プラレール考察
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10月14日は「鉄道の日」です。 「鉄道」と言えば、子どもさんに人気なのが「♪青いレールをつなごう〜♪」でお馴染みの「プラレール」です。 今回は、この「プラレール」について、少し考えてみましょう。 【レールの長さ】 1959年に誕生した「プラレール」は、今年で65年。 この間に、色々な種類のレールが登場していますが、 何と言っても、主役は、「直線レール」と「(複線の内回り用)曲線レール」でしょう。 直線レールは、1本の長さが214mmです。 「216mm」との説もあるようですが、 誕生当初のものと現行するもので、若干のサイズ変更がなされている・・・との話もあるようです。 現在販売されているものは「214mm」です。 いずれにしても、曲線レール8本で作る円の半径に合わせている、とのこと。 では、曲線レールの“曲がり具合”は、何を根拠にしたかと言うと、 当時、各家庭にあった、一般的な「卓袱台(ちゃぶだい)」に乗せられるように設定したようです。 卓袱台にも、色々なものがあったでしょう。 当然、大きさや材質にとって値段も異なったはず。 “一般的な”ということは、一般的な家庭が、どのような卓袱台を持っていたか?・・・ということと関連し、 ひいては、一般的な家庭の生活水準を考える必要があるので、これは、大変! 社会科学として、別の機会で、考えることにしましょう! 【レールの幅(片輪の溝幅)】 今回、取り上げるテーマは「レールの幅(片輪の溝幅)」です。 ![]() ひと言に「レールの幅」と言っても、図1にあるように、@〜Bの3種類あります。 @はレール全体の幅で「37mm」、Aは片輪の溝幅で「11mm」、Bは両輪間の溝幅で「18mm」。 本来なら、A×2+B=@になるはずですが、現在、(左辺)=40で、(右辺)とは異なっています。 これは、レール幅全体を3つの溝に仕切る“土手”2つ分の厚みがダブっているからです。 “土手”1つ分の厚みが1.5mmなので、2つ分で3mmの違いが生じています。 溝幅に“土手”を含める方が良いのか、含めない方が良いのかは、改めて検討することにしましょう。 レール全体の幅「37mm」は、AやBの長さに依存しているので、 AやBの長さが、なぜ、その長さになっているのかを考えれば良いことになります。 ![]() AやBの長さを考えるにあたって、気になったのは、車両についている車輪の位置関係です。 プラレールの車両は、3両1編成が一般的で、直線レール2本分に収まる長さです。 図2のように、中間車両の長さが長いものと短いもので異なる場合がありますが、 これは、先頭車両の長さによるものでしょう。 1編成の長さを同じにしようとすると、先頭車両が長いときは、中間車両を短くして調整・・・という感じ。 注目したいのは、中間車両で、車体の長さが異なっても、 ホイールベース(前輪から後輪までの長さ)は「46mm」で同じである、ということです。 また、中間車両だけでなく、1編成内において、中間車両と先頭車両を比べても同じですし、 先頭車両どうしを比べても、駆動車であるかどうかに関係なく、ホイールベースは同じです。 【内輪差】 図1におけるA(片輪の溝幅)は、内輪差に関係しているのでは?・・・と考えました。 そこで、少し計算してみることにしました。 中学3年生で学ぶ「三平方の定理」を活用します。 (次の図3は、レール溝を仕切る“土手”の厚みや、車輪幅を考えていない、簡略化した図になっています。) ![]() 車両が左カーブを曲がるときを考えてみます。 長方形の4頂点A,B,C,Dに車輪があると思ってください。 「内輪差」とは「OB−OC」のことです。 (余談ですが、車の左折時に気をつけないといけません。) まず、OBの長さを求めてみます。「三平方の定理」より、OB2 = OC2 + BC2 です。 OCは、曲線レールの半径から、レール幅(内のり)の半分を引けば良く、「411mm」です。 BCは、ホイールベースで「46mm」でした。 これらを代入して、OBの長さを求めると、413.5・・・≒414mm でした。 次に、OCです。 OC = OD − CD であり、ODは、上と同様に「三平方の定理」で求まります。 OD2 = OA2 − AD2 で、OAは曲線レールの半径に、レール幅(内のり)の半分を加えたもの、 ADは、ホイールベースで「46mm」です。 OD = 442.6・・・≒443mmとなりました。 CDは「トレッド(左右の車輪間の幅)」です。 車両がレールを走行するときの「はまり方」から、 最大幅である、動輪軸の外側どうしの幅(32mm)が妥当であると判断しました。 これらの結果、OCの長さは、443 − 32 = 411mmとなりました。 ということは、内輪差は、414 − 411 = 3mmとなります。 【曲率半径と内輪差の関係】 図1のA(片輪の溝幅:内のりで8mm)に比べると、小さい値ですが、 今、計算したのが、曲線レールのうち、複線の内側だったからでしょうか? 複線の外側だと、内輪差は大きくなるのでしょうか? 試しに、複線の外側の半径「549mm」で計算すると、内輪差は、ほぼゼロになります。 一般に、曲率半径が大きくなるほど、内輪差は小さくなるので、当然の結果と言えば、それまでです。 この一般論「曲率半径が大きくなるほど、内輪差は小さくなる」が本当なのか、確認してみましょう! 内輪差を、曲率半径を独立変数 x とした関数 f(x) で表すと、次のようになります。 ![]() この関数 f(x) が、単調減少であることを確認すれば良いわけです。 無理関数が入っているので、高校数学「数学V」で学ぶ「微分法」を活用します。 【片輪の溝幅(8mm)】 片輪の溝幅(8mm)は、内輪差(3mm)に対して、余裕のあるものでした。 これは、子供も扱う「玩具」だから・・・ということかも知れません。 ギリギリを攻めすぎると、脱線ばかりして、子供がイライラするかも知れませんので・・・(笑)。 ただし、気になることもあります。 「ニュー坂レール」というレールパーツがあります(図4)。 平面から高架への上り、または、高架から平面への下りに使います。 この「ニュー坂レール」を下りに使い、直接、曲線レールをつなげたとき、脱線することがあります。 「直線レール」や「1/2直線レール」を1本挟んでおくと、脱線は回避できますが、 曲線レールを直接つないだときには、脱線することがあります。 ![]() 「ニュー坂レール」が登場するまでは、高架1階分の高低差を下るのに、 1階分を4分割した“薄い高架パーツ”で直線4本をつなぎ、緩やかに下っていました。 当時は、下った直後のカーブで脱線することはなかったでしょう。 「ニュー坂レール」は、直線2本分の長さで、1階分の高低差を下る上、 横から見ると「S字カーブ」を描いているので、下っている最中の傾斜が、かなり急です。 その加速により、スピードが増した状態で、曲線レール区間に進入すると、脱線の原因になるのかも知れません。 この辺りも検討の余地ありですね。 |
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