平三角造直槍
(ひらさんかくづくりすぐやり)
−個人蔵−
前田慶次はとりわけ槍の腕前が素晴らしかったと伝わります。
この朱柄の大槍は、堂森に無苦庵を構え心穏やかな日々を過ごした頃、近隣の住民と馴染んだ慶次が孫兵衛なる人物に贈った槍と伝わっております。
穂先から柄末端までの長さが313センチの大身の槍で、慶次の豪腕に適ったものであることが伺えます。上杉軍と最上軍が戦った長谷堂の合戦では、この槍を揮い奮闘したとされています。
朱柄の武器を使うことは、武功を成した者にしか許されなかったため、慶次がどれほどの槍の腕前であったのか窺い知ることができると言えるでしょう。
銘には「下坂」とあり、筑後国柳川藩主田中吉政に仕えた刀匠「下坂八郎左衛門」のことであろうと言われています。
直槍にもかかわらず、十文字の形をした錆漆塗りの鞘が付いていて柄には螺鈿が散りばめられているあたりに、傾奇者前田慶次を感じられます。
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