羽幌本坑 運搬立坑 探検: 北の細道 羽幌本坑 運搬立坑

羽幌本坑 運搬立坑で39.34mに立つ




北海道羽幌町

   昭和40年6月、石炭鉱業は燃料消費動向の激変に伴うエネルギー革命の渦中にあった。
ここ、道北の羽幌町山中では企業化創業時代とされる昭和14年(1939)頃から採炭が進み、
昭和36年(1961)以降、深部開発総合計画を樹立し、 築別坑ではベルト大斜坑計画、
羽幌坑は運搬 「立坑」地面から垂直に掘られた地下坑道と接続する穴 計画の合理化集約計画が実施されてきた中で本運搬立坑は完成した 。

当時の価値で17億円の工費を投じて建設された立坑は、工期4年で完成に至り、
「二策式」ワイヤーロープが二連式 で直径6.0m、巻上深度512m、 「ケーペ式」ドラムにロープを巻き取らず、 ヤジロベーのようにロープ両端で交互に地上と坑底を結ぶ 巻上機塔上設置方式(=タワーマシン)であった。

タワーマシン…つまり巻上機械が地上にあるグランドマシン型 (奔別、美唄など)
とは異なり、重量物の 「ケーペプーリ」動力滑車 や電動機(=モーター)などがタワーの上部に設置されている。
地震大国である日本では稀な設備で、巻上機等の取替作業も容易ではない。
恐らく、深度との兼ね合いでコストの関係も含め、鋼材を多量に使用するグランドマシン型を避け、
コンクリートを多用した本方式としたのかもしれない。


グランドマシン型 美唄 タワーマシン型 羽幌
    (違いは塔が囲まれているかではなく、あくまで巻上機の位置が地面or塔上の相違)

高さ39.34m、これは 「スキップ」地下で採掘した石炭を積込む箱 の高さやそのシュート高さ、 「バッファ」巻き過ぎ防止装置 が作用するまでの巻上距離、
補助スライダーと 「ガイドシーブ」=ヘッドシーブ=無動力滑車 中心距離などに安全率を考慮して導き出される。

吊り下げられたワイヤーロープ直径は37mm。
「ケージ」人員・炭車輸送用の箱 と呼ばれるエレベーターの箱のようなものがあり、
これは1.6立法m、炭車4車または人員50人を収容する二階建てのものであった。

その重量はズリで8,350sにものぼり、この箱を秒速11mで運転する。
東京スカイツリー展望デッキエレベーターが秒速10mのため、それより高速であったと言える。

まずは塔の断面図を見ていただこう。
右の「GL」は『グランドライン』の略で地面表面レベルからの高さを表す。例えば4階は地面から21.14m。
赤文字は各階配置の主たる機器だ。 断面図


地下512mの穴の直上にガイド櫓(やぐら)があり、2階、3階は 「ケージ」人員・炭車輸送用の箱 が上部へ暴走した場合の停止機構がある。
5階の 「ケーペプーリ」動力滑車 を電動機(=モーター)で回し吊り下げた箱を上下させる。
その際、ワイヤーロープのスリップ防止のために 「ガイドシーブ」=ヘッドシーブ=無動力滑車 を左方向に押し付けてロープの摩擦を高めるのである。

5階建ての巻上塔は昭和45年の閉山に伴い運用停止。
わずか5年の稼働である。
運搬立坑とはいえ、主要入気坑道の機能も有していた当時の最新技術を見てみよう。




今回、富士電機株式会社様のご厚意により
著作物の引用転載許諾等頂きましたことを、この場を借りてお礼申し上げます。

出典
高橋正昭 著
富士電機技報 Vol.9 p.572〜581
羽幌炭鉱鉄道・羽幌運搬立坑巻上設備
1965年 第1図〜第19図



※なお、現在では塔の腐食・劣化激しく登頂は大変危険なため立入禁止となっています

prayfor31041階から3階 prayfor31044階から屋上





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