火星への着陸成功!

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2021年2月19日、

アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーサビアランス」が、火星表面に無事着陸しました。

火星の話題は2016年2月以来、5年ぶりですね(当時の話題は、映画「オデッセイ」でした)。

火星探査の目的は、有用な資源を探すことや、生命の可能性を探ることです。



それにしても、今回の火星着陸成功が話題になったのは、今までの着陸成功率が非常に低かったからです。

ロシアは、ソ連時代から通算して17度挑戦していますが、いずれも失敗に終わっています。

日本やヨーロッパも挑戦したことがありますが、任務完遂ではありませんでした。

これまで最も成功を収めてきたのはアメリカですが、それでも成功率100%ではありません。

19回挑戦して成功したのは14回(成功率73.7%)。

莫大な予算が投入されるわけですから、1回の失敗が事業継続の命取りになる可能性もあります。

「成功率が7割を超えているから、いいんじゃないの?」ではダメなのです。

ですから、今回も着陸成功を確認するまでの数分間はハラハラ、ドキドキだったことでしょう。



着陸成功率が低かった理由は、火星まで遠いので、遠隔操作ではタイムラグが生じていたからです。

解決方法として、地球からの遠隔操作ではなく、探査機本体で自動制御できるようにしました。

ちなみに、遠隔操作だと、どれくらいの支障が出るのでしょうか?・・・少し計算してみましょう!

地球も火星も太陽の周りを公転していますが、円軌道ではなく、楕円軌道です。

また、地球の公転面と火星の公転面は、厳密には一致していません。

しかし、ここでは計算を簡単にするために、周回軌道を円とし、公転面が一致していると仮定します。



地球と太陽との距離は1.496×108(km)、火星と太陽との距離は2.279×108(km)なので、

最も接近するときで、地球と火星との距離は

(2.279×108)−(1.496×108)= 0.783×108(km)

になり、単位変換すると、0.783×1011(m) = 783×108(m)です。

地球からの遠隔操作には電波を使うことになりますが、電波も光と同じ電磁波の一種で、

その速さは2.99792458×108(m/s)です。

したがって、地球から送った電波が火星に届くのにかかる時間は

(783×108)÷(2.99792458×108)=261.1806865(s)。

火星で起こった状況が地球に送信されてくるのにも同じだけの時間がかかるので、

火星で起こった状況に対処する地球からの指示が火星に到達するのは

261.1806865×2 = 522.361373 秒後になります。・・・8分以上かかります。



ここまでは、小学6年生で学ぶ「速さ」の計算です。

では、このタイムラグが、どのような影響を及ぼすのか、

高校1年生で学ぶ「物体の運動」の計算をしてみましょう!



火星の重力は地球の重力の0.38倍なので、火星での重力加速度も地球での0.38倍です。

地球での重力加速度は9.80665(m/s2)なので、火星での重力加速度は

9.80665×0.38 = 3.726527(m/s2)ということになります。

ということは、もし、火星の重力圏で物体を自由落下させると、522.361373 秒間で

(1/2)×(3.726527)×(522.361373)2 = 508412.6946(m)も

落下することになります。・・・500(km)を超えています。

つまり、火星の上空500(km)からの映像が探査機から送られてきて、

それに対する指示を地球から送信しても間に合わず、探査機が火星表面にぶつかることになります。

ぶつかるときの速さは、3.726527×522.361373 = 1946.59376(m/s)です。

1秒間に1946.59376(m)ということは、1時間 = 3600秒間では

1946.59376×3600 = 7007737.536(m)= 7007.737536(km)。

時速7007.737536(km)という、とんでもない速さで火星表面にぶつかることになります。



もちろん、これは空気抵抗を考えていないので、実際には、落下距離も短く、落下速度も小さくなります。

しかし、火星の大気は地球よりも薄い(火星の表面大気圧は、地球の0.006倍)ので、

火星の上空で受ける空気抵抗は、地球の上空で受ける空気抵抗よりもずっと小さいでしょう。

したがって、落下距離や落下速度の減少は、想像するほどまでは起こりません。

地球側で私たちが知らない間に、相当な距離だけ探査機は落下するでしょうし、

もし、火星表面にぶつかっていたら、落下速度が大きい分、探査機が大きく損傷してしまうことでしょう。

地球からの遠隔操作で探査機を操縦するのは難しいのです。



ここでは、地球や火星の軌道を、楕円ではなく円としました。

また、軌道面も一致しているものと仮定しました。

その他、計算を簡単にするために、いろいろなことを仮定してきましたが、

それらを現実的な状況に置き換えたとき、さて、どうなるのでしょうか?


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