「おなおらい」という名の金一封
石北本線 安国駅は2面2式の無人駅だ。
ログハウス風の駅舎は平成になってからのものだ。
ここから西の山中へ入る。
カラマツに囲まれた明るい林道を走る。
現地形図に怪しい痕跡は無く、
推理した鉱山跡付近へ向けてゆっくり登る。
何もない林道の途中から徒歩の探索だ。
鉱床図で推理した場所だが、
まったく何もない道だ。
林道の脇に植生の緩い一画があった。
もしやこれはズリではないだろうか。
林道を走っていたなら、見逃しそうな痕跡だ。
その延長には白い小山が見える。
これはズリ山で間違いない。
ずばりここが鉱山跡だ。
5月中旬とは言え、
日陰に残雪する鉱山道路跡を進む。
この先には更にズリ山があるはずだ。
そして到着したのは、
白い広範囲なズリ山だ。
ここが最下流だとすれば逆の山の手を見てみよう。
車両は入れない旧い廃道がある。
これに沿って西を目指す。
この先が鉱山の中心部だろう。
付近にはタイル張りの浴場の廃祉がある。
苔むした浴槽。
かつての生活が偲ばれる。
その奥で発見したのは、
RC製の基礎でアンカーボルトが設置されている。
これは精錬に関する、コンクリート遺構で間違いない。
行きついたのは精錬所の廃墟だ。
森に眠る巨大な遺構だ。
これはよく残存したものだ。
全体は3段の構成で幅は60m程度。
北ノ王鉱山や大栄鉱山、大岸、徳星ほどの規模は無いが、
十分な大きさの廃墟だ。
精錬所は一部崩れている。
長年の凍裂や繰り返しの融雪で、
崩れていったのだろう。
精錬所から遥か上部に登る。
ここには工業的な雰囲気があるし、
坑口の発見に至るかもしれない。
上部には変に埋没した箇所があり、
この付近が坑口だったかもしれない。
違うルートで精錬所へ下ってみよう。
その山の斜面にはまた違う廃祉がある。
この付近一帯が精錬施設で、
他にも遺構はあるかもしれない。
鉱山跡付近の杜。
月産1,200t時には鉱員全員に紅白餅、
2,000g/t以上のAu出鉱時には「おなおらい」と呼ばれる金一封が支給されたそうだ。
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