巻一 天皇遊猟蒲生野時額田王作歌
20あかねさす紫野行き標野行き
野守は見ずや君が袖振る
茜草指 武良前野逝 標野行 野守者不見哉 君之袖布流
紀曰 天皇七年丁卯夏五月五日縦猟於蒲生野 于時大皇弟諸王内臣及群臣 皆悉従焉
巻三 柿本朝臣人麻呂歌一首
266近江の海夕波千鳥汝が鳴けば
心もしのにいにしへ思ほゆ
淡海乃海 夕浪千鳥 汝鳴者 情毛思努尓 古所念
巻六 神龜元年甲子冬十月五日幸于紀伊國時山部宿祢赤人作歌一首
919若の浦に潮満ち来れば潟をなみ
葦辺をさして鶴鳴き渡る
若浦尓 塩満来者 滷乎無美 葦邊乎指天 多頭鳴渡
右年月不記 但称従駕玉津嶋也 因今檢注行幸年月以載之焉
巻十九 廿五日作歌一首
4292うらうらに照れる春日にひばり上がり
心悲しも独し思へば
宇良々々尓 照流春日尓 比婆理安我里 情悲毛 比登里志於母倍婆
春日遅々鶬鶊正啼 悽惆之意非歌難撥耳 仍作此歌式展締緒 但此巻中不稱
作者名字徒録年月所處縁起者 皆大伴宿祢家持裁作歌詞也