『初恋』をめぐって
####【みぃ♪の閑話休題】####」:みぃさん
映画通信」:ケイケイさん
ヤマ(管理人)


  No.6523 から(2006/06/08 11:59)
(みぃさん)
 こんにちは。
 スケジュール見ると、高知TOHOでは『初恋』も公開あるんですねー。
 浜松はまたすっ飛ばされー。最悪ー。『初恋』はカナリ見たい!

ヤマ(管理人)
 僕もですよ〜。
 予告編魅力ありでしたし、それに、なんと言っても、十年以上前に『Tokyo Skin』を観て惚れ込んだのに、以後、一切音沙汰なしだった塙監督の作品ですからねー。

(みぃさん)
 浜名湖向こうのシネコンでは上映があるはずなので(ここで1度予告を見た)、なんとか見に行きたいと思ってます。

ヤマ(管理人)
 そーか、みぃさんも既に予告は観てましたか。ちょっと、そそられますよねー。

(みぃさん)
 『初恋』見ましたよ! 浜名湖向こうで公開直後に見てきました。

ヤマ(管理人)
 僕は先週の金曜日に観ました。

(みぃさん)
 見る前のヤマさんのレスを読んでいたので、相方に、「この監督さんって、久々に撮った作品なんだって」と、知ったかぶりしておきました(笑)。

ヤマ(管理人)
 まぁ、監督名に惹かれて観たくなった人なんて、ほとんどいないでしょうからね(あは)。
 それにしても、まさか、岸・佐藤って来るのだとは思いませんでしたよ!(笑)

(ケイケイさん)
 岸ってやっぱりそういう意味だったんですか!

ヤマ(管理人)
 あの秘書が岸くんに見せてた段ボールの小箱に入った封書の宛名は「佐藤」じゃありませんでしたっけ?
 あの秘書が佐藤秘書なのか岸秘書なのかはともかく、どっちにしたって一族ですし、岸くん、忽ちにして亮を釈放させるだけの力をケーサツに効かせられるってことになれば、どうしたってね(笑)。

(ケイケイさん)
 前半はイマイチだと思ってましたが、三億円強奪から、徐々に盛り上がりました。
 ラストの岸くんの独白は、センチになりすぎて、いらないと思いますが、みすずにとったら、どんなに報われた気持ちになったかと思うと、私もいっしょに泣いたので、セーフかな?

ヤマ(管理人)
 その岸くんなんですが、彼をやってた小出恵介が、なんかとっても60年代顔で、そのことにえらく感心してました(笑)。

(ケイケイさん)
 そうそう、小出恵介、思いっきり昭和の青年でびっくり!
 40年代のハンサムってあんな感じでしたよね。

ヤマ(管理人)
 やっぱりケイケイさんも昭和40年代顔って思いましたか!(笑)

(ケイケイさん)
 亮の役はあおいちゃんの本当のお兄さんなんでしょ?

ヤマ(管理人)
 そうらしいですね。三億円事件については、この四十年近くの間、ほんとーにいろいろな検証が加えられているようなんですが、僕はそういうのをほとんど読んだことがないので、白紙なぶんだけ面白く観ることができたように思います。確かに、いまどきの犯罪と違って、金儲けが目的の強奪ではなかったのかもしれませんね。こういう動機と実行ならば、確かに捕まらないし、ずっと表沙汰にならないのだろうから、納得と言えば納得でした。それに、なにせ実行犯本人が綴った形になっている原作のようですし(笑)。

(みぃさん)
 自分のレポにも書きましたが、私はカナリ好きな作品でした。

ヤマ(管理人)
 拝見しましたよ。「「真実かも…」と思った人の感情を否定しないで欲しい。」とお書きですが、宮崎あおいも真実だと思ったそうですね〜。みぃさんは、彼女の出演作を初めて御覧になったそうですが、僕は何と言っても『害虫』が強烈でしたねー。
 あの邪気のない魔性、こわいよ〜と思いましたもの(笑)。ほとんど“出くわしたが災難”みたいなもんですよ(たはは)。

(みぃさん)
 劇中、ずーっと雨が降ってるんですが、それがまた雰囲気があったなぁ。って、実際の事件の日も、雨だったって事か…。よく実行したな…。
 前にヤマさんが「映画は、非日常を楽しみに行くものですから、そういうとこが醍醐味ですもんねー。」と書いておいでましたが、『初恋』のなかに、連日連夜、仲間同士でjazzクラブ「B」に集まって、お酒飲んだりコーヒー飲んだりおしゃべりしたりしてるというシーンがありました。

ヤマ(管理人)
 いわゆる“溜まり場”ってやつですが、そういえば、若者の溜まり場が“路上”になってきてから、ああいう雰囲気っていうのは、すっかり失せてきたような気がしますね。

(みぃさん)
 こうゆう場面を見ると、「あー、私も意味無く(特定の目的なく)出掛けたいー」って思います(笑)。

ヤマ(管理人)
 そういう“溜まり場”を持ってるっていうのは、ちょっといいですよね〜。
 ところで、ケイケイさんは、今回『初恋』の映画日記を一日置いてお書きになったそうですね。少し時間をおくことでの膨らみというのも、ちょっといいもんでしょう?(笑)

(ケイケイさん)
 そうですね(^^)。特に『初恋』は、前半の「B」の連中の描き方が合わず、感想文にも書いた内容のほか、前にもお話したとおり、父がやっていた工場で働き、家に仕送りしていた同じ年代の人もいっぱいいたので、何を甘ったれなと感じました。

ヤマ(管理人)
 Bに溜まっていた連中に限らず、なんか判ったような顔をしたがる気取った若者には、ああいう感じってありましたよ。

(ケイケイさん)
 そうですよね、大人ぶっているというか。でも、今の若者より精神的に大人だったようにも感じます。

ヤマ(管理人)
 今はあんなふうなたむろの仕方をしないように思うけど、“溜まり場”感覚というのは、僕にも少々覚えありです(たは)。

(ケイケイさん)
 今の溜まり場ってゲーセンとかですよ(笑・うちの息子参照)。あとコンビニ付近の路上や(笑)深夜のファミレスですかね。なんか情けないなぁ。

ヤマ(管理人)
 でも、はっきり言って、Bに溜まっていた連中にしても、ケイケイさんがお書きのように間違いなく“甘ったれ”ですよね〜。

(ケイケイさん)
 やっぱりそう思われましたか(笑)。
 観ていてちょっと腹立たしかったんですよ。岸にしても、友人として亮のためと思ってのことでしょうが、結局親の権力を借りただけですよね。その事がわかっていない幼稚さでしたし、亮も…。
 あの時代は高度成長だったでしょう? 仕事はいくらでもあったと思います。「何故今の愚連隊めいた生活から抜け出して、みすずと二人生活することを考えないのか」と、兄として疑問でした。
 でも、最後のお守りを観て考え直したんです。みすずに会いに行ったのは、自分にはこんな母親じゃなくて真っ当な暮らしをしている妹がいるって、いつか一緒に暮らす夢を持って会いにいったんじゃないかと。それを生きがいにしたかったのかと思いました。
 しかし、実際にみすずのほうからも自分に会いに来られて、そのくせ何も行動に移せない弱い自分が情けなくて、彼女に会うのが辛くなったかなとも思います。もちろん理解出来ても甘ったれには違いないですが、情状酌量もありかと考え直しました。

ヤマ(管理人)
 なるほどね〜。ケイケイさんらしい惻隠の情ですねー。
 三億円事件のあの年って、ちょうどALWAYS 三丁目の夕日当時の十年後で、三部作の映画にもなった「♪きみのぉゆくぅ道は〜♪」の若者たちの頃なんですが、『初恋』の岸たちに限らず、学生って今とは違ってちょっと特別な存在だったみたいですね。

(ケイケイさん)
 『若者たち』は歌しか知りません(^^;)。結構5歳くらいからドラマは覚えてるんですけどねー。親が見てなかったのかな?

ヤマ(管理人)
 あの映画(もしくはTVドラマ)でも、佐藤家五人兄弟のなかで唯一人大学に行ってた三郎(山本圭)が太郎(田中邦衛)から特別扱いされることに、トラック運転手として働いていた次郎(橋本功)は不満一杯だったんですよね。

(ケイケイさん)
 これはあったと思いますよ。確かにみんな大学って時代じゃなく、勉強のできる、勉強したい者が行くところでした。そして人より勉学を積んだ分、将来が期待されていたと思いますね。
 『初恋』の亮のほうに話を戻すと、みすずたちの母親の顔が見えないのは、何か意図があるとは思いました。

ヤマ(管理人)
 これは僕も僕も思いましたよ。でも、これといった納得感には思い至っていなかったので、ケイケイさんの映画日記の「母親の見せ方で、ある思いが湧きました」というのに、大いに感心してました。

(ケイケイさん)
 ありがとうございます。最初に母親が出てきた時、あんなこと言う母親に、すごく亮が無関心風だったでしょう? 『8Mile 』でのエミネムのお母さんが、あんな感じです。

ヤマ(管理人)
 『8Mile 』はこちらでも公開されたのですが、観逃してます(残念)。

(ケイケイさん)
 『8Mile 』では、息子が猛反発して、いつかこの生活から脱してやるぞと、ラップ修行に励むんですが、『初恋』の亮には、そういう反発もなかった。それでラストのみすずの態度です。じっと見つめていましたが、自分から母親に声もかけなかったので、あぁそういうことかと感じたんです。でもあくまで想像ですから、作り手の意図とは違うかもですよ(笑)。それで色々な思いが湧いてきて、岸の父親も、息子には手を焼いているはずなのに、自分はきちんと対峙してはいないなと、気づきました。

ヤマ(管理人)
 あの秘書が見せてた段ボール箱の中身に「佐藤」宛の手紙があったように見えたのは、やはりケイケイさんが映画日記に書いておいでのように「父親に恥をかかせることが、父親に対抗する手段だと思って」いたからでしょうかね。

(ケイケイさん)
 私はそう思いました。でも、反発する親に対抗する手段がこれでは、賢い頭の無駄遣いですよね。しかしこの時代は、いくら親に反発しても、手にかけたりはしなかったでしょう? 奈良の放火した高校生にしても、何で家出や不良になることもせず、すぐ放火かなぁとその辺が痛々しいですよね。そんなことを考えると、やっぱり共感まではできずとも、理解はできました。
 ユカも家業のために政略結婚させられそうでしたでしょう? 私も人の子の親ですから、娘にそんな思いをさせるくらいなら、家業なんて潰れてもいいと、私なら思ったかな感じました。そう考えると、彼らにも自然と心を沿わせることができたんです。

ヤマ(管理人)
 きちんと親に向き合ってもらえなかった子供たちってわけですね。
 それですねた悪ガキってことなら、そりゃもうケイケイさんのツボのど真ん中や!(笑)

(ケイケイさん)
 そう、やっぱり可哀相に思ってしまいました〜(笑)。確かに自分勝手でわがままな若者たちなんですが、そう仕向けた時代でもあったことは、確かだと思います。
 後半は何も文句ないです、乙女心の表現が素晴らしかったです。犯行時に使った岸の時計は、絶対持っていくぞとわかったし(笑)。

ヤマ(管理人)
 ケイケイさんの映画日記の「これは少女期でなければ、絶対味わえない感情ですから。命短し恋せよ乙女」って、もうホントに母心に満ちた結語でしたねー。

(ケイケイさん)
 いやもう、本当にね、「はぁ〜〜」とため息が出るほど、みすずの切ない気持ちが、手に取るようにわかるんですよー。勝手に忍び込んだ別荘のテラスで、岸がひざ掛けをみすずだけでなく、自分にもかけたでしょう? あれはドキドキしますって(笑)。前に『愛人/ラ・マン』で、主人公がラストに流した涙が、少女ではなく大人の女が流す涙だったので、私がその痛々しさに泣いたってお話したでしょう? それとは逆で、みすずの涙は、全て少女だけが流す涙だったと思います。その年齢にしか味わえない経験は、やっぱりして欲しいですね。

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by ヤマ(編集採録)

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