engine-world

V. エンジンの基本要件(空気と燃料及び出力単位)           


@ 空気
- 空気には配慮すべき性質があります。

それは音速で衝撃波を発生することで、エンジンにも大きく影
響します。

エンジンには、プロペラファンコンプレッサタービン・ブレー
ドといった回転する羽根があります。

これらは衝撃波を避けるため回転速度が制限(グラフ参照)され
るので、衝撃波の発生を遅らせるため、翼全体及び断面形状
が日々研究されています。
流路ダクト形状と音速も表のように状態が変化します。
(表参照)
この変化を考慮しエンジン・インレット、コンプレッサ・ディフューザー及び排気ダクトが設計されます。
また圧縮すると温度が上がります。
機体の主翼と同じく羽根の迎え角を大きくすると剥離(乱れ)を生じます。
この現象の対策として、コンプレッサでは抽気及び/又は可変ベーン機構が採用されます。
A 燃料
- エンジンのタイプにより使用燃料が違います。

・ピストン・エンジン
ガソリンが使われます。高出力のエンジンには毒性の強い「4エチル鉛」の入った高アンチノック性のガソリ
ンが必要でした。これがジェット・エンジンに代わる一つの要因でした。

・ジェット・エンジン
灯油系のジェット燃料が主に使用されます。これはガソリンより引火点が高くより安全です。
エンジンでは燃料と空気を混合して燃焼させるのですが、完全燃焼すると温度が2000℃にも達し、
すべての金属は溶けてしまいます。そのためエンジンでは、温度を下げるため余分な空気を取り込みま
す。
温度は大きく効率に影響するので、出来るだけ高くするようにタービン部の材料、設計には各社研究・工夫
がなされています。
従来の化石燃料の代わりに、バイオマス由来原料や廃棄物・廃食油等から精製される「持続可能な航空
燃料(SAF)
」への置き換えが進行しています。
将来的には、液体水素の利用も研究されています。


B 出力単位 (計測方法)
「推力」を生み出す方法は同じですが、エンジン自体の出力単位は同じではありません。
エンジン自体に出力軸があるかどうかで、下記のとおり計測方法が異なります。 整理すると・・・
「出力軸あり」 ピストン、ターボプロップ・エンジン、ターボシャフト
                       ・・・・ 軸出力馬力(PS) 75 kgf・m/s (注)
「出力軸なし」 ターボジェット、ターボファン、プロップファン
                       ・・・・ 推力(スラスト)  kgf,, lbf

軸出力」は出力軸に動力計等の負荷装置を接続し、ブレーキをかけその反トルクを計測し算出します。
推力」はエンジンをバネで吊り下げ、前方へ飛び出す力を「秤」で直接計測します。この推力を静止推力と呼びます。

この二つは単位系が異なるので直接換算できませんが、推力馬力として次の計算式があります。
飛行速度(m/s)×その時の推力(kg)/75 = 推力馬力 ・・・・ 実際の計測は難しいのであくまでも参考値です。

(注) 馬力には「英馬力(HP)」と「仏馬力(PS)」があり、日本では「PS」が使われます。

関連については「エンジンの種類と基本特徴比較」参照