engine-world

W. エンジンの基本構成要素 (コンポーネント)       


ここでは次のエンジン主要構成要素について述べます。
@コンプレッサ   A燃焼器   Bタービン   Cプロペラ、プロップファン
Dファン   E遊星歯車   F可変ノズル   G旋回ノズル  Hトルクメータ
I燃料ノズル  Jエア・スターター  K無段変速機(CVT)  L軸受(ベアリング)

@ コンプレッサ

吸入した空気を圧縮するものですが、羽根の形状により
軸流式と遠心式の二種類があります。

軸流式
入口案内翼、ブレード(動翼)、ステーター(静翼)で構成されます。
案内翼、静翼には流入角度を運転条件により可変としたものがあります。
ブレードの取付けにも種々の方法があります。
JEC-01」は一般的な「軸方向ダブティル方式」です。
加工技術の進歩により、剛性の高い「ドラム式ディスク」が誕生し、ダブティ
ル溝が円周方向になりました。そのためブレードの取付けが独特の方法に
変わりました。「JEC-01-1」参照。
小型エンジンでは、ディスクとブレードを一体加工(精密鋳造又は削り出し)
したローターが使われることがあります。
遠心式
インペラ(扇車)と呼ばれる部品とデイフューザと呼ばれる部品にて
構成されます。この方式は1段で高い圧縮比得られるので
小型エンシンに多くみられます。
小型エンジンでは遠心式の前に軸流式を付加した形式も多くみられます。

第一世代のジェット・エンジンには、インペラを背中合わせにした「両側吸込」
式のものもありました。[TJE-02]はそれを使用したエンジンのモデルです。



A 燃焼器

製造技術の進歩に伴い、
カン型 → カン・アニュラ型 → アニュラ型へと変わってきました。
燃料の霧化技術の進歩により小型化が進んでいます。
小型エンジンでは全長を短くするため、逆流式アニュラ型が主流です。

B タービン

軸流式
現在は軸流式が殆どです。ノズル・ガイドベーン、ブレードで燃焼ガス通路が
構成されます。又、ローター、ブレードの熱膨張による隙間の拡大を防ぐた
め、ケースを冷やす方式等効率アップの種々の対策がとられます。
[JEC-04]はタービンのそれらの基本構成要素のモデルです。
タービン入口温度がエンジンの効率に大きく影響するので、高温に耐える材
料、冷却方法の開発に各メーカーがしのぎを削っています。最近のエンジンで
は、タービン入口温度が金属溶融温度をはるかに超えるものがあります。
とくに最も過酷な高圧タービン・ノズル及びブレードは、各種の冷却技術を使
用した精密で複雑な構造しています。
そこで最新の高圧タービン・ブレードの構造・製法の概要を理解できるモデル
[JEC-04-1]を製作してみました。
精密鋳造による製造工程の概要も解説しています。

半径流 (ラジアル) 式
この方式は初期のエンジンにみられましたが、
現在では小型のAPU(補助動力装置)にわずかにみられます。


C プロペラ、プロップファン

プロペラは時速6〜700キロメートル位までであれば効率が良いとされてい
ます。
現在は、飛行機の速度にかかわらず一定の回転維持する定速プロペラが
主流です。そのため速度に合わせてピッチを変化させるため「プロペラ・ガ
バナー」が使用されます。ピッチ変更にはエンジン潤滑油が使用されます。
JEC-06-1」参照。
また先に述べたようにピッチ変更により制動力を生み出すことも可能です。
エンジン停止時には、プロペラ抵抗を減らすため、ピッチを90°近くにする
ことも可能です。これはフェザリングと呼ばれます。
ピッチ変更機構の代表例として「リンク式」と「歯車式」があります。
JEC-06」はリンク式で「JEC-06-2」は歯車式です。

プロペラが発生する「反トルク」を解消するため「二重反転式プロペラ」が
古くから開発されましたが、重量、騒音等の観点から一部の国を除き実用機
には採用されていません。その構造一例は「JEC-06-3」を参照ください。

上記のようにピッチ変更には、エンジン油圧が主に利用されます。
しかし、第二次大戦中にドイツで開発された「倒立V型12気筒エンジン」
(RE-12参照)では、プロペラ軸内にモーター・カノン砲を装着するため油圧が
利用出来ず「電気式プロペラ」が使用されました。

モーター駆動及び差動歯車を利用した構造・原理を説明するため、そのモデ
ルを作成しました。(
JEC-06-4参照)

ターボプロップ・エンジンの燃費の良さを生かしながら、速度をターボファ
ン・エンジン並みに上げる研究が始まっています。
プロペラに後退角をもたせ、二重反転させる方式で、
プロップファン、オープン・ローター、アンダクテッド・ファン、
ウルトラ・ハイ・バイパス・エンジンと呼ばれています。
二重反転方式には、歯車式、遊星歯車式、タービン式等があります。
技術的課題も多くまだ実用化には至っていません。
遊星歯車式のプロップファン構造一例は「JEC-16」を参照ください。
「タービン式」のプロップファン構造一例は「JEC-17」を参照ください。
これらのエンジンには課題が多く実用化にはまだ時間が掛かるようです。
モデル製作を通じての感じた課題は・・・
 ・プロップファンの形状・材質  
 ・10+枚ファン用ピッチ変更機構・・・フェザー←→リバースが必須
 ・高出力減速歯車機構
 ・二重反転ファンによる騒音軽減・・・・等
持続的世界を目指している現在、私が希望する未来型旅客機エンジンのモデ
ルを製作しました。「
JPE-07
上記の一連のモデルを整理しました。「特集E

















D ファン

ターボファン・エンジンが誕生して以来、種々の型式のファンが開発されてき
ました。
当初は金属製のファンが主流でしたが、最近では「積層式コンポジツト材ワ
イド・コード・ブレード」が使用されるようになりました。
JEC-07」はそのモデルです。
以前の全金属製のファン・ブレードには次の型式のものがありました。
JEC-07-1」はスナバー(ミッドスパン・シュラウド又はパートスパン・シュラ
ウド)付きのブレートのモデルです。
JEC-07-2」はピン/リベット式のブレードのモデルです。
ファンの課題は、性能、軽量化、鳥衝突対策及び飛散閉じ込め対策です。こ
の矛盾する対策のため各メーカーはしのぎを削っています。

近年、新しい発想のファンが中型エンジン(50インチ・クラス・ファン)に採用され
始めました。
それは、「ブリスク・ファン(Blisk Fan)」と呼ばれるものです。
ブリスクとは、ブレード(Blade)とディスク(Disk)を合体したローターに対する名
称です。
ブレードは、削り出し加工で製作されます。
ブリスクは、ブレードが短く、かつ機体上で交換の必要のないコンプレッサー部
には、大小のエンジンを問わず以前から採用されています。
このファンは、整備性以上に部品数削減、軽量化、効率化を優先させるという
新しい発想のもとに誕生したようです。
JEC-07-3」は、そのイメージモデルです。


E 遊星歯車 (プラネタリ・ギア)

この装置は航空エンジンに限らず以前より広く一般的に活用されているもの
です。
目立たない装置ですが、ピストン、ターボプロップ、ターボシャフト・エンジン
には不可欠な装置です。
ギアード・ターボファン (GTF)エンジンにも使用されています。
現在、大型ターボファン・エンジン「TFE-03」に使用され始めました。
今後、拡大活用されるかもしれません。
ヘリコプター用メイン・ギア・ボックスにも必須の装置です。
現在開発中のプロップファン・エンジンにもこの装置の特徴を生かしたタイプ
があります。
また、エア・スターター「JEC-13」にも必須の装置です。
未来型エンジンへの使用例は「TPE-05」「JEC-16」を参照下さい。


F 可変ノズル (バリアブル・ノズル)

先の「空気と燃料」の項で述べたように、エンジンの排気には未燃焼の酸素
が沢山含まれています。
この酸素を再燃焼させ、推力を増加させる装置が「アフターバーナー」です。
この装置を作動させるとエンジンの背圧が上がり、そのままでは、エンジン内
部に逆流する恐れがあります。そこで「アフターバーナー」付きエンジンでは
後端に可変ノズルを装着して作動状態に応じて面積を変化させています。
耐熱材の板金構造になっており、複雑な構造をしています。
カム&ローラー式、全リンク式などがあります。
G 旋回ノズル (スイベル・ノズル)

最新鋭の戦闘機に空母に垂直着艦するものがあります。
そのエンジンの後端に装着されているのが、3ベアリング・スイベル・ノズル
(3BSN)と呼ばれる排気ダクトです。

非常に複雑な動きをするので、理解しやすくするためモデル化しました。

H トルクメータ

回転出力を利用するエンジン(ターボプロップ、ターボシャフト)では、エンジン出
力の反トルクを利用したトルクメーター・システムを内蔵しています。
その方式には色々ありますが、エンジン本体と減速歯車が一体となっているエ
ンジンでは、エンジン・オイルを活用したものが多く使われます。
反トルクを軸方向の動きに代え、バルブの開度を調整して、ピストンとシリンダ
ー内の圧力と反トルク軸方向の力とをバランスさせるものです。
そして、この圧力をトルクメーターとして操縦室計測パネルに表示し、エンジン
の制御に利用します。
その軸方向の動きを発生させる方法として
【T】遊星歯車が平歯車の場合 (キャリア軸が出力軸)
リング・ギアの外周にヘリカル・スプラインを追加し、リング・ギアに発生する
軸方向の力を利用する。
この方式は比較的広いピストン面積が得られるので、エンジン・オイル圧力
が利用できます。[JEC-11]はこの型式のモデルです。
【U】遊星歯車がヘリカル・ギアの場合 (リング・ギアが出力軸)
キャリア・ギア(複数)に発生する軸方向の力を利用する。
この方式は、各ピストン面積が狭いので、より高圧なトルクメーター用ポンプ
が必要となります。
【V】ヘリカル・ギア・トレインを持つ減速装置の場合(主にターボシャフト・エンジ
ン用)
中間歯車に発生する軸方向の力を利用する。
"JEC-11-1]はこの型式のモデルです。
【W】その他
二本又は一本の軸のねじれ差を利用するもの(油圧式、電気式)もあります。


I燃料ノズル
燃料エネルギーを無駄なく燃焼させるために重要な部品である。
燃料ノズルは取り付けられる燃焼室と密接に関係します。
その役目は、低出力から高出力までの広範囲にわたり安定した微粒子噴霧を
提供するものです。
燃料ノズルの形式は色々ありますが、現在の主流は「噴霧式」で、
@シンプレックス燃料ノズル
Aデュプレックス燃料ノズル    の二種類が使用されます。
これらの噴霧化の方法はほぼ同じで、単一か二重化の違いです。
燃料系統から送られてきた高圧燃料を、ノズル内にて円周方向に分配し、渦巻
通路を経由し中央の噴出孔から噴霧させます。
そして、ノズルの外周部から圧縮空気を導入し、霧化を促進するとともに、エン
ジン停止時の未燃焼燃料を吹き飛ばし、カーボンの堆積を防止します。
すなわち、デュプレックス燃料ノズルは、一次燃料と二次燃料を供給する比較的
大型エンジンに対応します。
燃料ノズルは燃焼器と密接に関係しますが、製造技術が異なるため、精密部
品が得意な専門メーカーにて製造されます。
微細で精密な穴を持つ部品が重なって組み立てられますが、部品間の漏れを
防ぐため表面が超精密に加工(ラッピング)してあります。
この右の「JEC-12」は「デュプレックス燃料ノズル」を内部構造説明するための
ものです。

その他、初期のエンジンに使用された「蒸発管式ノズル」、ローターの中心から
遠心力を利用して噴霧する「遠心式」がありますが、現在は殆ど使用されてい
ません。
戦後日本初のエンジンに「蒸発管式ノズル」が採用されました。
そのエンジン「TJE-04」を参照方。
現在、さらなる低公害化に向けて、いろいろな機関で新しい燃焼器と燃料ノズ
ルの研究が行われているので、まったく新しい方式が出現すると思います。













Jエア・スターター
「中型」および「大型」クラスのジェットエンジン始動には、エア(タービン)スターターが、電気スターター(モーター)よりも軽量なため使用されます。
エア・スターターは、APUまたは地上装置から供給される圧縮空気によって駆動されます。
「ラジアル」または「アキシャル」タイプのタービンがあります。 このモデルは、動力源として家庭用掃除機を使用できる「アキシャル」タイプのランニングモデルです。(JEC-13参照)
それに対するカット・モデルは「JEC-13-1」です。

K無段変速機(CVT)
無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)には種々な方式がありますが、摩擦式のものには次の種類があります。
(1) V溝プーリー利用ベルト式・・金属ベルト、チェーン等のベルトがあります。
(2) ドーナツ状ローラーを利用したトロイダル式
現在は(1)方式が自動車に多く採用されています。(2)はいくつかの車種に使用されましたが、現在は終了しているようです。
航空エンジン本体には、この種のCVTは使用されません。
しかし、ギアボックスに取り付けられる機体用補機であるIDG(IntegratedDriveGenerator)と呼ばれる交流発電機(115V,400Hz)に、(2)のトロイダル式CVTが使用されていることを知りました。CSD(Constant SpeedDrive)とも呼ばれます。
基本構造を知りたくて簡易ランニングモデルを製作しました。「JEC-14参照」
L軸受(ベアリング)
軸受はジェット・エンジンの重要コンポーネントの一つです。
今回は、ターボファン・エンジンを例にした軸受教材を作成してみました。
現用の大型ターボファン・エンジン(2スプール式)は、5個の主軸受で構成されています。「JEC-15参照」
使用箇所毎のタイプ、分担負荷、役割を説明するために、5個全ての軸受モデルを作成しました。 全体展示はもとより、基本構造を知るため各モデルは手に取って回してみることが出来ます。