『21グラム』をめぐって
La Dolce vita」:(グロリアさん)
(ローズさん)
神戸美食研究所」:(タンミノワさん)
(TAOさん)
多足の思考回路」:(めだかさん)
Across 211th Street」:(Tiさん)
DAY FOR NIGHT」:(映画館主・Fさん)
ヤマ(管理人)


  No.4536から(2004/06/09)

(グロリアさん)
 ヤマさん、こんにちは。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、グロリアさん。

(グロリアさん)
 今日「21グラム」観てきました。

ヤマ(管理人)
 これは近々観に行くつもりですよ、こちらでも始まりましたんで。

(グロリアさん)
 「ミスティックリバー」以上の重さでしたけど、

ヤマ(管理人)
 予告を観ると、『ミスティック・リバー』のアナベスと同じ台詞が出てきてましたね。

(グロリアさん)
 いろいろ印象に残るセリフはありましたが、アナベスと同じセリフ・・・結びつかない・・なんでしたっけ?

ヤマ(管理人)
 自首するよりも、父親としての責任を果たせと迫ってませんでしたっけ?

(グロリアさん)
 あ、この件でしたか。アナベスの時同様、今回も妻のその心情に深く共感しましたよ〜、万国共通なんだなって・・・。
 運命の過酷さとか、欧米人にとっての神の存在の残酷さなど、いろいろ考えさせられました。

ヤマ(管理人)
 そうですか、観るのが楽しみだな〜。

(グロリアさん)
 役者陣が最高でしたよ!(特にショーン・ペン(*^-^*))

ヤマ(管理人)
 僕はナオミ・ワッツが楽しみなんですけどね(あは)。

(グロリアさん)
 正直言って見直したというか、彼女の存在を「リング」で初めて認識したのでB級女優かと思い込んでいたんです・・なのでオスカー候補になったときは「えっ?そんなランクの女優だったの?」と驚いたんですが、見事な表現力&存在感でしたよ〜

ヤマ(管理人)
 僕は『リング』は観てないんですが、『マルホランド・ドライブ』のとき、かなり注目されてたように思いますよ。

(グロリアさん)
 『マルホランド・ドライブ』は未見なんです。リンチってちょっと苦手で・・・

ヤマ(管理人)
 そうなんですか。僕はわりと好きなんですよ。

(グロリアさん)
 でも、シューテツさんにもお勧めいただいたし、機会があったら観てみま〜す。

ヤマ(管理人)
 僕も今日(6/13)、観てこようかと思ってます、『21g』。
 シューテツさんは、『ツインピークス』好きなら、大丈夫とかって後押しされてましたね(笑)。実は、僕は再見に向けてのDVDを友人から預かったまま、ひどいことに、なんと二年となりつつあるのですが(呆)。

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そして、日誌のサイトアップ(6/20)
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-------女性にとっての中絶について-------


(グロリアさん)
 ヤマさん、御覧になったんですね。さっそく拝読しました。

ヤマ(管理人)
 ありがとうございます。

(グロリアさん)
 ポールと妻の人工授精問題、妻の過去の中絶が医師の失言でわかってしまった瞬間、ポールはとりあえず問題をすり替えて怒るという免罪符を得てほっとしたように感じたのですが、ヤマさんはいかがでしたか?

ヤマ(管理人)
 免罪符を得てほっとした、ですか。そこまでは思いませんでしたね(笑)。単純に、自分の知らされてなかった原因で、自分が不本意な目にあっていることへの憤りのように感じてました。
 それより気になったのは、過去の中絶が結婚前のことでポールと無関係のことなのか、結婚後のポールとの間の子供だったのか、あるいは一度出て行ってから(もしくはその前)のポール以外の男の子供だったのか、ということなのですが、例のブツ切り編集に戸惑っているなかだったので、僕のなかでは、ちょっと不得要領のままに過ぎちゃってて残念です。それもあって、余計に腹立たしい構成でしたね(笑)。

(グロリアさん)
 わたしは「結婚前のことでポールと無関係のこと」と読んだんです。
 自分のレビューにも「因果応報」と書いたんですが、ポールと出会う前の若い頃のことで、

ヤマ(管理人)
 なるほど。まぁ三つのうちいずれであっても因果応報とも言えますが、遠い過去であるほどに、今にして報いが来たという因果の巡りが堪える感じですよね。

(グロリアさん)
 彼女にとってはたぶん、すっかり忘れていたようなことだったのでは・・・

ヤマ(管理人)
 ここんとこがグロリアさん言うところの「報い」のミソってわけですね(笑)。

(グロリアさん)
 なので、今になって人工授精までして子供を欲している自分も、古傷を思い知らされたようなところがあったのでは。

ヤマ(管理人)
 でも、中絶体験を女性が「すっかり忘れていた」りできるんですか?(驚)

(グロリアさん)
 わたしは妊娠も中絶も経験ないのでなんとも言えないんですが、若い頃、やむをえず中絶した友人の何人かが意外にサバサバと(控えめな表現です)そのことを語っていたのでかなりショックを受けた覚えが・・・。

ヤマ(管理人)
 ずっと深刻に引きずり続けるのもどうかとは思うんですが、「控えめな表現」ってとこ斟酌すれば、凡そ屈託の陰なくってな案配だったんでしょうね。それも、なんかヤですね。でもまぁ、そういう彼女らでさえ、体験自体をすっかり忘れ去ったりはできないでいるわけですよね。もっとも、痛みのほうが風化しちゃってれば、すっかり忘れているに等しいって観方もありますが(苦笑)。

(グロリアさん)
 あと、既婚で子持ちの年上女性が「2人でいいと思ってたのに3人目できてしまったから堕ろしたの」などと軽くお話されたりするのも妙な気分でした。

ヤマ(管理人)
 ふーむ、軽く、ですか(苦笑)。あまり見たくない図ではありますが、そういう方も少なからずおいでるんでしょうね。ま、人生いろいろ、女性もいろいろってとこですかな(苦笑)。
 もちろん四六時中いつまでも囚われているもんでもないんでしょうけど、何かの拍子に時折想起しては胸を刺したりすることだったりするんではないのかなぁ。どうなんだろ?(笑)

(グロリアさん)
 今考えると彼女たちのスタンスは若さゆえの態度だったのかもしれませんね・・・。また、当時はほんとに重く受け止めてなくても、後になってズッシリくるのかもしれないし・・・個人差もあるのかもしれないし・・・。

ヤマ(管理人)
 風化っていうことのほうがありがちな人の心性ですから、後から効いてくるっていうのは、一般的には例外的な体験だろうって思うんですが、中絶体験というのは、ポールの妻においてそうだったように、そういうふうに後から重みの増すものなのかもしれませんね。ま、何によらず、一番は個人差でしょうけど。

(グロリアさん)
 いずれにしても体験してみないとなんとも言えませんが・・・。

ヤマ(管理人)
 中絶なんて、体験せずに済ませられるほうがいいに決まってますよ(笑)。

(グロリアさん)
 わたし個人は、女性の中絶の権利を支持する派なんですけどね。

ヤマ(管理人)
 僕は、中絶の権利を支持するというよりは、女性の自己決定権という権利を支持するが故に、手段としての中絶を否定しないって感じかな。中絶自体を権利と位置づける考え方には抵抗がありますねぇ。

(グロリアさん)
 そうそう、根っこは自己決定権なんです。

ヤマ(管理人)
 ですよね。

(グロリアさん)
 でも、こと妊娠、出産に関しては女性サイドだけでは、完璧にコントロールできにくいのが現状ですし・・・。

ヤマ(管理人)
 だからこそ、最終決定権は当の女性に与えられるべきものだって思うんですよ。そして、やむをえないときにはなるべく早めに処置すべきだと思ってますね。

(グロリアさん)
 あの監督は、本質的に宗教的な罪意識の強い人のように感じました。

ヤマ(管理人)
 あ、これはそうかもしれませんねぇ(共感)。少なくとも『ミスティック・リバー』よりは強い感じがしますね、僕的にも。
 だから、グロリアさんがお書きだった、因果応報っていう「巡りの視点」に思いがけなく出会ったときに、僕、すんなり「なるほどなぁ」って思えたんでしょうね。


-------何がマズかったのか-------

(グロリアさん)
 あの時間軸を無視した演出はNGでしたね・・・

ヤマ(管理人)
 ですねー。なんでそうしてたのかが僕にはピンと来ませんでした。

(グロリアさん)
 わたしもせっかく助走をつけて盛り上がりつつあるテンションが、いちいちブツ切りにされてしまう感じでした。

ヤマ(管理人)
 そうなんですよ。特に最初のほうは、わけがわからなくて戸惑いましたよ(苦笑)。

(グロリアさん)
 3人の演技の吸引力が強いだけにあの演出がすごく邪魔な気がしてイライラしました。

(ローズさん)
 ヤマさん、グロリアさん、こんにちは。ヤマさんの『21g』評を拝読しました。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、ローズさん。ありがとうございます。

(ローズさん)
 人間味溢れる体を張った演技がすばらしいナオミ・ワッツ、男前な抑えた演技のショーン・ペン、目で物言うデル・トロ。俳優たちのエモーショナルな演技がすばらしかったのに、映画の演出や内容にはあちこちに“わだかまり”が残りました。

ヤマ(管理人)
 ローズさんもでしたか(笑)。僕は「三者三様の喪失の物語」と観、演技者が発揮した、各シーンに宿っている情感の濃密さの程を感じることでそれなりの収まりは得ましたが、“21グラム”の意味するところは結局ピンと来ませんでした(苦笑)。

(ローズさん)
 あのナオミやショーンを観たくて、もう一度観ようと思いましたが、見直したら、私の“わだかまり”がもっと深まる気がして止めました。
 臓器移植、堕胎、人工授精、薬物依存、轢き逃げなどピースのようにばら撒いて後で繋ぎ合わるなんて・・・テーマは重過ぎるのに“陳腐な手腕”に不快感を抱きました。

ヤマ(管理人)
 やはりここが引っ掛かりましたか(笑)。
 観る側への不親切さを押してまで意図したものが何であるかが伝わるような効果を感じられなきゃ、やはり納得がいかないですよね。

(ローズさん)
 題名からは“命の重さ”を描いているとばかりおもっていたら、イニェリトゥ監督が描いていたのは“命の変遷”でしかなかった。

ヤマ(管理人)
 僕が日誌の冒頭に綴ってる部分ですね。そうなんですよ。その受け取りに留まらざるを得ない形で終わると、僕も何だかな〜で終わっちゃった気がするのですが、幸いにして、なぜポールは自死を選択したのだろうっていう引っ掛かりを残してくれていたので、臓器移植による延命について、ある種新鮮な視点から臨んだ作品だったことに感慨を得られたのでした。

(ローズさん)
 そこまでは理解できるのですが、最後は、クリスティーナの人格から「夫と子どもの復讐」と「妊娠」とが結びつかなくてシラけました。

ヤマ(管理人)
 復讐への囚われという過去に向けた視線から、やがて訪れる出産という未来に向けた視線に切り替えるチャンスをポールの遺した命によって得た形になっていたようには思うのですが、やはり図式的というか、少々安直な仕舞い方だという気はしますよね(苦笑)。

(ローズさん)
 監督にとって、“ひとつの心臓”の行き着くところとして、はじめに“クリスティーナに命を宿す”がありきだったわけです。私は現実的なので女として「子どもができれば幸せなの?」と疑問に思うし、

(グロリアさん)
 同感です! ラストで妙に晴れ晴れしたクリスティーナには違和感を覚えました。女が新しい生命を宿す=無条件の幸福、とはなんて短絡的かと・・・

(ローズさん)
 中絶や人工授精をするような女には命を授けないけど、何もかも失った女には命を授けよう・・・だなんて、時代錯誤も甚だしくていまどきの男も受け入れないですよね。

ヤマ(管理人)
 「授けよう」なんていうと、確かに「時代錯誤も甚だしくて、いまどきの男も受け入れない」感じになりますね(苦笑)。こうして振り返ってみると、改めてあの図式的な人物配置の作劇的な構成力の弱さが浮かび上がってきますね。このへんの図式に対する反発については、女性のほうが敏感なんでしょうねぇ(笑)。
 でも、取り敢えず喪失感のもたらした途方に暮れるところからの抜け出しの手掛かりにはなるかもしれませんよ。まぁでも、それだけで幸せを約束してくれるようなものではありませんよね。

(ローズさん)
 それに、夫の子かポールの子かぼかしているけど

ヤマ(管理人)
 これはもう僕は、ポールと受け取るしかないって思ってますね(笑)。
 確かに明言されてはいませんし、現実には両方ともに可能性ありですが、夫マイケルの子だとしたら、フィクションドラマとしての構成が壊れちゃいますもん(笑)。

(ローズさん)
 そうですよね〜。ところが、パンフでは監督はこうコメントしています。
 「クリスティーナの妊娠はポールの子かもしれないし夫の子かもしれない。いや、ふたりの男の子どもと考えてもいいし(笑)。こうなると、中南米文学特有のマジック・リアリズムの領域に入ってしまうけどね
 マジック・リアリズム?!?!こういう領域があるんですね(苦笑)。

ヤマ(管理人)
 なんじゃ? それ!(笑)。「ふたりの男の子どもと考えてもいいし(笑)。」って(呆)。要はそれ、作り手として解答のような形で言葉による提示をしたくないってことの意思表示なんじゃないですかね? つまんない質問しないでよ〜ってな(笑)。前後が不明なんで、断じかねるんですけど、マジック・リアリズムってな物言いの背後には、質問者への揶揄が潜んでいるような気がしますよ(笑)。

(ローズさん)
 パンフのインタビュアー(佐藤友紀)に関しては、監督の映画を理解した上での実に真摯な質問内容で、監督もありのままの心情を吐露していたように感じます。

ヤマ(管理人)
 そうでしたか。そのうえで、そんな人を食ったような言葉で韜晦するのは、いささかズルイですね。

(ローズさん)
 こうも言ってるんですよ(笑)。「21gは愛する人を遺して逝くことに対する重さ。つまり無限の重さなんだよ!
 こちらはそれを描いていると期待して映画を観たのですが・・・。

ヤマ(管理人)
 この期待で臨むと、確かにハズされた気持ちになってしまうような作品でしたよね。

(ローズさん)
 結局のところ、俳優たちの演技は重厚で真摯だったけど、命の重さを21gの軽さにしか描けなかった監督という気がします。

ヤマ(管理人)
 こりゃまた強烈ですな〜(笑)。
『アモーレス・ペロス』(だっけな?)のほうが、僕的には、よりフィットしなかった作品だったのですが…。

(グロリアさん)
 使い古された「男が作るドラマ」臭が漂いました。

ヤマ(管理人)
 たはは〜、形無しや(笑)。

(ローズさん)
 そもそも二人も子どもを持った女性なら、誰の子か分からないような妊娠はしないし、薬物だって断っているはずですよね。

(グロリアさん)
 そうそう、このあたり雑な感じは否めませんよねぇ・・。

ヤマ(管理人)
 でも、それについては、経産婦の女性なら絶対にそういう妊娠はしないっていうものでもないように思いますよ。既に夫も娘も亡くしていたのだから、クリスティーナにあまり見境のようなものはなかったのではないでしょうか、ね。
 例のバラバラ編集のお陰で今いち記憶が定かでないのですが、彼女と薬物の関係も、結婚してから断っていた薬物に例の事故の後、再び手を染めるようになっていたと受け取ってました、僕。

(ローズさん)
 あそこまで地獄を彷徨っているクリスティーナだからこそ、薬物摂取しながら妊娠を望むことはありえないと思いました。

ヤマ(管理人)
 実際、僕も彼女が妊娠を望んでいたようには思ってませんでしたね。むしろ、再び手を染めた薬物摂取から、再々度断つチャンスを“図らずも”与えられたように感じましたよ、僕は。

(ローズさん)
 監督のあたかも“神のような采配”に嫌悪感を否めません。

ヤマ(管理人)
 そうですね、とっても、とっても図式的なんですよね。それを渾身のパワーでカバしているのが演技者たちですが、補いきれない結果に終わっていると感じるか、補って余りあると感じるかで、ここんとこの作品としての傷への印象が違ってきますよね。

(ローズさん)
 上映中は断片を繋ぎ合わせることに目が向くし、俳優たちの真摯な演技に圧倒されてしまいますが、後でゆっくりと“混乱した頭”を整理してみると、補いきれない強引さが浮き彫りになってきますね。

ヤマ(管理人)
 それはそうかもしれませんね。
 でも、グロリアさんやローズさんと意見交換できて、逆に却って面白くなった部分が僕にはありましたよ。

(ローズさん)
 ポールとクリスティーナが惹かれ合うことには共感して(二枚でインテリなショーン・ペンなんてそうそう拝められないので)、グロリアさんとの“ショーン&ナオミ話”は、それはそれは燃えましたけどね(笑)。

ヤマ(管理人)
 僕が観る前だったので、きちんとは読まないようにしてたんですが、さっき追ってみると、二人のセックスシーン、絶賛っぽかったですね。凄く生々しいのに、素敵って(笑)。

(ローズさん)
 あのシーンも素敵でしたけど、ふたりのシーンは並々ならぬ情熱が伝わってきました。

ヤマ(管理人)
 僕は屹立した乳首に見入ってたんですが(苦笑)。

(ローズさん)
 2回観た『ミスティック』では、ショーンが泣き叫ぶ場面で、どう観てもショーンの涙が流れていなかったけど(笑)、

(グロリアさん)
 ひゃ〜!さすがローズさん、シビアなチェック(笑)。

(ローズさん)
 『21g』のショーンの涙は切なかったですねえ・・・。ぐすん。

ヤマ(管理人)
 やはり物語ではなく、シーンを味わう作品なんでしょうね(笑)。

(ローズさん)
 はい、そう自分に言い聞かせることにしますね。

ヤマ(管理人)
 さすれば、不満が低減されて、けっこうよかったじゃんって思えて、オトクですし、ね(笑)。
 あ、そやからバラバラにしてたって? まさかね(苦笑)。

(ローズさん)
 ヤマさん見抜いてますね。
 「ひとりひとりの人生のどの断片を見せるべきか(中略)意外性が強い方が面白いんだからさ

ヤマ(管理人)
 ありゃ(苦笑)。おちょくったつもりだったのに、当人がそんなこと言ってるんですか(笑)。

(ローズさん)
 これって監督のただの自己陶酔ですよね。

ヤマ(管理人)
 確かに(笑)。意外性というような目先の面白さを狙うタイプの物語ではなかったような気がするんですけどね。

(ローズさん)
 ヤマさんとグロリアさんとおしゃべりして心の折り合いがついて感謝しています。

ヤマ(管理人)
 そいつはよかった(にこ)。こちらこそ、『ミスティック・リバー』以来、久しぶりにまたお書き込みいただき、とても喜んでます(感謝)。

(タンミノワさん)
 白熱してますねえ・・・21g・・
 あ、こんにちわ。タンミノワです。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、タンミノワさん。

(タンミノワさん)
 まだ未見ですが、皆さんの議論を読んだだけで既におなかいっぱいになり、なんとなくこのまま行かないような気がしてきました。(笑)

ヤマ(管理人)
 あ、でも、それももったいないですよ。シーンの持っている力は相当なものですし、話のタネには充分以上になる作品だと思いますよ。

(タンミノワさん)
 個人的に時系列をいじくったモノで効を奏してないのを見るのはつらいかも・・

ヤマ(管理人)
 この一点では、僕も確かにお勧めできない作品ですが、かといって、それが致命傷になっているというわけでもなく、おい、この編集、気にいらねぇぞって気分にさせられるってだけのことですから。

(タンミノワさん)
やっと「21g」を見てきたので、ご報告。私も、ここで皆さんが白熱してお話されていたのと同じような事を感じました。

ヤマ(管理人)
 流すはずが検分に至ったようで(笑)。覚悟の程にも関わらずダメ出しとなったということは、やっぱり合わないんでしょうね。

(TAOさん)
 タンミノワさん、こんにちは。見てしまいましたか(笑)。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、TAOさん。

(タンミノワさん)
 TAOさまもごらんになってたんですね(笑)。

(ローズさん)
 タンミノワさん、覚悟の(笑)「21g」鑑賞お疲れさまでした〜。
 TAOさん、はじめまして。

(タンミノワさん)
 時系列を無視した編集の効果のなさが物語を損ねていますね。

ヤマ(管理人)
 ここにお書き込みの皆さんの大勢と同意見ということですね。
 この編集における積極的な意味と効果というものについては、まだ誰も発見するに至ってませんよね、僕も含めて(笑)。

(タンミノワさん)
 「このカントクはこういう編集がしてみたかったんだなあ」という意味合いを見出しております(笑)。

ヤマ(管理人)
 意味は意味でも、全然「積極的な意味や効果」やないやん(笑)。

(TAOさん)
 あ、私は逆の感想をもちましたよ。意味も効果もあります。
 なにしろ、とっくに見ていたにも関わらず、ここにも書き込む気力がなかったほど、とにかく苦手なタイプの映画で、あの編集だったから、まだしもパズルを完成させる興味だけは維持できたけど、時系列どおりの編集だったら、物語に入り込むしかなく、よけいに胸焼けしたのではと・・・。

(タンミノワさん)
 あ、そうか。そういうのがありましたか。

ヤマ(管理人)
 お、これは凄い!って興味をそそられたのですが、なんと胸焼け対策に講じた目くらまし効果としての評価だとは(苦笑)。

(ローズさん)
 ノーマルだったら“粗”の隠れ場所がありませんものね。

ヤマ(管理人)
 うわ、きっつぅ〜(笑)。まぁ、そう言えばそうなんですが(笑)。

(ローズさん)
 愛がなければこんなに熱く語れない「21g」です。なんてね(笑)。

ヤマ(管理人)
 うんうん(笑)。きっつい話をとんがらずに交わせるとこでもありたいっていう、我が「間借り人の部屋」の掲示板理念からは、とってもナイスな今回です。

(ローズさん)
 「とんがらずに交わせる」ってエクセレント!

ヤマ(管理人)
 ですよねー。そういう意味でも我が「間借り人の部屋」は、お客様に恵まれていると常々思っております(感謝)。

(ローズさん)
 クオリティの高いこちらの皆さまとお喋りができてワクワクします。

ヤマ(管理人)
 僕もこれでどれだけ映画を観る楽しみを深めてもらったことか!

(ローズさん)
 で、重ねてきついこと言いますと(笑)、時系列交錯のレベルもただかき混ぜただけで特に斬新でもなく・・・。

(TAOさん)
 ほんとほんと(苦笑)

ヤマ(管理人)
 はいな、そんなふうに思えましたよね。それゆえ???なのでした・・・僕も。

(タンミノワさん)
 私、見る前に大体わかってしまっていたので、あまりストーリーを完成させる楽しみは味わえなかったんですけど・・

ヤマ(管理人)
 予告編のせいか、拙サイトの日誌及び掲示板のせいか?(笑)
 もし後者だったら、ごめんなさい。

(TAOさん)
 好きな役者が揃いも揃って虚しく熱演するのって、つらい・・。

(タンミノワさん)
 お察しします。なんでこうなってしまったかっていうと、なんだかやっぱりお話に軸がないんだな、と思っちゃいますねえ。

ヤマ(管理人)
 そうですね。脚本に一番の罪がありそうですね。

(タンミノワさん)
 私もこういう映画って苦手なんだな、と認識を深めました。重たいテーマを重たくやるんじゃ芸がない・・・とか。

(TAOさん)
 そうそう、私が言いたいのはまさにそこですよ、なにしろここ数年間も毎週「ER 緊急医療室」で、はるかにズシリと来る命のドラマを日常的に淡々と見せられてしまっている身には、この程度の掘り下げで深刻ぶられてもねえ。

ヤマ(管理人)
 あは。もうコテンパンですねー(笑)。
 元々がテーマもので芸に走るのは、洋装に下駄を履くみたいな「履き違え」なんですけどね(笑)。でも、こういうつらさを味わわされると、TAOさんが作り手に敵意をお感じになるのも宜なるかなって感じですなー(笑)。

(TAOさん)
 うーん、この監督はもうぜったいに見ないぞ。『アモーレス・ペロス』は予告編で危険を察知して回避したのに、今回は役者につられてついフラフラっと。不覚でありました。

(ローズさん)
 それをお聞きして、なぜか安心いたします。ショーン、ナオミ、デル・トロの最高級の食材を監督の劣悪な料理さばきで台無しにされてしまって残念です。TAOさんに続いてイニャリトゥ監督拒否宣言をいたします(笑)。

ヤマ(管理人)
 あは。脚本のギジェルモ・アリアガ・ホルダンというのは『アモーレス・ペロス』でもコンビのようでしたからね。
 でもまぁTAOさん、百聞よりも一見ですから、まずは観ての確信を得て、それはそれなりによかったじゃありませんか(笑)。僕なんか『アモーレス・ペロス』観たうえに、今回また観てるんですし(苦笑)。

(ローズさん)
 でも、拒否宣言しててもDVDが出たら、ショーンやナオミ観たさに、ついフラフラっと手を出してしまいそうなヤワな自分が怖いです(笑)。

ヤマ(管理人)
 再見して何かまた違った相貌を呈するようでしたら、ぜひとも教えてくださいね(笑)。

(タンミノワさん)
 私は、時系列を無視した編集のおかげで、ショーンにしろ、デルトロにしろ、各キャラに全く感情移入できないまま、終わってしまいました。

ヤマ(管理人)
 キャラもいけませんでしたか、それも全〜部(苦笑)。

(タンミノワさん)
 特に、デルトロの神頼みの男のキャラ。あれは私が一番忌むべしなキャラで、見ながらもイヤになってしまいまして、

ヤマ(管理人)
 人間同士の関係には目を向けていないという点では限界ありですが、改心=一気に立派な人ってのも嘘っぽいですから、あのくらいのほうが、いかにも風ではあります(笑)。でも、タンミノワさんにとっては、改心と言うよりも、信心へ逃げ込みないしは自己放棄してるのに、そのことに無自覚じゃないかってなネガイメージのほうが強かったわけですね(笑)。確かにそういう面は拭えませんね。

(タンミノワさん)
 ど〜も理屈ではなく、生理的にダメだったような感じがします。

ヤマ(管理人)
 大体こういうのが当たってるんですよね、えてして。手前味噌を言いますと、僕は論理的に映画を鑑賞しているような誤解をされがちですが、実際の処は直感派で生理的とも近い感性派なんですが、後付け理屈が膨大で、そこに注目してくださる方が多くて、映画を観るのも論理的に観ていると勘違いされるようです(苦笑)。

(タンミノワさん)
 しかもそれ(彼らのキャラ)がどう変化するかもわからないまま、あのエンディング・・
 皆さんの言うように、ナオミの妊娠をとってつけたように持ってくるあたりでは「え〜かげんにせんかい」と思ってました(笑)。

ヤマ(管理人)
 こういう図式的構成というのは、決まると暗示生や象徴性に富み、作品に風格をもたらしてくれますが、すべっちゃうと安っぽさの極みにもなったりするので、諸刃の剣というか、こわいもんですよね〜。

(タンミノワさん)
 ローズさんがおっしゃるとおり、男性視線の映画、なんですね。母性神話というか幻想というか・・

ヤマ(管理人)
 安易な図式的構成が滑っちゃうと、ここまでの反発を誘っちゃうワケですよねぇ(しみじみ)。
 まぁでも「男性視線の映画」との観点からすると、確かにぐぅの音も出ないトホホ作品ではありますが、僕的には「得た命以上に失ったもののほうに焦点を当てていた映画ではなかったかという気がしたときに、臓器移植による延命について、そういう視点から臨んだ作品に初めて接したような感慨を得た」作品でもありましたんで、その他もろもろには日誌にも綴ったように大いに不満もありつつ、まぁ切って捨て去るのも酷かなって気もしてましてね(苦笑)。

(めだかさん)
 21gは胎児だと・・・2〜3ヶ月くらいですね。魂の重さだというなら水子の魂はどうなる?とか考えちゃったり^^;
 ヤマ様、こんにちは。お久しぶりです。『21g』をアップなさっているのを拝見して嬉しかったです。急ぎ自分のをざっとまとめて拝読に再訪しました。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、めだかさん。ありがとうございます。僕も早速拝読しました。
 「臓器移植や不妊治療、人工受精、依存症、被害者遺族と加害者、宗教など、気にしていい鉤はいろいろ見られるのだが、そのどれもが飾り程度の深さと意欲の無さを感じてそれらについてあまり考える気にならない。」ってのが、僕が日誌でぼやいていた思いと重なり、なんか嬉しく思いました。

(めだかさん)
 私は脇見せずにすんで楽でもありましたけど(笑)。情報量が乏しいな〜という寂しさはありましたね。

ヤマ(管理人)
 不満というほどのものではなかったわけですね。

(めだかさん)
 こちらの掲示板の内容は、私が引っ掛かった部分に皆さん言及しておいでで、とても興味深いです。

ヤマ(管理人)
 それは、よかったですねー。管理人としても嬉しい限りです。

(めだかさん)
 覗いてみて皆さん、似たところに言及しておいでなのに、驚きました。だから、つい入ってしまったのですけれど^^; やはり、多くの方が同じようなところに掛かるというのは巧くいってないってことなんでしょうねえ。
 私もあのパズルには不快な思いをいたしましたので。

ヤマ(管理人)
 めだかさんもそうでしたか(苦笑)。

(めだかさん)
 でも、こちらの流れに逆らうようで悪いのですが、不快ながらも、私はあのパズルの効果は、認めています。ここでの評判は悪いようですし(笑)、中和に少しだけ入らせて頂いても宜しいでしょうか。

ヤマ(管理人)
 どうぞ、どうぞ(笑)。

(めだかさん)
 TAOさん(ご挨拶が遅れまして。お久しぶりです(^^))のおっしゃる「物語に入り込むのを妨げられた」というそれこそが私にとっては効果でしたから。

ヤマ(管理人)
 あ、僕はTAOさんの書き込みをかなり揶揄的なものとして受け取りましたが、めだかさんにとっては、真っ当に積極的な意味と効果だったんですね。つまり、気分としては不快ながらも、その効果を享受したおかげで「死にゆく定の決まった21gに希望は無いかもしれない。勿論、再生も救いも無い。けれども、生と死の間の重みはその21gを使う己の意思にあると思いたい。その重みの’変化’とその影響を見せてくれた作品のように思うのだ。」との結語を得るに至ったということなんでしょうか。


-------描かれたのは命の重さではなく、軽さなのか-------

(タンミノワさん)
 あと、一番腑に落ちなかったのは、ヤマさんと同じでショーンの死に方です。これって、「命の重さ」をテーマに謳っておきながらも、すごく命を軽く扱った設定だと思うんですよ。

ヤマ(管理人)
 あ、これ、なんか面白い切り口への手掛かりになりそうな気も。

(タンミノワさん)
 「人の死を待ちながら生きるのがイヤんなっちゃったので、いい機会をとらえて自殺しちゃいました」って風に見えて、ほんと腹立たしかった。

ヤマ(管理人)
 ここでも買ったのは怒りでしたか(笑)。

(タンミノワさん)
 喪失をテーマにするならするで、どう救済があったかも不明なまんま終わられちゃって・・ほんと腑に落ちませんでした。

ヤマ(管理人)
 なるほどね。喪失を主題にしているのであれば、喪失だけを描くのではなしに救済でも破滅でも、その後の顛末を示すのは作家としての責務だってことですね。観客への丸投げっちゅうのは潔くないぞってね。それは、観る側の想像力を喚起することの域を越える不実な手抜きやと(笑)。

(タンミノワさん)
 別に救済しなくてもいいんですけど、かな〜りラストはイロイロと放り出して終わってますよね。それは無責任だなあと。

ヤマ(管理人)
 やはりそうでしたか(納得)。まぁ、それは作風がどうあれ、丸投げはいかん!って感じはありますよね。

(めだかさん)
 タンミノワさん、ローズさん、はじめまして。
 あの映画は「命の重み」がテーマだと見るとクリスティーナのラストは甘い、というか陳腐ですよね。同感です。

(ローズさん)
 めだかさん、はじめまして。
 ほんとほんと。クリスティーナが妊娠するという説得力がゼロ以下でした。

ヤマ(管理人)
 このエピソードで支持票、大幅に落としたみたいですね(笑)。

(めだかさん)
 ただ、もともと命の「重み」がテーマだと、あまり説得力がないかな?とも思うのです。実際、本当に「命の重さ」をコテコテに見せて感情移入させられてたら、TAOさんじゃありませんが胸焼けを起こしてウンザリしてたと思います。

(ローズさん)
 イニャリトゥ監督の中には“命の変遷”の落ち着き所として、どんな手段をとっても“妊娠の必要性”があったわけですよね。

ヤマ(管理人)
 これ、鋭い御指摘だと思います。作り手の都合なんですよね〜。ここのところを失敗と見るか、確信的と見るかで受け取りようが随分違ってきますし、確信的であった場合、それゆえに更に挑発される反発というものが出てくるものですよね。

(めだかさん)
 それは確信でしょうね。ハチドリだのチョコバーだの、あれだけ「軽い」と言ってるのですから。

ヤマ(管理人)
 命の重みをテーマにしたのではなく、命の軽さをテーマにしたのだから、というわけですね。なるほど。

(めだかさん)
 私が捻くれてるからそう感じるのかもしれませんが^^;誰にとっても個人の「生」は同じ重みは無く距離次第、実感を持てるかどうか次第で自分の「生」すらも軽くも重くもなり。少しそのテーマのニュアンスを変えて、その重み(21g)を尊さではなく「生の実感」と見ると「生」が軽いのもありかなと。

ヤマ(管理人)
 生きている実感の儚さ軽さ、頼りなさってことですね。なるほどね。ちょっとしたことや拍子で振り振られしてしまうのが人の生ですからね。でも、そう眺めるのであれば、もう少しシンパシーといったものが浮かんできてもいいように思いません?(笑)

(めだかさん)
 シンパシー、なかったですか?(笑)

ヤマ(管理人)
 めだかさんも「単にこの作品がその生と死の間の‘変化’を見せているだけのように思えたこと。」をすっきりしないと綴っておられるんですが、要はそういうことですよ。「ちょっとしたことや拍子で振り振られしてしまうのが人の生」との変化を眺めるのであれば、ってことですから。

(めだかさん)
 ん〜。それは私の場合はシンパシーがないということにはならないので。むしろ、シンパシー(共感)があるからこそすっきりしなかったのでしょう(笑)。行動の流れに感情移入はできなくても、個々のシーンの感情の発露にはシンパシーがあったのではないでしょうか。それでなくては演技の評価はできませんでしょう。

ヤマ(管理人)
 そうなんでしょうかね? 個々の感情の発露に対しても、シンパシーと言うよりは、僕は、突き放した眼差しのようなものを感じましたよ。それと、僕が問題にしたシンパシーというのは、個々の感情の発露に対してというより、上記したように、翻弄され変化に晒される人生へのまなざしのほうです。

(めだかさん)
 ヤマ様がおっしゃるシンパシーというのは同情という意味ですか?

ヤマ(管理人)
 作り手の登場人物に寄せる同情ではありません。共感性です。

(めだかさん)
 ヤマ様は共感性を感じなかったし、私は感じたということですね。それもこの映画への印象の違いなのでしょう。面白いですね。


-------重さ軽さではない、生の実感-------

(めだかさん)
 ともかく、この映画は、重いも軽いも含めての様々な21gを見せてくれていますし、

ヤマ(管理人)
 21gを「生の実感」と解するなら、そのとおりですね。マイケルの死によって、本当に様々な感情の揺らめきが各人にもたらされたわけです。

(めだかさん)
 クリスティーナの妊娠も、話の救済でも希望でもなく、一つの21gのあり方にすぎないように見えるのです。

ヤマ(管理人)
 お子さまをお持ちの女性であっても、このようにクールな観方をなさる場合もあるわけですよね(面白)。

(めだかさん)
 クールなんじゃなくて(笑)ポール寄りだからですよ、きっと。

ヤマ(管理人)
 だから、クリスティーナへの因果応報的な責を負わせるに忍びないと?(笑)
 でも、救いであれ、責であれ、ポールにとっても彼女が抜け殻になっているよりゃ、いいんじゃないですか?(笑)

(めだかさん)
 ひとつ、ヤマ様の日誌を読んで得心が行った部分があるのです。

ヤマ(管理人)
 ありがとうございます。

(めだかさん)
 ポールが妊娠中絶を知って人工妊娠を拒否するシーンの‘ポールの怒り’が不思議だったのですが、『失ったのは自身のオリジナルなポンコツ心臓だけではなかったということだ。・・・中略・・・喪失感のほうを自覚していたのではないか』との行で、その喪失感が失った「21gの実感」としてあったならば、その代替のような人工妊娠には当人としては反発するのも仕方が無いように思いました。

ヤマ(管理人)
 そういうふうに繋がりましたか。面白いですね。僕自身は、喪失感という点では、むしろ逆に受け取ってますよね。囚われのなさを喪失したっていうふうに。

(めだかさん)
 別居の際には中絶しても、死別なら子どもが欲しいというのは、当人にしてみれば、子種と命が等価という感じがしてしまいますかね。

ヤマ(管理人)
 ということは、めだかさんは、メアリーの中絶は別居中のことで、また、ポールとの間の子供だったと見ているわけですね。

(めだかさん)
 医者に対する説明とポールへの言い訳で2回「別居していたから」という台詞があったと思いました。ポール以外の人物の子にしてもストーリーに意味がないですし、普通にポールの子じゃないでしょうか。

ヤマ(管理人)
 僕もポールとの間の子だと思ってました。別居中かそれ以前かってことは見当つけないままでしたけど。
 ところで、メアリーがポールとの間の子供を欲しがった思いというのが、僕にはよく分からないままに来ていて、そのまま流しちゃってるんですが、死別するなら代替え的に欲しいって感覚があるんでしょうかね?(不可解)

(めだかさん)
 この感覚は、私にも分からないですね。代替を望むとしたら、自分が救われる以上の目的があるとは思えませんが。認める認めないは別として、私が男だったら冗談抜きに良い気持ちは絶対にしなさそうです(笑)。

ヤマ(管理人)
 僕は男ですが、心境的には不明ですね〜。残すことに執着を覚えるのか、執着は覚えずとも求められれば応じるのか、人工授精までして残したくはないのか、何が何でも自分の子供など残したくはないのか、ポールがどのタイプの男なのかは、掴み切れてません。
 自分だったらと考えるのは、既に3人も作っといてナンセンスですし、ね(笑)。

(めだかさん)
 私も自分の遺伝子を残すことに執着はないんですけどね(笑)。うーん。。。相手が残したがった時にそれを自分への愛情の形と受け取ったら渋々でも折れるかも。(いえ、私だったらの場合です^^;)
 ポールが人工授精を拒絶した時には「事情が変わったんだ」という台詞もありますし、彼はまだこの時は不適合を知らないわけですし。過去の中絶を愛情の終わりと見たら、愛情の成型ではなく命の代替にすぎない人工授精は拒絶するかな、と。ヤマ様のおっしゃる「囚われのなさの喪失」の心境もありますね。いや、本当にどうしてメアリーはポールの子に拘るんでしょうね? 確かに不思議になってきました。


-------監督インタビューについて、再び-----

(めだかさん)
 ところで、ローズさんとの話に横から失礼ながら、パンフのインタビューについてのヤマ様の誤魔化してるとの見解には少し異議あり、です(笑)。インタビュアの質問の焦点が悪いと思うな、あれは。インタビュアの「この二つの妊娠(メアリーの妊娠とクリスティーナの妊娠)は「命がつながっていく」ことを意識したものですか?」に対して「その思いは確かにあったかもしれないな」と答えています。可能性は否定しないけれども、それが妊娠の意識上の答えではないと言っているのです。で、妊娠が誰の子かということに拘るなら「マジック・リアリズムの領域に入ってしまうけどね」と言ってるんです。ぶっちゃけ、監督はそれこそ行きずりでも誰の子でも良かったんじゃないでしょうか(笑)。

ヤマ(管理人)
 あ、うえで「そんな人を食ったような言葉で韜晦するのは、いささかズルイですね。」と書いた件ですね。僕はパンフのインタビューを読んでないので、「前後が不明なんで、断じかねるんですけど、こういう物言いの背後には、質問者への揶揄が潜んでいるような気がしますよ(笑)。」と書いたように、インタビューの件についての見解には、未読ゆえの留保を一定掛けてるんですが、めだかさんのおっしゃるような経緯があるのであれば、やはり質問者への揶揄があったのかもしれませんね。
 それで「二つの妊娠(メアリーの妊娠とクリスティーナの妊娠)」のうち、メアリーの妊娠が過去の中絶を指しているなら、二つに括って並べるようなものではないように思いますから、きっとそうではないですよね。ですから、妊娠と言うより、人工授精(メアリー)であれ自然受胎(クリスティーナ)であれ、もしポールが命を遺すということにおいて、それに対する作り手の意識を問うたのなら「その思いは確かにあったかもしれないな」と回答する以上、それが「クリスティーナの妊娠はポールの子かもしれないし夫の子かもしれない。いや、ふたりの男の子どもと考えてもいいし(笑)。」という答にはならないのではないか?と思うんですが、インタビューの全体を掴みかねるので、断じる気はありません。
 ただ、「可能性は否定しないけれど、答えではない」と言ってる「可能性」というのは、父親が誰かという可能性ではなく、作り手に命の連続性に対する意識があったかどうかの可能性のことですよね。だとすると、「確かにあったかも」と「可能性は否定しない」では、かなりニュアンスが異なるような気がするのですが、これもインタビューを読んでないので、僕にはよく分かりません。
 「それが妊娠の意識上の答えではない」というのは、作り手にポールの命の連続性に対する意識があったとしても、それによって図式的に作り手が物語上クリスティーナに妊娠させたというわけではないっていうことを、作り手が弁明してたっていうことなんでしょうか?
 それなら、そういう弁明は当然にしてするだろうなと思いますが、「作り手の意図」と「観客に見えてしまう結果」としての図式的っていうのは、当然にして一致するものでも、また、どっちが正解というものでもありませんよね。
 インタビューを読まれためだかさんが「監督はそれこそ行きずりでも誰の子でも良かったんじゃないか」と思えるような答え方をしているというのも、誰の子でもよかったというよりは、いかにも図式的と言われ兼ねないから、そう答えざるを得ないって感じですが(笑)。ま、いずれにしても、僕の関心は、作り手の真なる意図なんかではなく、受け手各個人に見え映った作り手の意図のほうなんですよね。
 それに、インタビューで監督がどういう思惑で答えていたのかは、そのインタビューの全体をも知らずに断じられることではありませんから、僕の見解は、あくまでさまざまな仮定と留保を添えたうえで、一般的にも、インタビューに対する作り手の言葉による回答には、作り手の弁だからといって、そのまま言葉どおりに受け取ると誤解に繋がることがままあるよということを言いたかったのでした。

(ローズさん)
 めだかさんのおっしゃる「ぶっちゃけ」、そのとおりですよね。ちっとも重い映画ではありません(笑)。

(めだかさん)
 ですよねえ。まず「妊娠」なんですよね。クリスティーナの復讐とこれが繋がらないというお気持ち、とても分かります。で、この後にまた経過無しに突然、4ヶ月くらいの妊婦でお腹を撫でるクリスティーナが突然現れるではないですか。「妊娠」を解決の安易な手段にしているようで、不可解極まりない。

ヤマ(管理人)
 でしょ。

(めだかさん)
 女性の立場から言わせて頂くと、「妊娠」をこういう形に都合が良く使われるということは非常に癇に障ります。カチンときますね。

(ローズさん)
 カチン!カチン!カチン!

(めだかさん)
 これがありがちな男性視点に見えるというのは確かにあります。が、私はあまりにも陳腐すぎたので、今時こんなベタなやり方で生命賛美するような映画があって欲しくないという自身の願望もありまして(笑)、ヤマ様がおっしゃるところの「図式的」と見られるリスクを侵しても「妊娠」をクリスティーナの結果にしたい理由が何かあったのだろうと思いました。

ヤマ(管理人)
 そんなふうに作り手にコミットしたい気持ちにさせるだけの魅力が、あの映画にはあったということでしょうね。それは分かりますよ、僕にも。

(めだかさん)
 これは監督の意図ではなく私に映った作り手の意図ですよ(笑)>ヤマ様

ヤマ(管理人)
 はいはい(笑)。

(ローズさん)
 私は「えっ、クリスティーナが妊娠?なんでそーなるの?」とパンフを買ってしまったのですが、監督コメントを読んでいると、この人はじつにあっけらかんと“命”を描いているんだなって思いました。で、こっちもあっけらかんと「私はレッドカードよ!」言ってもいいかななんて。

ヤマ(管理人)
 そうそう、観客は、審判よりまだエライんです!(笑)

(ローズさん)
 きっと、中南米映画として撮った方が違和感がなかったような気がします。
 時間軸交錯がなかったら、ベタなメロドラマですよね。ショーンとナオミなら観てもいいかななんて・・・ゆるゆるな私です(笑)。
 ともかく、前回は一部抜粋だったので、ヤマさんを混乱させてしまいました。

ヤマ(管理人)
 いえいえ、どういたしまして。

(ローズさん)
 冒頭のINTERVIEW部分を全文掲載します。(インタビュー・佐藤友紀)

ヤマ(管理人)
 うわぁ、恐れ入ります(深々)。

(ローズさん)
---誰もが知りたがることだと思いますが、どのようにこの脚本を構成していったのでしょう。
 「まず最初にいちばん初めの草案を作った。悪くはなかったよ。でも、大して面白くなかった(笑)。僕に言わせると、物語の作り手はその物語にとっていちばんいい語られ方をわかっていなければならない。だって、作り手と受け手ではもう絶対的に持っている情報量が違うわけだからね。つまり、観客の方は物語に関して全く予備知識がないわけで。ただ難しいのは、この段階では各々のキャラクターについて、ひとりずつ人生のどの断面を見せるべきなのかを慎重に考えなくてはならないということだ。観客が想像するだろう内容とは大きな隔たりがある。つまり意外性が強い方がやっぱり面白いんだからさ」
---撮影の順番も混ぜこぜに?
 「いや、撮影自体は、時間の軸に沿って進めるべきだと思っているよ。できる限りはね(笑)。その方が登場人物のことを理解する助けになるはずだし」
---S・ゲンズブールに聞いたところでは、彼女が演じるメアリーの妊娠のシーンも撮っていたとか。結局それは使わなかったわけですが、クリスティーナの妊娠も含め、このふたつの妊娠は「命がつながっていく」ことを意識したものですか?
 「その思いは確かにあったかもしれないな。僕はこの作品を、ショーンのモノローグと、各登場人物が元のさやに戻って自分自身を再度受け入れていく様子を描いたシーンでしめくくったわけだが、そのためにも最初、メアリーの受精シーンを撮ったんだよ。ただ、問題はメアリーという人物が観客の前から立ち去る際のシーンとしては、それじゃ強すぎる(笑)。観客が“なんてイヤな女なんだ”とジャッジしかねないからね。で、そのシーンは外したんだよ。逆にクリスティーナの妊娠はポールの子かもしれないし亡くなった夫の子かもしれない。いや、ふたりの男の子供と考えてもいいし(笑)。こうなると、中南米文学特有のマジック・リアリズムの領域に入ってしまうけどね」(続く)

ヤマ(管理人)
 >---どのようにこの脚本を構成していったのでしょう。
 >---撮影の順番も混ぜこぜに?
 これは、どっちも実に真っ当に答えている感じですね。
 >---このふたつの妊娠は「命がつながっていく」ことを意識したものですか?
 これは、やはり人工授精と自然受胎のほうでしたね。んで、読んでみると、作り手としてポールの子供とは言いたくないっていう思惑が働いているように感じました(苦笑)。作劇的にはきっとそうだったろうと思うんですが、作り手としては、そこんとこを以って、例えば、僕が日誌の冒頭に「妻の願いであった人工授精で子供を残すことの代わりに、…クリスティーナに小さな命を図らずも授けて逝った。…ジャックの言う“全ては神の思し召し”ということからは、ポールが幾ばくか命を長らえた役割は、正にそういうことだった…」と綴っているような図式的な構成を受け取られたくないって思惑が働いているような気がします。
 そういう感じの目を向けてほしくないって思いは真摯なものとして、きっとあったんでしょうね。そして、図式化は作り手としては意図しておらず、受け手の解釈としたいんでしょうね。でも、ほんとは、図式化自体が悪いわけじゃないんですよね(重要)。内実が伴っていれば、かっちりとした構成ってことにもなるわけですし(笑)。
 概ね図式的という言葉が批判的に使われるのは、図式的な形式に負っているだけで内実が伴っていないってことを言うためですからね。
 大体において(日本語でもそうなんですが)「逆に」で始まる言葉には、レトリック的な潤色効果を期待している発言が多いようには思います。(もちろん、そうでない「逆に」もたくさんあるんですけど)で、監督としては、ポールの子供と自ら規定してしまうことで、図式的といった受け取られ方をしまうことを避けたい思いがあったんではないでしょうか。痛いとこを突っ込んだインタビューだったのかもしれません(笑)。
 そんなふうに思いました。ローズさん、ありがとう。

(めだかさん)
 ローズさん、パンフのインタビューのアップ、ありがとうございました。伝言ゲームみたいになってしまってどうしよう〜とオロオロしてたのです。助かりました(笑)。

(タンミノワさん)
 ローズさま、怒涛のインタビュー掲載、お疲れ様でございます(笑)。

ヤマ(管理人)
 いや、ほんま。けど、おかげでイメージしやすくなりました(笑)。

(タンミノワさん)
 このカントクのコメントとあの映画から受ける印象にはかなりの段差があるなあ・・と感じた私です。あの映画には、ローズさまが「この人はじつにあっけらかんと“命”を描いているんだな」と思われたというような「生命」に関するライトな感覚はあまり見当たらないですねえ・・・。

ヤマ(管理人)
 多分に音楽と画面のタッチのせいだろうという気もしますから、作り手の狙いとしてライト感覚はなかったと思います。意図してライトに迫っているわけではないのに、結果として命の物語が、軽重のどちらに比重を置いているかはともかくライトにしか伝わらなかったとすれば、音楽や映像から窺える演出の狙いからは作品的に失敗ということになるような気がします。僕自身は、命の重みの物語というとこでは、重いも軽いもなく「ピンと来なかった」わけで、喪失を描いた物語と受け取ってますから、作品的に失敗作だとも思ってないんですけど、随所に粗があるよな〜というのは、感じていますね(笑)。

(タンミノワさん)
 「中南米映画として撮った方が違和感がなかったような気が」って、私もです〜。生命が単なる生理現象である、みたいな解釈で描かれた方がラクだし、乗れた気が。

(ローズさん)
 そうなんです。そういう意味ではパンフを読んでちょっと吹っ切れました。

(タンミノワさん)
 『ガープの世界』みたいな方がよかったなあ。

ヤマ(管理人)
 あれは、人工授精どころか強チンでしたが(笑)。でも、確かにプロセスとしてのセックスを抜きにした、まさに「受精」でしたね(笑)。

(タンミノワさん)
 私、皆さんの「演技合戦が・」とかいうコメントを読んでつくづく思ったんですけど、私って「役者の演技を愛でる」という視線とか趣味があまりないのかもしれません。役者の演技なんて所詮ストーリーテリングの一部でしかない、と思ってるのかも(ひどい)。

ヤマ(管理人)
 お〜、これは潔い!(笑)
 テーマ主義宣言っていうのは昨今、非常に勇気の要ることですからね。

(タンミノワさん)
 各シーンの演技は素晴らしいモノがあるんですが、やはり芸達者な役者をそろえれば、いい映画になるというものでもないんだなあ・・と思う映画でございました。

ヤマ(管理人)
 そうですねー。一番大事なのは脚本だと昔から言われてますよね〜。

(タンミノワさん)
 ですねえ・・・・・この映画を観終わった後、何だか面白みのない苦労話を延々と聞かされた後の徒労感に似た疲労を感じました(笑)。

ヤマ(管理人)
 職場でよく体験されているみたいですね、これ。非日常的な何かを得るはずの映画というものと接して、この日常の澱のようなものを残されちゃぁかないませんよね、そりゃ(笑)。

(タンミノワさん)
 なんか演技が素晴らしくても、お話がダメだったらあまりそこに価値を見出せないんですよね。

ヤマ(管理人)
 昔から、一に脚本と言われる所以ですよ。

(タンミノワさん)
 さて、私がこの映画をカントクになって作り変えろ、と言われたらどうするかなあ、と思ったんですけど、「その1:コメディにする」

ヤマ(管理人)
 そりゃもう、別もんですね(苦笑)。

(タンミノワさん)
 臓器移植を扱っていながらもコメディ、って不謹慎の極みで、書いて恐ろしくなりますが、この映画に決定的に欠けているもの、それはユーモアセンスではないかと。

ヤマ(管理人)
 確かに欠けてますが、作り手が意図してないからでしょうよ。

(タンミノワさん)
 まあコメディにはならなくっても、『殺人の追憶』のように、映画のテイストとして、観る側の頬がゆるむテイストを持たせるのは必要かと思うんですがねえ・・

ヤマ(管理人)
 あぁ、これがあっての御発言だったんですね(納得)。『殺人の追憶』は確かに稀有な味が新鮮な作品でしたよね。


------『六の宮の姫君』と何が通じ、どう違うか。------

(めだかさん)
 私はこの映画を見て芥川龍之介の『六の宮の姫君』をふと思い出したりしておりました。

(TAOさん)
 めだかさん、おひさしぶりです。思わず膝を打ちました。「六の宮の姫君」に。
 ただただ受け身に生きるしかない姫君の寄るべなさは、たぶんに日本的なものかとばかり思ってましたが、『21グラム』の二人の女性にも通じるものがありますねえ。いや、ショーンの妻だって、寄るべない身だし、男たちもそうだわ。"21グラム"は、「生のはかなさ」と受け取ればいいのかもねえ。

ヤマ(管理人)
 そうですね。ここんとこは、まさにそんな感じでしたね。

(TAOさん)
 「生の実感」ととらえるのも納得です。あるいは、デル・トロの役柄が示唆するように、神に翻弄される哀れな人間存在がかろうじて持ち得る自由の重さとか。

ヤマ(管理人)
 おお、これは儚く弱く頼りなくて、まさにいいかも。なるほどね。
 でも、『六の宮の姫君』なら「宿命のせんなさに脅され…『なりゆきに任せる外はない。』姫君」の生き方に対し、内記の上人の口を借りて「あれは極楽も地獄も知らぬ、腑甲斐ない女の魂でござる」との見解を示している分、マジック・リアリズムなんて言っているよりゃ遥かに潔い感じですよね〜。極楽地獄を知ることの是非はともかく(笑)。

(めだかさん)
 「マジック・リアリズム」については前述のとおりです。むしろ孔子の「いまだ生を知らず。いずくんぞ死を知らん」でしょうか。

ヤマ(管理人)
 それは、監督の心境としてってことですか?

(めだかさん)
 私がポールに持った感想です(笑)。「生」と「死」の順番が逆みたいですけれど。

ヤマ(管理人)
 でも、知らずとも思うってことは誰にもあるのが当然で、作り手のその思いさえ提示されてればよかったんですけどね。僕にしても、めだかさんがお求めの“希望”までは、要求しないんですが(笑)。
 ところで、めだかさんのサイトアップ済みの映画感想日記を拝読する限り、書き込み件名の「唯一の肯定派」ってほどのものでもないように察せられるのですが、

(めだかさん)
 いつもあんなものだと思いますけど(天邪鬼^^;)感想と肯定度は別物ということで(笑)。

ヤマ(管理人)
 あ、この感覚、僕にもかなり馴染みのあるものですよ〜(笑)。
 まぁ、ここではすっかりケチョンですから、ちょっと擁護したくなったんでしょう?(笑)

(めだかさん)
 いえいえ。完全肯定ではありませんが、かなり本気です(笑)。

ヤマ(管理人)
 ま、僕も「食い足りない」であって、全否定ではないんですが、ただ「男性視線の映画」という視点を後から得て、これが非常に痛い映画である面に気づいたのは収穫だと思ってます。


---------真性肯定派の登場------

(Tiさん)
 ヤマさん、みなさん、どうもご無沙汰しております。すっかり休眠中だったのですが、半年前に『21グラム』を絶賛してた者の責任として、唯一の真性肯定派ということで(笑)、巣穴から這い出してきました(笑)。

ヤマ(管理人)
 ようこそ、Tiさん。かなりハードな留学生活を送っているようなのに、どうも恐れ入ります(笑)。

(Tiさん)
 いえいえ、日々を満喫しておりますので、心配ご無用です(笑)。

ヤマ(管理人)
 実は密かに期待もしてたんですけどね(笑)。

(Tiさん)
 えーっと、僕はみなさんとはまるっきり違う受け止め方をしていて、ラストシーンでは圧倒的にポジティブなメッセージを感じたんですよね。

ヤマ(管理人)
 ご自身のサイトに「人は、癒しようのない苦しみに対して何事かなし得るのだと、虚無と絶望から抜け出し、歩みを再開するだけの価値が人生にはあるのだと、とのメッセージを受け取られたようにお書きですよね。

(ローズさん)
 できれば、私もTiさんのように感じたかったのですが、ラストシーンのクリスティーナの妊娠はあまりにも唐突で衝撃でした。

ヤマ(管理人)
 僕もここでヘナって来てしまいました(笑)。
 Tiさんが感じたような「意志に基づく生への選択」を観客に感受させるうえで、クリスティーナの受胎がどうしても必要なエピソードだったようには思えないですよね。彼女に受胎させなくても、それは描けたように思うし、彼女の受胎は、むしろ受け手に図式的イメージを促しやすくて逆効果だったように思いますね。

(Tiさん)
 はい、やっぱりこの点での必然性は弱いですね…。僕の方からすると、「安直な救いで終わらせるな」じゃなくて「受胎まで持ち出して彼女を追い詰める必要が、果たしてあったのか?」っていう正反対の疑問になるんですけど(笑)。

(ローズさん)
 Tiさんも、やはり、そこを疑問に思われたのですね。最後であのように受胎させなくても、「ポールの死」で彼女は復讐の虚しさに気づき、そこから解放される、たとえ彼女がすべてを喪失しても、その後の人生がどんなものであろうと、という結末には辿り着けますよね。
 “残酷な受胎”は何の意味があったのか・・・妊娠恐怖症の私には(笑)謎です。

ヤマ(管理人)
 監督は「つまり意外性が強い方がやっぱり面白いんだからさ」ってことですから、やはりその線だったのではないかと思いますが、僕には意外性どころかむしろ図式化を促し、ローズさんには憤慨を与え、少なくとも我々に対しては仇になってしまいましたね(笑)。
 それに、メアリーの受胎が、シーンとしては撮りつつ編集では割愛されてるとのことなんですが、映画を観た僕は、割愛されたなかで彼女は受胎してないと受け取ってますから、Tiさんの線で観ても、人工授精に訴えてまで望んでも得られないメアリーの受胎と家族の喪失の上に追い討ちをかける望まぬ妊娠という対比の図式構造がやっぱり前に出ちゃう気がするので、クリスティーナの妊娠はないほうがよかったんじゃないか、あるいは、妊娠で追い討ちをかけるのであれば、メアリーの人工授精シーンは割愛すべきではなかったのではないかという気がしますね。

(めだかさん)
 クリスティーナの妊娠については、理由のミステリーを私は楽しんでいるので(笑)許せるのですが、メアリーの人工授精シーンの割愛をすべきでなかったというのは、実は私もインタビュー内容を読んだときに思いました。

ヤマ(管理人)
 確かにここでも散々「クリスティーナの妊娠」で楽しんで来といて、結局そこがダメやんってことで作品を切って棄てたら、ちょっとヒドイのかも(笑)。だから、折々に、拒否的な立場だった方々の皆さんほど、この作品への愛の目覚めを口にしておいでましたよね、そう言えば(笑)。
 また、「人工授精シーンの割愛」については、僕にとって最も艶消しだった部分は“図式的”ってとこでしたから、それを構成しにくくなっていれば、あるいは、形ばかりが前に出てしまわない内実が物語に宿っていたら、どっちであってもいいんですけれ、とりあえずイニャリトゥ作品なら人工授精シーンを割愛しないことで、図式化度を相対的に薄めておくのがよかったんじゃないかなってとこですね。

(ローズさん)
 クリスティーナの妊娠については、たとえ彼女がポールと深い関係になってしまっても、夫と子供に執着してポールに復讐をさせてしまう泥沼の苦しみなら、それは私は分かる気がしたのですが、そういう復讐を選んだ女なら、尚のことポールの子を宿すかなと・・・。

ヤマ(管理人)
 まぁ、望んで得た命でもなかったようではありましたが。

(ローズさん)
 ふたりの子供を生み育てた母親のクリスティーナだからこそ、あの状況で妊娠を望まないし、結婚生活で麻薬を断ち切れていた人が、麻薬を服用しつつ妊娠をするということもないと思いました。

ヤマ(管理人)
 妊娠自体については、経産婦といえども女性の皆人がそう自覚的でもあるまいと思いますが、作劇的には却って仇にしかなってないような気がしますよね。

(Tiさん)
 ローズさんは、彼女が妊娠を望んで避妊しなかったという解釈をなさっていると思うのですが(違ってたらごめんなさい)、

(ローズさん)
 ちがうちがう、まったく、その逆なんです。子どもを生んで育てていた彼女が妊娠に“幻想”を抱くわけがないから、あんな悲惨な状況でヘマをしてポールの子を妊娠なんかしないと思うのね。(いまどき10代の若者たちだってしっかり避妊してますからねえ。)
 ところが、妊娠してるし・・・復讐は依頼してるし・・・私の頭はクラッシュ状態!?!?

(Tiさん)
 僕としては、避妊についても中絶についても麻薬についても、無視していい問題ではないという意識はどこかにあったにしても、そこに気持ちを振り向けられるような精神状態ではなかったと思ってます。

(TAOさん)
 たぶん事故の後、ピルなんか飲む余裕はなかったんじゃないでしょうかね、彼女。

ヤマ(管理人)
 精神状態の如何によらず、注意の払い方には個人差が大きいですけどね。

(Tiさん)
 ともあれ、そんな風に先のことなど何も考えられない状態の時に身ごもってしまったことは、交通事故に続いて、限りなく酷い仕打ちだと思いました。

ヤマ(管理人)
 確かにねー。

(ローズさん)
 物語の中で彼女が復讐を選んだ場合、あの妊娠は何の意味があったのかなあ?

ヤマ(管理人)
 そうなんですよ、まさしくここんとこです。

(ローズさん)
 復讐をさせたポールが、必死の思いであのような死を選んだことをクリスティーナが茫然と受け止めるという結末であったとしたら、私はラストシーンを前向きに受け入れることができたと思います。

ヤマ(管理人)
 同感ですねぇ。

(ローズさん)
 今までの私の投稿の中に茶化した言い回しがあったので、あらためて不可解な妊娠について書き込みました。どうも、私の中には妊娠恐怖症が宿っているみたいだわ(笑)。

ヤマ(管理人)
 僕は、茶化した言い回しという印象をあまり抱いてないんですが、それはともかく、妊娠ってホントに一大事なんですよね。でも、僕は、この作品においてクリスティーナの受胎にさほど注意を払ってなかったので、ローズさんに投げかけてもらったおかげで、この映画における彼女の妊娠ということが提示するものについてきちんと考えてみる機会が得られ、とても有意義でしたよ。


-----真性肯定派は最後に生を肯定した意志を認める---

(Tiさん)
 この映画は最終的には、心臓移植の失敗で死に行く男、復讐だけが生きるよすがになった女、死を請い願う男…それぞれに人生を投げてた三人が、最後に生を肯定した話じゃないかなって。

(ローズさん)
 そうそう、そういう風に折り合いをつけるはずだったのに、でも、私はクリスティーナの妊娠が妨害してダメでした(涙)。

ヤマ(管理人)
 Tiさん、ポールの命そしてマイケルの命を軸にした話ではない!ということなんですね、おっしゃりたいのは。僕が日誌の冒頭に綴っているような図式的な話ではないって(笑)。いいですね〜。僕もそういう図式で観ちゃうとつまんないんで、というかピンと来なかったんで、三者三様の喪失物語と観たんですよ。

(めだかさん)
 えっと〜、真性肯定派のTiさん(お久しぶりです(^^))が入ってくださったのでしたら、遠慮無くいけるな、とまた顔を出してしまいました(すみませーん)

ヤマ(管理人)
 いえいえ、どうぞどうぞ。

(Tiさん)
 めだかさん、お久しぶりです。火だるまになるのを覚悟でやってきました(笑)。

(めだかさん)
 命の図式で観ちゃうとつまんないというヤマ様の御意見には、同感なんです。私もあの図式はピンときませんでした。映画予告とチラシか何かに載っていた人間関係図で、やたらと3人の構図が強調されていたのですが、観てみたらそれが作品テーマに重要にはさっぱり思えない。予告なんて知らなければ良かったと思いました。

ヤマ(管理人)
 予告がミスリードしてたって面は、間違いなくありますよね。でも、僕は3人の構図については違和感がないんですよ。三者三様の喪失の物語という線で落ち着いてましたから(笑)。代替の構図(監督の意図ではないとのことですが)が、気に入らなかったんです。

(めだかさん)
 で、監督にとってはクリスティーナの子の父親が誰でも良かった理由というのは、私には見えなかったのですけれど(女性の目からはどうしてもフィルターがかかってしまう気がします)、Tiさんのご意見を伺って少しヒントを頂いたような気がします。そんなに察しが良くないので、あくまで気だけですけれど^^;

ヤマ(管理人)
 いやいや、そういう「気」への気づきが思索を誘い、楽しみへの糸口となるとしたもんです。

(めだかさん)
 ただ、誰の子であっても、映画ラストの産むことを選んでいる結末は納得します。

ヤマ(管理人)
 受胎ということを受けて、それに引っ張られるようにして選んだのか、生に向けての自覚的な意志によって「選択」したのか、作り手は明示せずに受け手に丸投げしてたように思うのですが、積極的な意志を読み取ることも可能だとは思います。

(めだかさん)
 メアリーも一度目は中絶したけれども、同じ別居という状況でも二度目はしないでしょう(別居時点でまだ妊娠してないですけど)。

ヤマ(管理人)
 自然受胎では妊娠自体がもう難しい身体になっているようですが、二度目が訪れたら、繰り返したりはしそうにないですよね。

(めだかさん)
 私としてはポールが残したものがあるとしたら、重視したいのは精子ではなくて、意志の変化の方です。(あ、両方残してますね・笑)

ヤマ(管理人)
 僕は「この作品は三者三様の喪失の物語だったように思う」という観方をしたんですが、その物語のなかに神の無慈悲を描いていると受け取ることに留まるより、意志的な選び直しをもたらす意識の変化を残したと見るほうが、受け手としては、お得な観方ですよね。

(めだかさん)
 そうですね。『トーク・トゥー・ハー』に続いてお得なことをしたと思ってます(笑)。ただし、こちらでいろいろご意見をうかがって考えを新たにした部分を含めてのことですけれど(笑)。

ヤマ(管理人)
 そりゃあ、ますますよかったですねぇと言いたくなりますね、管理人としては(光栄)。
 ところで Tiさんは、ここんとこが三者三様の「最後に生を肯定した話」というわけでしたよね。でも、ご自身のサイトに「僕の記憶の限りでは、希望を滲ませる台詞や表情は、この映画にはただの一度も登場しなかったと思います。」とお書きのように、直接的には些かも表現されてませんでした。(台詞と併せて表情にも言及なさってるところが目を引きます。)
 なのに、「弱く平凡な人間たちが、苦しんで苦しんで苦しんだ末に辿り着いたそれぞれの選択が、ただ静かに提示されるだけ…。でも、だからこそ、僕の心には、それが何よりも熱く深く響き、彼らの人生は美しいと心の底から思えた」というのは、どうしてなんだろうという大いなる関心があったんですよ(笑)。


-----ポールの自殺は何を示すのか---

(Tiさん)
 まず、ポールがマイケルの心臓を撃ったのは、「他ならぬマイケルがもうやめろと言っている」と表現するためだと思いました。

ヤマ(管理人)
 これには意表を突かれましたね〜。
 クリスティーナに復讐を望んでいないのは、他ならぬマイケルだったということですか(驚)。でも、臓器移植に関しては、ドナー側の嗜好や記憶が臓器とともに移植されたと考えるほかないような事例があるそうですね。マイケルの心臓がマイケルの意思をポールに伝えたと観ましたか、なるほど。とすれば、ポールの身体を通じてクリスティーナと交わったときのマイケルの心臓の鼓動というのが重要な働きをしていそうですね。

(TAOさん)
 「21グラム」友の会のみなさん、こんにちは(笑)。

ヤマ(管理人)
 わはは。確かに友の会と化してきましたね。でも、さまざまな視点からの意見交換ができるのは、やはりとっても面白く、刺激的ですよね。

(ローズさん)
 ほんとですね〜。みんな見事に違う色を持っていますものね〜。Tiさんが“巣穴”から出てきてくれて「待ってました!」でしたよね。

ヤマ(管理人)
 そうですねー。密かに期待してたんですけどね。なんか天の岩戸の前で騒いで引きずり出したみたいな話だな(笑)。

(TAOさん)
 それにしても、Tiさんのこの解釈はいいですねー。

ヤマ(管理人)
 思いっきり意表を突かれましたよ(笑)。でも、そこから触発された「臓器移植にまつわるミステリアスな連鎖のイメージ」というのは、我ながらかなり気に入ってます(笑)。「ポールの身体を通じてクリスティーナと交わったときのマイケルの心臓の鼓動が果たした働き」っていうところが僕好みなんですよね、とっても(笑)。

(Tiさん)
 ありがとうございまーす(笑)。
 ポールとクリスティーナをめぐり合わせた原因であり、彼女の悲劇の象徴でもあるわけですから、僕はこのシーンの「心臓」の存在を重視したいんですよね。

ヤマ(管理人)
 うんうん。

(Tiさん)
 でも、ヤマさんに気に入っていただけた「マジック・リアリズム路線」(笑)よりは、

ヤマ(管理人)
 僕の連想したミステリアス連鎖に、イニャリトゥ監督の言葉を乗せないでくださいよ〜(苦笑)。

(Tiさん)
 ポンコツの身体に残された「マイケルの心臓」という最後のカードを切って、ポールが自分の生を完結させた、という風に僕は受け取りたいです。

ヤマ(管理人)
 ええ、これは僕も同感ですよ。
 ただポールの意思をここに導いたものが、Tiさんのおっしゃる幻想的に感じ取ったマイケルの意思であったとするより、臓器移植によるミステリアスな連鎖と受け取るほうが僕好みだなってことです。

(Tiさん)
 同情にも愛情にも妊娠にもビクともしなかったクリスティーナの絶望を唯一揺さぶることができたのが、未来へと向かう彼の意思だったと思ったので。

ヤマ(管理人)
 マイケルの心臓に導かれたポールの意思なんですよね(にこ)。

(TAOさん)
 私も元々はヤマさんと同じく、酷薄な神への異議申し立てだろうと思っていたのですが、ポールによるマイケルへの鎮魂の儀式とするのもいいかなと思えてきました。

ヤマ(管理人)
 Tiさんに触発してもらったおかげですよね(喜々)。

(Tiさん)
 もちろんポールもクリスティーナも死んだマイケルの意志なんて幻想だと判っているでしょうが、その幻想にすがってでも…というか。

ヤマ(管理人)
 僕的には、前述したように、幻想というよりも、Tiさんの解釈から得た視点で連想した臓器移植にまつわるミステリアスな連鎖をイメージするほうがより興味深いですね。ですから、僕としては、心臓移植を受けたポールにそれ以前にはなかった変化が現れ、不思議がった後に、マイケルの痕跡かとの思いを抱くシーンが加えられてて、欲しかったですね。
 例えば、煙草を吸わなかったポールが煙草を吸うようになったことに自分で戸惑いつつ、クリスティーナと親しくなって、その煙草の吸い方がマイケルと同じであることを知らされるってなエピソードが施されていたら、とか思ってしまいました(笑)。

(Tiさん)
 二人分の命をかけて彼女に立ち止まりの契機を与えるのが、ポールにとって「マイケルから譲り受けた21グラム」でできる最後の行動だったと。

ヤマ(管理人)
 なるほどねー。


-----クリスティーナの受胎は、救いではなく、打ちのめし---

(Tiさん)
 僕は、妊娠がクリスティーナの救いになったとは全く思わなかったんですよね。

(ローズさん)
 あっ、そうだったんですね。Tiさんの掲示板では、そこまで踏み込んでいませんでしたよね。Tiさんがどう感じたかとても知りたかったことでした。

(Tiさん)
 むしろ、麻薬でボロボロになった自分に赤ちゃんが宿ったと聞かされて、その運命の皮肉に、よりいっそう打ちのめされたように見えました。

ヤマ(管理人)
 お、これもここで交わされた解釈への反対解釈ですね。
 クリスティーナを麻薬禍から再び立ち直らせる契機になるかもしれない思い掛けないことが都合よくもたらされたように受け取るのとは、大きな違いがありますね。あのときのクリスティーナの驚きの表情をどう解するか、ですが。映画では、驚きの後の彼女を描くことを排してたように思います。ですから、いずれもあり得ることですが、僕には思いも及びませんでした。

(Tiさん)
 僕は、妊娠が新たな拠り所とはなり得ない絶望の中に彼女はいる、という描写があったから、なおさら、彼女がラストで生を選択したことの意味が大きく感じられたんですよね。

ヤマ(管理人)
 描写としてありましたか。失念してますよ(とほ)。僕自身は、あまり彼女の受胎について注意を払わずに早々にここんとこで「代替の図式」を感じ取って、うひゃ〜っとなっちゃいましたんで(苦笑)。

(めだかさん)
 後の4ヶ月姿に惑わされましたが、そういえば私も妊娠宣告された時や病院でのクリスティーナには驚愕と呆然はあってもポジティブな感情は無かったと見ました。

ヤマ(管理人)
 そうですよね。そして同時に、打ちひしがれたようにも描いてなかったと僕は思ったんですが、そうでもなかったようで、このあたり今ちょっともどかしいとこなんです(苦笑)。

(Tiさん)
 ↓えー、これ、妊娠を聞かされた直後の表情です。
http://wells.web.infoseek.co.jp/graphics/naomi.jpg

(ローズさん)
 ひゃー、私にとっても、ぜんぶひっちゃかめっちゃかになった瞬間だわー。

ヤマ(管理人)
 おー、これはありがたい。DVDから取り込んでくださったんですか?
 僕は、前にも書いたように彼女の受胎に注意を払ってなかったんで、シーンを思い出せずにいたんですが、これなら打ちひしがれてますね。

(Tiさん)
 というかですね、妊娠が判った後も彼女は復讐に取り付かれたままなのを見て、「ああ、やっぱり妊娠をきっかけに変わることなんてできなかったんだな…」と思ったんですよ。そして、僕は(この時点では)彼女は麻薬もやめられなかったと考えてます。

ヤマ(管理人)
 思い掛けない事態に出くわしたときって、みんなそうですよね。そのとき即座に何か新たな意思決定をするなんてことはないものです。

(Tiさん)
 打ちのめされたということではジャックについても同じで、(シーンとしては描かれてませんが)彼のポール殺しの自供をクリスティーナが否定して矛を収めたことで、彼が楽になったとは思えません。

ヤマ(管理人)
 これは僕も彼女が否定したと解しています。でも、それで彼が楽になった、ならなかったは考えませんでした。

(Tiさん)
 むしろ、罪悪感に押しつぶされ死を願う態度すら否定されたわけで、余計に辛いでしょう…。

ヤマ(管理人)
 それは、そうですよね。僕も死を願う態度すら否定されたっていうのが際立っていたように思い、楽になるならないは、想像の範疇外でした。

(Tiさん)
 そして、彼は死よりずっと厳しい家族との生活に帰っていったわけです。

ヤマ(管理人)
 神はジャックに対して酷薄なんですよね。

(Tiさん)
 なので、彼らに与えられたのは他力本願的な救いではなく、ささやかなきっかけだけであり、三者三様に自分の意志で積極的に人生を選び取ったんだと思いました。逃げや妥協ではなくて。

ヤマ(管理人)
 運命に翻弄される部分以上に、確たる意志に基づく選択のほうを読み取ったわけですね。なるほど、そういう人生態度こそが希望だと。

(Tiさん)
 クリスティーナが麻薬を断って出産を選んだのは、僕にとっては、ジャックが家族のもとに帰ったのと同じく「無慈悲な神へのリターンマッチ」なんですよ。

ヤマ(管理人)
 希望ではなく、やはり復讐ではあったわけですか。相手がジャックではなく、神に替わるという形での。ここにもうひとつの代替が潜んでいると観るわけですね。なるほど。

(Tiさん)
 あの後二人がどうなるかはもはや問題ではなく、もう一度立ち上がろうとしたことに価値があって、

ヤマ(管理人)
 そうですね〜。

(Tiさん)
 そこへ至るチャンスを作ったことで、ポールの命も充分にペイされたんだなあと思いました。

ヤマ(管理人)
 なるほどなー。単に喪失の物語ではない所以ってことですよね。

(Tiさん)
 …って、なんだか『ワイルドバンチ』や『ポセイドン・アドベンチャー』について語ってるような気分になってきちゃいましたが(笑)。

ヤマ(管理人)
 台詞や表情で示されなくても、その意志の持ちようにこそ希望が託されているということでしたか。そういうニュアンスでの「選択」を感じ取れば、確かに「僕の心にはそれが何よりも熱く深く響き、彼らの人生は美しいと心の底から思えたのでした」というのも納得できました。

(Tiさん)
 この編集については…僕も積極的に支持するわけではないんですけど(笑)、

ヤマ(管理人)
 さすがの自称真性擁護派のTiさんでも、ここはお手上げですか(笑)。

(Tiさん)
 上記のように「誰がポールを撃って、それが何を意味するのか」という一点に惹き込まれて観てたので、全然気になりませんでした。

ヤマ(管理人)
 その一点に着目したというところは僕とも同じですね(笑)。ただ僕の場合、「ので、全然気にならない」とはなりませんでしたが(苦笑)。むしろ、気に障るので、そこから目を背けてその一点に着目したという感じだな(笑)。

(Tiさん)
 その代わり、メアリーについてはほとんど印象が残ってない状態になっちゃったんですけどね(笑)。

ヤマ(管理人)
 これは僕もそうなんですよね。どうも人物像としてのイメージが結べないでおりました。だから、三者三様って構図への絞込みとなったんですよ。

(Tiさん)
 でも、もし素直な編集だったら、僕も胸焼け起こしてたかもしれません(笑)。

ヤマ(管理人)
 胸が焼けても、僕はそっちのほうが観たかったんですけどね(苦笑)。

(Tiさん)
 それと…僕は映画は監督だけのものだと思いたくないですし、まして「スクリーンの外で語った言葉」というものをあまり重視したくないんですけど、それでもいいですか?…ローズさん、すみません。

ヤマ(管理人)
 これについては、僕もまさしく同感ですね。参考的興味はなくもありませんが、重視するには及ばないと思ってます。やはり見え映っているものが全てですよ(笑)。

(ローズさん)
 そうですね、Tiさんのおっしゃるとおりだと思います。でも、私はラストの妊娠の意味が監督の言葉で分かったような気がしたんですよ。

ヤマ(管理人)
 僕は、ローズさんのお陰でインタビューの詳細を読ませてもらっても、未だにクリスティーナに妊娠させた意味について、納得が得られてません(苦笑)。


------またしても「趣味の映画」だったのだろうか(笑)-----

(TAOさん)
 あのー、私は「受胎まで持ち出して彼女を追い詰め」たのは、この監督の趣味だと思うんです、とことん追い詰めるのが(笑)。

ヤマ(管理人)
 わはは、来た来た!TAOさんの趣味説(笑)。でも、僕もわりと思ってるとこあるんですよね、人間って、本能よりゃむしろ趣味に従って生きている動物で、自ら作り上げた趣味の桎梏から自由になるのが、とても難しい生き物だって(笑)。

(めだかさん)
 TAOさんの趣味説にはまったくもって同感です(笑)。そういえば『アモーレス・ペロス』でもこれでもかとばかりに追い詰めてたような気がします(笑)。

(TAOさん)
 だって変でしょう? 主役の3人とその伴侶2人(マイケルを除く)、計5人とも、とことん追い詰められてるじゃないですか。

ヤマ(管理人)
 ま、神の無慈悲と翻弄される人間の哀れを描くんですから、悲劇のヒーロー・ヒロインを置くことなしに、あまねく人間はってとこがあったのかもしれませんけど。

(TAOさん)
 すっかり忘れてましたが、デル・トロの妻だって、刑務所から帰ってきた夫がいきなり宗教オタクになってるし、こんどは人身事故ですぐにまた刑務所に逆戻りするし、保釈で出てきたら、こんどは家を出る、なんて、小さな子供もいるのに、気の毒ですよ、やっぱり。

ヤマ(管理人)
 散々ですよね。ジャックは『ミスティック・リバー』のジミーのように踏み留まりませんでしたから、アナベスより遥かに彼女は哀れですよね。

(TAOさん)
 そうそう、つい先日、朝日の夕刊にデル・トロの簡単なインタビューが掲載されてましたが、撮影中もずっと追い詰められてる感じでイヤだったと言ってました(笑)。

ヤマ(管理人)
 こちらの版では、この発言は略されてたようですが、そーか、役者も追いつめられてたか(笑)。

(TAOさん)
 監督のコメントも出てたけど、かるーいのりでしたねえ。

ヤマ(管理人)
 えぇ、「キリスト教批判じゃないよ、ジャックの所属する宗派が稚拙だったんだ」って言ってますし、「物語を語るとき、真実は少しずつ明かされなければならない。だから、こんな実験をしてみた。」なんてこともね。映画を観た後、こうして各々の登場人物たちに深く分け入り語り合い、ほとんど友の会状態にある観客からすると、ケッて感じですよね(笑)。

(TAOさん)
 やっぱり、これ「趣味の」映画だと思うなあ(笑)。趣味の器、とか趣味の着物、とかいう意味の、趣味。

ヤマ(管理人)
 んで、「悪趣味よ、あなたって」とイニャリトゥ監督に感じてるんでしょ(笑)。

(TAOさん)
 そういう意味では、私には「ミスティック・リバー」と同じジャンルに見えますねえ。

ヤマ(管理人)
 おや、ジャンルってことですか?(笑) イーストウッドと同様、悪趣味っておっしゃるのかと思ったら、趣味の良し悪しはともかく、作り手の趣味に濃く彩られた映画というところでほとんどジャンル化できるくらい数多作られている作品と同じジャンルに属するって話ですね。同じジャンルには、タランティーノの『キル・ビル』なんかも入るぞって観てるでしょ(笑)。あれ、アクション映画とか悪党映画とか愛の映画とか、いろいろ言われてますが、あれっくらい明々白々な趣味の映画ってそうそうありませんよね。

(めだかさん)
 ところで、Tiさんにクリスティーナが妊娠を聞かされた直後の表情を改めて見せて頂いて、思い出しましたよ〜。

ヤマ(管理人)
 これ、ありがたかったですよね、とても。巧くやったな〜と若い人たちのコンピューター・リテラシーの高さに感心してます。ちょちょいのちょいなんですね〜(感心)。

(めだかさん)
 それで、できればTiさんのご意見を聞かせて頂きたいのですけれど。

ヤマ(管理人)
 「火だるまになるのを覚悟」ということなので(笑)、きっと答えてくださると思いますよ。

(めだかさん)
 これは病院の待合室らしきところに座っていた時のシーンですよね。この後にジャックがクリスティーナに謝るシーンがあったと思うのですが、ここでTiさんはクリスティーナが復讐を諦めていなかったとご覧になったのでしたら、ジャックとクリスティーナの対面をどうご覧になったかを教えて頂けたら、と思うのです。

ヤマ(管理人)
 僕も興味ありありだなぁ(笑)。

(Tiさん)
 あの〜、僕はとんでもない勘違いをしていたことが判りました。

ヤマ(管理人)
 僕もあれこれ話しているうちに混濁してきてて、元があんな編集だったんで、よく分からなくなってますが(苦笑)。

(Tiさん)
 じ、実は、あの妊娠告知のシーンって、ポールの自殺の前だと思ってたんです…。あの待合室にはジャックはいなかったですし、危篤状態で運び込まれたポールとあの静かな病院がどうもイメージとして繋がってなくて…アパートで張り込み中にポールの具合が悪くなって、クリスティーナが診察に連れて行ったのかな? とか勝手に思い込んでおりました(恥)。
 ううううう、あの編集にいちばん惑わされてのは、僕だったんですね…。

ヤマ(管理人)
 いや、みなさん似たり寄ったりでしょう。やっぱり困った編集だったということですよ(笑)。メアリの中絶がいつで誰の子だったかは、ここでは定説化してますが、それだって、映画のなかでは明らかにされてませんよね。

(Tiさん)
 妊娠発覚→ポールの自殺→出産を決意、という流れで納得してた僕のクリスティーナ観が、ガラガラと…。

ヤマ(管理人)
 そのクリスティーナ観だって、別にいいんじゃないですか?

(Tiさん)
 最後の最後にいきなり妊娠って、それはメチャメチャ唐突ですねえ(笑)。

ヤマ(管理人)
 ま、それはそうなんですが、僕としてもTiさん同様、この件にはさして重きを置かずに観てましたからねぇ。

(Tiさん)
 今までの僕の書き込み、意味不明な点が多々あったと思います。どうか、平にご容赦くださいませ…。めだかさんのご指摘がなかったら、ずっと勘違いしたままだったかもしれません。どうもありがとうございます。

ヤマ(管理人)
 あの映画に限っては、むしろ作り手が勘違いというか、自由闊達な想像や連想を促しているように思いますので、いわば勘違いってのはないんじゃないでしょうかね(笑)。


------メアリは、どういう女性だったのか----

(TAOさん)
 じつは私、目当ての3人ではなく、シャルロット嬢にいちばん感心しました。痛ましいキャラではありましたけど、相変わらず少女っぽい雰囲気や着こなしのセンスがよくて、デリケートで品のいい演技だなあと思って。彼女が出演しているのは知らなかったので、ちょっと得した気分になりました。

(ローズさん)
 シャルロット・ゲンズブールがお好きなんですね。私、彼女を『21g』で初めて知りましたが、嫌な女キャラなのに品のよさが滲みでていて、可憐でお洒落でキラリと光って印象に残りました。ショーン・ペンとまったく色合いが違うので、ギクシャクした夫婦関係が自然に映りました(笑)。

ヤマ(管理人)
 これ、笑えますね。絶妙のキャスティングだったっていうわけですね。

(TAOさん)
 ペン教授がいたいけな女子学生に手を出し、責任をとって結婚したけれど、という設定かしら?(笑)

ヤマ(管理人)
 おっと〜、これは深い読みですなぁ。とすれば、TAOさん的には彼女の嘗ての中絶というのは、どう御覧になります?(興味津々)

(ローズさん)
 ペン教授が責任をとって結婚したけれど、という設定、ウケます〜。

ヤマ(管理人)
 ですよねー(笑)。

(ローズさん)
 初めは女子学生がお熱になってプッシュプッシュで、現実の生活ではゲンメツしてしまうという逆パターンも?(笑)

ヤマ(管理人)
 いずれにしても、結婚なんて先の約束はされてない行き掛かりのようなもので、うまくやってけるかどうかにおいて、馴れ初めの持つウェイトって小さいというのが普通ですよね。むしろハイポジションからのスタートのほうがキツイとしたもんでしょう(苦笑)。

(TAOさん)
 見なかったことにしようとまで思っていた『21グラム』なのに、ローズさんじゃありませんが、だんだん愛がわいてきてしまいました(笑)。

ヤマ(管理人)
 僕もまさかこんなに盛り上がるとは思っていなかったので、いろいろ深く考えさせられながら、返信しているうちに近しい気分を抱くようになってきちゃいましたよ(笑)。

(TAOさん)
 さて、ヤマさん待望の中絶問題ですが、

ヤマ(管理人)
 すごい振りで始まるんですね、まぁ、そうなんだけど(笑)。

(TAOさん)
 まず、シャーロット演じるメアリは、世間体にとらわれがちで、性的にも幼い女性ではないかと思います。

ヤマ(管理人)
 うん、これはそう来るんじゃないかと思ってました(笑)。

(TAOさん)
 ローズさんのおっしゃるように、彼女の方が最初は積極的だったかも。でも、恋に恋するようなタイプで、じつはセックスは好きでなかった。たぶん。

ヤマ(管理人)
 たぶんってのが取ってつけたように感じられるほど、確信に満ちてますが(笑)。

(TAOさん)
 強引に決めつけてるようですが、ここんとこ大事なんですよ(笑)。人間と人間のふれあいを最重視する女性なら、人工授精にあれほど固執することはないと思うので。

ヤマ(管理人)
 この運びが流石のTAOさんですね(笑)。有無を言わせない。
 でも、結果としての出産への固執ですから、ふれあいのプロセスを求めての受胎ではないですよね。ただ他に手立てがない状況に置かれているっていう考慮材料はあるんですが、夫の意を汲む部分なしの希求ですから、「固執」に見えてくるんですよね。

(TAOさん)
 こういうタイプにかぎって、体裁や世間並みの身分にひどくこだわるので、子供は欲しいけど、シングルマザーという選択はありえません。だから、別居中に子供を産もうとは考えなかった。そのときはもうたぶん復縁がありえないと思ったんでしょう。

ヤマ(管理人)
 このへんは、もうTAOさんの独壇場ですな〜(感心)。なんかメアリーの告白を受けたような(笑)。

(TAOさん)
 もちろん、彼女のキャラだと別の男の子供の可能性っていうのも、ないでしょうね。

ヤマ(管理人)
 僕は可能性として留保してましたが、お説に従うこととします。
 で、そうなると気になるのは、彼女がなぜ夫に言わずに中絶したのかってことですね。「子供を持つ最後のチャンス」みたいな感覚を持つ女性が、何ゆえ夫に内緒で中絶したのか? TAOさん、どう想像します?

(TAOさん)
 メアリはプライドの高い人なので、自分を捨てた夫に子供ができたことを報告して、再び拒絶されることは耐えられなかったんじゃないでしょうか。

ヤマ(管理人)
 なるほど、なるほど。

(TAOさん)
 自閉してプライドを守るか、いっそストーカーになって男を追いつめる、そんなタイプの女性に思えます。

ヤマ(管理人)
 哀しい女性なんですね、何につけ(笑)。

(TAOさん)
 もしかすると、自分を捨てたことに対しての復讐の意味合いもあったのかもしれません。ギリシャ神話にありますよね。夫への復讐のために我が子を殺して夫に食べさせる話が。

ヤマ(管理人)
 そうでしたっけ。聞いたことがあるような、ないような(苦笑)。でも、いかにも神話的にはありそうな話ですね。

(TAOさん)
 この話を知ったときは、自分の子供でもあるのに何故そんなことができるのだろう、と驚いたものですが、母親というものは我が子を愛すると同時に子供を支配し、ときには呑み込んでしまう存在であることを実感するようになってからは、案外と普遍性のある寓話なのではないかと思うようになりました。

ヤマ(管理人)
 僕は、やはり女の側の性ではないからか、実感には及ばないのですが、母親の持つ分身感というか一体感というのは大いに感じるところであり、それが時として呑み込みにまで至ってしまうことが決して稀有で特異なことではないだろうなとの了解感は、持っていますね。

(TAOさん)
 メアリの無意識の支配欲もかなりなものだと思うんですよ。夫と復縁したのも、今度こそ自分が病気の夫を支配できるからで、子供も、授かるものとは思わず、意志で持とうとしてる。

ヤマ(管理人)
 なるほどね、確かにそういうところは描写からも窺えましたね。

(TAOさん)
 そういう女性なら、夫に相談することなく中絶したことも、それほど不思議じゃない気がします。

ヤマ(管理人)
 関係性の中での共感性を欠いているんですね。不幸で哀れな関係性ですねぇ。

(TAOさん)
 とはいえ、メアリが特別な女だとは思いません。女というものの普遍的な影の部分を投影した人物像であって、誰しもああなる可能性はあるんじゃないでしょうか。

ヤマ(管理人)
 うむむ、女性はやっぱり魔性だなぁ(しみじみ)。手放しに憧れの対象である一方で、やっぱ恐い存在ですね(笑)。

(TAOさん)
 メアリの場合も、たぶんに自己中気味のポールとの結婚生活で傷ついた「結果」のようにも思えますし。

ヤマ(管理人)
 ですよね。存在論で規定されるものではないですよ、人間は。関係性の生き物ですから、この要素を欠いてそうなることは考えにくいですよね。だから、つくづく相性って大事なんですよね〜ってえらく凡庸な感慨に帰結してますが(苦笑)。

(TAOさん)
 で、子供を産みたいということでは、夫との復縁がありえないと思っていたメアリーだけど、ポールが帰ってきて、しかももう出ていくことはない(死ぬかもしれないけど)というシチュエーションになったところで、彼女が子供を持つ最後のチャンスだと思ったのではないかな。ほら、セックス嫌いなので、新たに男をみつけて再婚するのもイヤなんですよ。

ヤマ(管理人)
 なるほど(笑)。

(TAOさん)
 ってほんとかな(笑)。すっかり茶化してしまいましたが、最初の中絶にしても(中絶したこと自体ではなく、ポールに相談できなかったことがですが)、人工授精への並外れた執念にしても、ずいぶんと哀しい女の選択だと思います。

ヤマ(管理人)
 ですねー。しかも映画の製作過程では人工授精を受けているようですが、公開作品では、むしろ受胎できずに終わっているような印象ですからね。代わりにクリスティーナが受胎しちゃったような印象を残しますよね。

(タンミノワさん)
 盛り上がってますね〜。21g。

ヤマ(管理人)
 ほんまに(笑)。この作品でここまで盛り上がるとは思いませんでしたよ。そうそう、盛り上がりということでは、タンミノワさんがFさんとこでアップされた“「胸がいっぱい」な日を待ちながら 負け犬映画館アサヒシネマの終焉”も好評で、コメント数がすごいじゃありませんか(喜)。

(タンミノワさん)
 ところでシャーロット演じるメアリのキャラ、不評ですね。確かにいい女とはいえないんですけど、私は割りと同情的だったりします(比較的ですけど)。

ヤマ(管理人)
 実は僕、彼女についてキャラ的にはろくに像が結べてなかったんですよね(苦笑)。映画では人物の掴み方がそこまで深くなかったような気がして(笑)。だから、好評も不評もなかったんですが、TAOさんの想像(半ば創造)イメージを伺ってようやくある程度、人間像が浮かぶようになってきたとこですもん(苦笑)。

(タンミノワさん)
 彼女の受胎は、特に人工授精に固執したようには見えなかったんですよ。シンプルに「卵管とかに障害」があって普通妊娠がしにくい? と医師から言われていたように・・

ヤマ(管理人)
 これはそのとおりでしたね。過去の中絶の因果みたいな描き方をしているとグロリアさんも御指摘でした。ただTAOさんのおっしゃる固執というのは、手段としての人工授精についての固執というのが第一義ではなく、それはセックス嫌いもあって人工授精のほうがいいと思っているであろうという、まぁ、刺身のツマというか盛りつけのようなもので、固執の第一義は、子供を持つということへの固執という意味だろうと思いますよ。

(タンミノワさん)
 でも確かにセックスは苦手そうでしたが(ってほんまか)。

ヤマ(管理人)
 これ、得意そうキャラって例えば、どういうのを以てイメージしたらいいのかな?(笑)

(タンミノワさん)
 最初は、去り行く夫の存在の証として子供を欲しがっているのかなと思ってましたが途中からそうでなくて、「夫はどうでもええから、とにかく子供」のパターンになってましたね。

ヤマ(管理人)
 そこんとこをTAOさんが固執と言ってるんだろうと思いますよ。

(めだかさん)
 TAOさんのメアリー論を興味深く拝聴してます(笑)。

ヤマ(管理人)
 ほとんどリメイク中って噂もありますが(笑)。でも、リメイクの際は間違いなく、進行中に留まらない「メアリ主役化計画」によるんでしょうね(笑)。

(めだかさん)
 確かにメアリ主役化計画ですね(笑)。でも、笑い事でなく、TAOさんのメアリ観にはいろいろ思うところを刺激されながら拝読しています。TAOさんが出産を積極的に忌避している立場だとしたら、ある意味私は逆の積極的に意志で選択した立場の人間ですから。TAOさんが御自分でそれを特殊とおっしゃるならば、私も多分逆のベクトルで特殊ですね。

(TAOさん)
 めだかさんは、私とは逆のベクトルなんですねー。私のメアリに関する書き込みで、お気を悪くされる箇所がなければいいのですが(汗)。

(めだかさん)
 それで改めてTAOさんに訊ねてみたいんですけど、命の重さか軽さかというところで、ヤマ様とも少しお話ししたことですが、どうしてメアリーはポールの子に拘るんでしょうね?

ヤマ(管理人)
 TAOさんの想像された「形へのこだわり」に掛けるプライドみたいな部分ってのは、動機的なベースとしては納得なんですけど、強引なまでの行動化には、何かもっと切実な契機がほしいとこですよね(笑)。>TAOさん、トッピングを〜(笑)

(TAOさん)
 ヤマさん、めだかさん、こんにちは。メアリ担当のTAOです(笑)。では、メアリ主役化計画進行中の私としては、そこのところにしぼってさらに肉付けしてみます(笑)。

(ローズさん)
 メアリーワールドにどっぷりはまって夢心地でご機嫌そうですね〜。メアリーに感情移入したTAOさんは、この作品を愛し続けることができて羨ましいですわ(笑)。

(TAOさん)
 まず彼女は、やっぱりポールを愛していたのだと思うんですよ。でも、哀しいかな、彼から必要としてはもらえなかった。

ヤマ(管理人)
 ふむふむ。強い当たりは、そのせいなんですね。

(TAOさん)
 復縁した後も、物理的には一緒にいるけど、夫の気持ちは離れたままなのがわかってしまう。

ヤマ(管理人)
 はいはい。

(TAOさん)
 だから、彼の子供を育てることで、彼の分身に今度こそ必要としてほしかったんではないかなあ。

ヤマ(管理人)
 ここが女性ならではのマジカルなとこですね。

(TAOさん)
 赤ちゃんならまちがいなくおかあさんを必要としますからね。

ヤマ(管理人)
 なるほどねー。

(TAOさん)
 それとせめて子供の母として彼の心をつなぎとめたいという、せつない女心。

ヤマ(管理人)
 ここでもまた哀しみが漂うわけですね。

(TAOさん)
 さらに付け加えると、私自身が早くから血の繋がった子供を持つことを積極的に忌避している特殊な人間なので、これは完全に想像でしかないのですが、メアリは夫に一度捨てられ、復縁してもしっくりいかないことで、女性としてのアイデンティティが危機にさらされていて、それを妊娠・出産によって証明したいという内なる欲求もあったのではないかと思えます。

ヤマ(管理人)
 そういう代替もありなんですかねぇ、女性には。

(TAOさん)
 年の頃からいっても30代半ば。女としてやるべきことを果たしていない自分が、なんとなく不安なのです。

ヤマ(管理人)
 このへんには、意志的に選択してはいても、とのTAOさんの内側での葛藤のようなものも投影されているのかなぁ。

(TAOさん)
 なにしろ重度の母性恐怖症(笑)ですから、そろそろタイムリミットが来ることにほっとする思いや、きちんと子育てをしている人たちへの多少の申しわけなさはあっても、選択に伴う葛藤を感じたことはないんですけどねえ。

ヤマ(管理人)
 そうでしたか。こりゃ、失礼、失礼(詫)。

(TAOさん)
 じつは、昔、とても仲の良かった友人がメアリと少し似ていたのです。

ヤマ(管理人)
 ほほぅ。

(TAOさん)
 当時の私には、人工授精で子供がほしいと真剣に言う彼女のことがとうてい理解できず、ちょっとしたトラブルをきっかけに疎遠になってしまいました。学生時代からの友人だっただけに、そのことが気になっていて、折に触れ、彼女のことを考えるのがくせになってます。

ヤマ(管理人)
 こういう存在ってありますよね。ずっともう会ってもいないどころか、消息も絶たれているのに、自分のなかでずっと居続けている存在っていうの。

(TAOさん)
 気をつけていると、その手の話はあちこちで耳にするので、すでに私の中でイメージが固まってきていたところに、メアリという象徴的な女性が現れたものだから、つい夢中に・・。

ヤマ(管理人)
 いやぁ、おかげで随分と楽しませていただきましたよ(礼)。

(TAOさん)
 それはともかく、メアリにすれば、女性としてのアイデンティティを証明したいといっても、今さらいちから男を探すなんて、途方に暮れる話だし。

ヤマ(管理人)
 子供を産む産まないっていう問題は、僕の想像を越えて、女性にとっては大きなことなんでしょうね。男より子供って感じですね、ここんとこは(苦笑)。

(TAOさん)
 にも関わらず別居中に子供を産まなかったのは、身分の保障がないままシングルマザーになる勇気がなかったこと、捨てられたことへのショック、憎しみ、etc. これは前にも書いたとおりです。
 それと、別居中に中絶したことは、彼女にとって深い傷になっていたと思うんです。その時はそうするほかないと思ったはずだし、思い出したくない事実なので、防衛規制が働いて、記憶を半ば消してしまっていたのでしょうけれど。

ヤマ(管理人)
 普通には受胎しにくい身体になっていることを知らされたとき、そんな感じもありましたが、消して消せる記憶なのか、忘れることなんてできないものなのか、個人差を超えた部分でどういう性質のものなのか関心あるものの、僕にはとても及ばない領域なんですよね〜。

(TAOさん)
 なんかもう念力でつくりまくってますが(笑)、こんなふうに考えると、メアリって他人事ではないというか、「負け犬」論争が起こる日本でもリアリティのある人物像ではないでしょうか。と無理矢理主役に押し上げる私でした(笑)。

ヤマ(管理人)
   いやぁ、堪能しました。ありがとうございます。


-----女性は、他にも登場したが、-----

(ローズさん)
 ところで、ナオミの妹役のクレア・デュヴァルも、少ない出番でいい味を出していました。私も「ER 緊急救命室」を観ています。クレアもゲスト出演していたみたいですが、ぜんぜん気がつきませんでした。

(TAOさん)
 ナオミの妹、地に足が着いた存在感が良かったですねえ。クレア・デュヴァルというのですか、覚えておこう。

(ローズさん)
 (ホアキンのように)クセのある顔立ちも含めていいですよね。

(TAOさん)
 ERにも出てたんですね。TVシリーズは、単発の映画とちがって、少しずつ蓄積されていく醍醐味がありますよね。緊急医療を通して、アメリカのディープな多層社会を垣間見る思いで、毎週見るたびにうなっています。

(ローズさん)
 今も放映中ですが、ネタ切れしないことも凄いですねえ。多彩なゲストたちもおいしい「ER」ですよね。

ヤマ(管理人)
 僕は「ER 緊急救命室」観てないなぁ。

(TAOさん)
 ただテーマに沿って考えると、シャルロットの役柄にしろ、デル・トロの妻にしろ、どうしてこの作品の女たちは、夫の苦しみをちっとも分かち合おうとしないのだろうかと憮然としちゃいますがねえ。

ヤマ(管理人)
 夫も妻もどっちともがって感じですが、そう言えば、映画世界の基調に「無慈悲」ってのを認めると、神であれ、人間であれ、今の世の全ての関係に慈悲はなく、それへのささやかな異議申し立てがポールの自死ってことなのかなとか、ふと思いましたよ(笑)。

(TAOさん)
 それもこれも『六の宮の姫君』だからと思えば、女の身の哀れさ、男たちの孤独、ひいては生の哀れに思い至りますが、この映画をそこまで親切に読み説くのは不本意な気もするなあ(笑)。

ヤマ(管理人)
 監督のインタビューへの回答ぶりからすれば、僕も同感だったりして(笑)。やはり、「内記の上人」を借りて自身のポジションを明らかにしてた芥川のようでなきゃいかんと思うのに、作中どころか、インタビューされてさえ誤魔化しているようじゃあきまへんわ。


------大討論を振り返って-----

(ローズさん)
 でも、私は随分きついことも言いましたが、この映画って男にとっても痛い映画ということをヤマさんとTAOさんのお話で気づいたことが大収穫なのでした。

ヤマ(管理人)
 これは嬉しいなぁ。ん?でも、その点では、僕はほとんど貢献できてないや(笑)。それでも、やっぱり嬉しいな。
 むしろローズさんからいただいた「男性視線の映画(命名:タンミノワさん)」という視点が、男の僕にとって、これが非常に痛い映画であることを教えてもくれたように思うんですけど、ね(礼)。

(ローズさん)
 貢献できてないだなんて、なにをおっしゃいますやら〜。
 で、私は、これからもばっちり女の目線で映画を観るつもりです(笑)

ヤマ(管理人)
 えぇえぇ、楽しみにしておりますよ(笑)。

(ローズさん)
 めだかさんと“ぶっちゃけ話”ができたことも、めちゃめちゃ気持ちよかったです。それに、めだかさんが女の気持ちをきめ細やかに丁寧に説いてくださったから、読んでいるうちに、心がほっこりしてきて解きほぐされてくるんですよね。「人と話すことってすばらしいことなんだなあ」ってつくづく感じ入りました。

(めだかさん)
 この監督の拒否宣言をなさっているのに、お付き合いくださいましてありがとうございました。私こそ同じところで似た感想を持ってくださった方にお会いできて嬉しかったです。ラストの謎はともかく、私は変わったことをしてくれる趣味の映画が好みなだけなのかもしれないです(笑)。

ヤマ(管理人)
 これは、だって、映画鑑賞の醍醐味んとこでしょ(笑)。非日常への誘いですもん。珍しいものや場所を見せてくれ、自分ではなかなかやれないあんなことやこんなことをやってもらって(笑)、疑似体験したり、代償させたりするってのが映画の楽しみのイチバンですよ。

(めだかさん)
 正逆これだけいろいろな意見が見れるというだけでも、その作品への評価が上がってしまうというとても単純な奴なんです^^;

ヤマ(管理人)
 そういうのは、僕の場合、やはり作品への評価という側面よりも、評者への評価って気がするんですよね〜(笑)。正反対の解釈が生まれて尚かつ、作品に即する限り、どちらの解釈も成立するというのは、そういうのが「映画のスタイル」としての作品もあるっていうことであって、そういうスタイルのほうが優れてて、それが理由で評価を上げるってことにはならないもののように思うんですよね。
 まして、正反対みたいな特化されたものでなく、てんでんばらばらに、どうとでも解釈できちゃうっていうのは映画のスタイルとしても、いささかマズイ出来ということになるんじゃないかってのが、僕の思いです(笑)。
 まぁ、作品を最終的に仕上げるのは受け手ですから、優れた受け手によって優れた作品に仕上がることもままありますが、そのことが見え映る物としての作品の普遍的な優越を示すものではないと思うんですよ。

(Fさん)
 ヤマさん、こんばんわ。今ごろになってノコノコやって来ました(笑)。

ヤマ(管理人)
 いえいえ、報告と御礼の件もあり、僕もそちらを訪ねなければと思いつつ、旅行やかれこれでいささか立て込んでおり、失礼しました(詫)。

(Fさん)
 結構、僕は「21グラム」ってキライじゃないかもです。

ヤマ(管理人)
 Fさんは支持派ですか。僕は『アモーレス・ペロス』よりゃイイですが、好みじゃありませんね(苦笑)。でも、僕にとって観るべきものが何もないわけではなければこそ、日誌も綴っているわけで、ケチョン派でもありません(言わば白いカラス状態)。

(Fさん)
 予想してたほどは感銘を受けなかったのですが。こう言っちゃうと弁護してる事にならないか(笑)。正直言って妊娠がどうの・・・ってとこは分からなかったですが、主人公たちに襲いかかる「喪失」やら「罪」の意識やら「依存」って問題は、僕も少なからず感じていた事なので、素直に共感できました。

ヤマ(管理人)
 えぇ、僕もここんとこで観ましたね。

(Fさん)
 だから血祭りにされるような映画とは思っていませんでしたね。

ヤマ(管理人)
 ここで血祭りにされたのは、クリスティーナの妊娠とあの編集の目的の不明さであって、映画まるごとが血祭りにされたとも思ってないんですけどね、僕。(まぁ全面拒否派もおいでましたが、対話をしているうちに皆が徐々に変化したように思ってますよ。ですから、Fさんのおっしゃる「血祭りにされるような映画ではない」ということに、今に及んで異議を感じる方もおいでないように思いますよ。

(Fさん)
 少なくとも「ミスティック・リバー」よりは好きです。

ヤマ(管理人)
 どっちも好きとか言いにくい作品ですが、僕は『ミスティック・リバー』のほうがいいですね。

(タンミノワさん)
 あまりにも「21g」系書き込みが多くってついていくのに必死でした。

ヤマ(管理人)
 僕も、でした(笑)。

(タンミノワさん)
 で、Fさんの書き込みを読んで、私もこの映画をえらく「つるし上げて」いることに気がついてしまいました。なんか、集団で一人をボコボコにしてる気がして複雑です。

ヤマ(管理人)
 いえいえ、折々に擁護派も登場して下さってましたよ。

(TAOさん)
 いやいや、一度、思いっきりつるしあげたからこそ、いまでは愛を感じるまでになった気がするんですけど(笑)。

ヤマ(管理人)
 そうおっしゃってましたね、確かに(笑)。嗜虐趣味あり?(笑)

(タンミノワさん)
 皆さんの解釈読んでて、映画そのものよりも面白かったです。

ヤマ(管理人)
 ホントにそうでしたね。僕は、主にポールが何故撃ったか、で観てましたから、妊娠談義には、頷きと気づきのオンパレードでしたし、六の宮の姫君の話やメアリへの考察も面白かったです。
 なかでも一番は、僕が元々何故撃ったか、で観てたということもありますが、あれはマイケルの心臓が撃たせたという解釈でしたね。これには痺れました。それがあったか、と悔しさのあまり、それなら、あぁいうシーンもこういうシーンもほしかったなどと恨み言をぼやいていましたが(苦笑)。
 僕は日誌で「最初は単純に、愛するクリスティーナに殺人を犯させたくない一心から彼女の暴行を中断させるためだと思ったのだが、それだけだといささかファナティックに過ぎて釈然としない。」で留まったのですが、そこにマイケルの意思が働いていたと解すると、ファナティックでも何でもなくなりますよね。これにはやられました。

(タンミノワさん)
 私はそこまで深く観てなくって、メアリのキャラにしても「あ〜いるいるこういうタイプ」って感じで軽〜く流してましたので。

ヤマ(管理人)
 メアリなんて、ほとんど眼中にありませんでしたね、僕も。だって、そういう作りじゃないんだし(笑)。

(タンミノワさん)
 私もこの映画って「好み」じゃなかっただけかもしれません。私は、観終わった後、重〜いテーマだったけど、なぜか晴れ晴れみたいな映画がやっぱり好きなんでしょうね。(笑)フツウの人なんで。

ヤマ(管理人)
 僕はそういうとこで好みが左右されたりはしないんですけど、ピンと来ないところの多い作品だなとは思いました(笑)。でも、ついぞ退屈することなく観た作品でしたけどね。

(TAOさん)
 じつは私、クリスティーナの妊娠に関しては、それほどひっかからなかったのです。

ヤマ(管理人)
 とりあえず、妊婦には脱帽!ってわけですか(笑)。

(TAOさん)
 うわ、薬中なのに、どうする!とは思ったものの、2人娘を失った喪失感を埋めるために、少なくともまだ産める可能性を実感するという意味では希望なのかな、なんて思ってました。
 すみません、今ごろ。ここではなんとなく言い出しにくくて(苦笑)。

ヤマ(管理人)
 彼女の妊娠エピソードについては、いいとこなしでしたもんね(笑)。積極的に意味を見出すには至ってない「脱帽」なら、敢えて切り出すことにはならかったでしょうよ(笑)。

(TAOさん)
 それでなぜ私には妊娠がひっかからないのかと、そっちのほうが不思議だったのですが、自分が産む産まないの選択に関して悩まないからこそ、他者の妊娠に対しては、本来あるべきもの、よきもの、と思っちゃうくせがあるようです。

ヤマ(管理人)
 避けてる側が口を挟むべきでないってことですね。実に健全なバランス感覚だと思いますよ。避けてる側が、ホラ見たことか、みたいな態度に出るよりゃ、よっぽどいい。

(TAOさん)
 自分を括弧に入れて考えすぎるから、こうなっちゃうんでしょうね。

(ローズさん)
 『21g』を観て、みなさんと色んなトークをして「まんまと映画の作り手の罠にはまった」ような気がしています。

ヤマ(管理人)
 なるほど。実は、これが狙いだったと?(笑) 確かにケンケンガクガク、大いに楽しませてもらいましたよね。インタビューにまで周到な配慮が及んでいて、全く、やられちゃいますよねー(笑)。

(ローズさん)
 「イヤよイヤよも好きなうち」と誰かに指摘されたら素直に認めます(笑)。

ヤマ(管理人)
 あはは。そういうのって女性への誤解を招きますよ(笑)。

(ローズさん)
 ヤマさんやみなさんから飛び出すご意見がユニークで興味深くて、お仲間に加えさせていただいて貴重な経験をさせていただきました。

ヤマ(管理人)
 僕も本当に楽しみました。『トーク・トゥ・ハー』以来の大討論でしたよ(笑)。

(ローズさん)
 こんなに楽しめたことのすべては、ヤマさんのおかげってわけです。(うぃんく)

ヤマ(管理人)
 と、漁夫の利が得られるところが管理人の旨味ですね(笑)。“うぃんく”までいただいて喜色満面ですよ(あは)。お訪ね下さる方々に恵まれてるおかげで儲けちゃいました(笑)。
by ヤマ(編集採録)



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