公も一種現実離れシタオンナノコなんデス。そしてヤッパし、監督わコノ主人公に対して松子に対するのと同じよーに 距離を置き、勝手にやらせてマス。説明やなんか、全部ホンニンにやらせてる徹底ブリ。なのにコッチわ、とってもソレが、いー感じに伝わってキマスねー・・・(わたくしわ)
 極端にゆーと「女優の魅力の差」かも・・・なーんて;;(; ̄‥ ̄A`` 思ってシマイマシタ;;;
 『下妻物語』わ「軽いから」なーんてゆーふーにわ、わたくしわ、思わなかったのにょねー・・・
 ナンでなのでショー・・・(* ̄‥ ̄)?


2006年06月17日17:35 ヤマ(管理人)
 >ミノさん
 距離を置こうとすることが直ちに蔑みを伴うことではないけれど、そういう場合も多々あるよね。
 チヤホヤのなかにある蔑みっていうのは、そうそうあるものではないように思うけど、そんなのが感じられた日にゃ、てってー的にバカにされてる気がするんだろうなぁ。
 僕は、自身がおめでたいせいか、チヤホヤされたときに、そのなかに潜む蔑みなんていうのを感じたことがないんだけど、それは僕が滅多にそんな目には会えないからってことがあって、ミノさんなんか、きっと随分とチヤホヤされた経験が多いんだろうから、なかには、そういうのもあって、そいつがきっと強烈な印象を残してるんだろうね。
 中島哲也監督の松子への想いの本音がどこにあったのか、なんてことは、僕は知るよしもないけど、あの聖女化それ自体は、きっと原作にもあったんだろうね。で、そこんとこについて、わりっとイージーに画面の盛り上げ演出を掛けてるって感じかな、僕の印象としては(あは)。だから、作り手としては、距離を置くことになるという自覚がないんだろうと思うよ。
 でも、作り手に自覚がなくたって僕の目にはそう映ったもんだから、やっぱ“イージー”ってのに“愛情”は感じにくいわけで、ミノさんが言う「松子に対して、愚かで、バカな人だけれど、愛情を持って描きました・・っていうのも伝わってこない」ってのは、僕においても同様だったなぁ。
 だから、松子に共感する人がたくさんいる一方で、案外多くの人が、映画に描かれた松子の姿に反発を覚えたりもするんだろうね。作り手が愛情を込めて描いていたら、そうはなりにくいとしたものだと思うし…。僕自身は、嫌悪も共感もどちらも促されなかったけど、「作り手の松子の人生に向けるまなざしに対して、何かが違うという気がしてならなかった」っていう感じだった。

 >四季さん
 『下妻物語』は、サイトアップしてる日誌にも書いてあるけど、抜きんでた出来映えの映画だったねー。日誌にはつらつらとは綴らなかったけど、いろんなことを触発してくれる興味深い作品だった。  今までの深キョンのキャリアのなかで間違いなく代表作やね。(で、多分それを越えるのは出んのじゃないか、とも(苦笑)。)あの竜ヶ崎桃子のキャラは、他のキャスティングが想像つかんくらいの嵌り役で、そういう意味じゃ、土屋アンナも存在感があって凄くよかったけど、他に配役の余地がないってな役柄じゃあなかったように思うんよね。
 けど、熱演っていうことでは、松子を演じた中谷美紀は、決して引けを取ってないどころか、むしろ深田恭子・土屋アンナ以上なんじゃないかなぁ。それが魅力に繋がっていたかどうかはともかく。  『下妻物語』を軽いとは思わなかったというのは、僕も同じでね、軽やかと軽いは別物っていうのを改めて感じるよね。で、この違いってどこから来るのかと言えば、やっぱ“イージー”なとこがあるかどうかってことなんじゃないかね?





推薦テクスト:「映画通信」より
http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20060530
推薦テクスト:「TAOさんmixi」より
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=144099725&owner_id=3700229
編集採録 by ヤマ

'06. 6. 8. TOHOシネマズ1



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