小惑星探査
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【彗星からグリシン検出】 2016年5月30日、ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機「ロゼッタ」が、 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星で、アミノ酸の1種グリシンを検出しました。 さらに、DNAや細胞膜の重要な構成要素であるリンも検出した、とのこと。 このニュースは、何を意味するのでしょうか? オパーリンの「化学進化説」では、無機物から、生体に必要な有機物が作られるのでした。 その化学反応が地球内で起これば、 生成産物である有機物から、そのまま生命の誕生が地球上で起こったことも考えられるわけです。 もう1つの発想として、生体に必要な有機物が地球外からもたらされたのでは? あるいは、もっと極端に、地球外から生命体がやってきたのでは? ・・・彗星からグリシンを検出したニュースは、この可能性を伺わせるものです。 【星間分子雲】 宇宙空間には、希薄な星間ガスが存在します。 その中でも濃い部分は「星間分子雲」と呼ばれ、その構成主体は分子です。 星間ガス中に、このような濃い部分が存在することは、 1970年前後に、電波望遠鏡による観測で明らかになっていました。 日本の国立天文台を中心とするグループも、野辺山にある直径45mの大型電波望遠鏡を用いて、 これまでに17種類の星間分子を発見しています。 観測感度の向上に伴い、星間分子雲中の有機物質のみならず、彗星の有機物質の検出も可能となりました。 1999年に打ち上げられ、約50億kmの旅をして、2006年に帰還した NASAの宇宙探査機「スターダスト」は、 ヴィルト第2彗星に接近して、彗星から噴き出す物質を捉え、地球に持ち帰りました。 彗星から持ち帰った物質を分析したところ、アミノ酸の1種であるグリシンが含まれていました。 彗星にグリシンがあるということは、 星間分子雲中にも、グリシンや他のアミノ酸が存在する可能性を示唆します。 【小惑星探査】 「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」の研究機関の1つで、 日本の宇宙開発のうち、科学分野を担当する「宇宙科学研究所(ISAS)」は、 2003年に小惑星探査機「はやぶさ」を打ち上げました。 2005年に小惑星「イトカワ」に到達し、その表面の観察、および、サンプル採集を試みた後、 2010年に帰還しました。 地球重力圏外にある天体の固体表面に着陸してのサンプルリターンは、世界初の偉業です。 なぜ、小惑星が注目されているのでしょうか? 私たちが存在する地球は、より微小な天体どうしが衝突を繰り返しながら大きく成長してきた惑星ですが、 火星の軌道と木星の軌道の間に存在する微小天体は、木星の強い重力により、衝突頻度が少なく、 最終段階である惑星にまで成りきれず、小惑星として存在するに留まりました。 したがって、原始の太陽系の名残があるのでは?・・・と考えられているのです。 【はやぶさ2】 現在、軌道が判明している小惑星は、約46万個あります。 そのうち、スペクトル型が判明しているのは、約3000個です。 スペクトル型には 「C型(主成分が炭素系)」「S型(主成分がケイ素系)」「M型(主成分が金属系)」 の3つがあります。 小惑星「イトカワ」は「S型」であり、小惑星帯のうち、最も太陽に近い側に位置していました。 2014年12月3日、「はやぶさ2」が打ち上げられました。 “はやぶさの第2弾”は、小惑星「リュウグウ」からのサンプルリターンを目標にしました。 「リュウグウ」は、炭素を多く含む「C型」で、有機物を有する可能性が考えられます。 地球近傍に存在する小惑星に有機物が含まれる・・・となると、 これが隕石として地球に落下し、生命の起源に寄与したという仮説が成立することになります。 スペクトル型が判明している小惑星3000個のうち、C型は75%なので2250個。 このうち、自転速度が速すぎると、着陸できないので、自転周期が6時間以上のものを探すと、 唯一「リュウグウ」が対象となりました。 2018年9月21日に「リュウグウ」へ着離し、サンプルを採集した後、 2020年12月6日に地球へ帰還しました。 サンプルからは、数十種類のアミノ酸、および、有機物が含まれる炭酸水が発見されました。 【宇宙の研究】 「生命の起源」を研究することに、ロマンは感じますが、 「それを研究して、どうなる?」と実利を問われると、答えは難しくなりますね。 「生命の起源」が実利に結び付くのは、まだまだ先の話でしょうが、 資源・エネルギー問題をはじめ、地球上で生じている様々な問題を解決するための宇宙開発には、 直接の実利が伴います。 短絡的には、そういった実利を伴った宇宙の研究を進めていく傍ら、 “副業”として、「生命の起源」を考える・・・というスタンスもあるでしょうか。 「生物の分類」に戻る |
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