星までの距離(天文単位)

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【金星の太陽面通過】


連載 宇宙論(#04)】にて、ハーシェルは、

星々が、一様に分布しているのではなく、集団ごとにまとまっていることを発見したものの、

それらの星雲までの距離を測る方法を知らなかったので、

宇宙全体の構造を具体的に論じるまでには至らなかったことを述べました。

では、星までの距離の測り方を考えよう!・・・ということを受けての今回。

まずは、星までの距離測定の基準となる「天文単位(地球から太陽までの距離)」についてです。



太陽までの距離を知ろうという試みは古代ギリシャ時代から行われていましたが、

現在にも通じる「金星の太陽面通過を利用する方法」が考案されたのは1716年のことでした。

「ハレー彗星」に名を残す、エドモンド・ハレー(1656−1742)によってです。



金星は、公転軌道が地球よりも内側にあるので、

地球から太陽を見たときに、金星が太陽面を横切って見えることがあります。

地球と金星の会合周期は583.9日なので、

少なくとも2年に1度は金星の太陽面通過が起こると思われがちですが、

金星の公転面が地球の公転面に対して傾いているので、滅多に起こりません。



ヨハネス・ケプラー(1571−1630)は、1631年12月6日に起こると予報しましたが、

残念ながら予報が数時間すれていたため、ヨーロッパでは観測できない時間に起こりました。

金星の太陽面通過が初めて観察されたのは1639年のことで、

イギリスの天文学者エレミア・ホロックス(1618−1641)によってでした。



その後、予報の精度が向上し、金星が太陽面を通過する時期について、パターンが分かってきました。

  間隔     観測    間隔     観測    間隔     観測    間隔     観測

105年  1631年    8年  1639年  122年  1761年    8年  1769年

105年  1874年    8年  1882年  122年  2004年    8年  2012年

105年  2117年    8年  2125年  122年  2247年    8年  2255年



1716年にハレーが金星の太陽面通過を利用して天文単位を求める方法を提案した影響もあったのでしょうか、

1761年と1769年のときには、ヨーロッパを中心として国を越えた国際的な観測事業が行われました。

この観測プロジェクトは、科学における最初の国際共同プロジェクトと評されています。



【天文単位の算出方法(第1段階:太陽から金星までの距離と金星から地球までの距離の比を求める)】


では、金星の太陽面通過を利用して天文単位を算出する具体的な方法を見ていきましょう!



ケプラーの第3法則によると、公転軌道半径aの3乗は公転周期Tの2乗に比例します。

第3惑星である地球と、第2惑星である金星の公転軌道半径と公転周期を

それぞれ a3、T3、a2、T2 とする(a3 が天文単位である)と、



となるので、(金星から地球までの距離)の(天文単位)に対する比は



となります。



まず、T3 は地球の公転周期であり、これは1恒星年のことです。

つまり、同じ恒星が約1年後に南中するまでの期間のことで、理科年表によると「365.25636日」です。

次に、T2 は金星の公転周期ですが、これは観測するのが難しいです。

そこで、地球と金星の会合周期S「583.9日」を利用します。

これらの値を用いると、



となります。・・・詳しくは授業にて♪



以上のことから、

(太陽から金星までの距離):(金星から地球までの距離)= 0.7234:0.2766

となります。



【天文単位の算出方法(第2段階:太陽に投影された金星の像の距離を求める)】


金星の太陽面通過を、地球上の2地点で同時に観測すると、

金星を見る角度が異なるので、太陽に対する金星の位置に違い(ズレ)が生じます。

このズレがどれくらいの距離になるのかを計算しましょう!



上の図において、金星から左右に広がる2つの三角形は相似であり、相似比は「 0.7234:0.2766 」です。

したがって、地球上に2つある観測地点間の距離をdとすると、太陽に投影されたズレの距離Dは



として求まります。



【天文単位の算出方法(第3段階:太陽の半径を求める)】


今度は、望遠鏡に映っている太陽と金星の像を使います。

像における金星のズレの長さをx、太陽の半径をyとすると、実際の太陽の半径Rは



として求めることができます。



【天文単位の算出方法(第4段階:いよいよ天文単位が求まります!)】


金星が太陽面を通過するのにかかる時間をt秒とすると、

太陽の視直径θは



となるので、視半径は



です。したがって、天文単位を「1AU」とすると、



となり、観測2地点間の距離(d)、像における金星のズレ(x)と太陽の半径(y)、

それと、金星が太陽面を通過するのにかかる時間(t)が分かれば、天文単位を求めることができます。

・・・次回へ続く。


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