星までの距離(HR図)@

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【HR図】


連載 宇宙論(#06)】にて、近くにある星までの距離を「年周視差」を利用して測る方法を述べました。

しかし、年周視差は、近くの星ですら僅かなものなので、

遠くの星になると、年周視差を観測することができません。

そのような場合には、どのようにして星までの距離を測れば良いのでしょうか?



「ヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)」を用いて求めれば良いのです。HR図は、

デンマークの天文学者アイナー・ヘルツシュプルング(1873−1967)と

アメリカの天文学者ヘンリー・ラッセル(1877−1957)によって、1910年に作成されました。

縦軸に「絶対等級」、横軸に「スペクトル型」をとった図なので、

まず、「絶対等級」と「スペクトル型」について理解しないといけません。



【絶対等級】


@近い恒星について、その明るさを測定します。

Aその明るさから“見かけの等級”を計算します。

 紀元前120年頃、古代ギリシャの天文学者ヒッパルコスは、約1000個の恒星の明るさを観測し、

 最も明るく見える約20個の恒星を1等星、次に明るく見える恒星を2等星、・・・とランク付けし、

 肉眼でかろうじて見える恒星を6等星として分類しました。

 時は経ち、望遠鏡による観測技術が発達した19世紀。

 イギリスの天文学者ノーマン・ポグソン(1829−1891)は、恒星の明るさを測定し、

 1等星の平均の明るさ(L1)が6等星の平均の明るさ(L6)の100倍であり、

 1等級の差が等比数列になっていることを発見しました。

 

 これらより、

 

 となります。ポグソンは、これらの結果を「見かけの等級」としてまとめました(1856年)。

 例えば、恒星A(明るさ La、見かけの等級 ma)と恒星B(明るさ Lb、見かけの等級 mb)があるとき、

 恒星Aが恒星Bに比べて何倍明るいかは次式で表されます。

 

B近い恒星に対して、年周視差の観測により、その恒星までの距離を求めます。

 恒星までの距離は様々だから、見かけの等級は同じであっても、

 実際の放射エネルギー量が同じであるとは限りません。

 (見かけの等級は放射エネルギー量に比例し、距離の2乗に反比例します。)

 よって、一定の距離にその恒星を置いたと仮定したときの明るさを比較する必要があります。

 恒星を年周視差0.1秒角(10パーセク)の距離に置いたときの明るさを「絶対等級」と言います。

 (「パーセク」は、距離の単位。年周視差が1秒角になる距離が1パーセクである。)

 ある恒星の地球からの距離が d(パーセク)、明るさが l、見かけの等級が m とします。

 この恒星を、地球から10パーセクの距離に置いたときの明るさを L 、絶対等級を M とすると、

 

 ここで k は比例定数です。この k を消去すると、

 

 一方、Aより

 

 ですから、

 

 両辺の対数をとると、

 

 となります。よって、見かけの等級 m と、その距離 d が分かれば、絶対等級を求めることができます。

 このようにして求められた絶対等級が、HR図の縦軸にプロットされています。



・・・話が長くなったので、「スペクトル型」は、次回にしましょう!


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