化学進化
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「生命の起源」に関する研究は、しばしば“トンネル掘り”に例えられます。 山のこちら側と向こう側から同時に掘り進めていって、見事に貫通させることができれば成功です。 現存するゲノム情報を用いて過去にさかのぼっていき、全生物の共通祖先を推定してみよう! ・・・という方式は、こちら側からトンネルを掘り進めていくことに相当します。 → こちら では、向こう側から掘り進めてくる方式では、どのようなことをするのでしょうか? 【オパーリンの化学進化説】 ソ連(現ロシア)の化学者アレクサンドル・オパーリン(1894−1980)は、 「生命の起源」という小冊子を1924年に出版しました。 その中で、 「生命は、原子的な簡単な有機物質から次第に進化し、より複雑なものになり、その結果、発生した。」 と述べています。 すなわち、彼は、 @最初は、無機物からから、簡単な有機物ができた A簡単な有機物から、生物の体をつくっているような複雑な有機物ができた B簡単な有機物や複雑な有機物が集まってコロイドをつくり、それが長い期間に変化・発展し、 生命の誕生に至った と考えたのです。 【ミラーの実験】 1953年には、オパーリンの仮説を支持する実験結果が出ました。 アメリカの化学者スタンリー・ミラー(1930−2007)と、 その指導教官であったハロルド・ユーリー(1893−1981)が、 無機物から有機物を合成することに成功したのです。 当時、原始地球の大気は、メタン・アンモニア・水素・水蒸気からなると考えられていました。 これらは、宇宙に豊富に存在する重元素である炭素・窒素・酸素が、 宇宙で最も多い元素である水素と反応して、完全に還元された化合物です。 ![]() ユーリーとミラーは、これら4種類の混合気体を、水が入ったフラスコ内に入れ、 雷をイメージした火花放電を行いました。 放電エネルギーにより、フラスコ内の化合物が反応し、反応生成物はフラスコの下部で冷却され、 水滴、すなわち、雨となって、フラスコ底の海に戻ります。 こうして、反応生成物が徐々に海の中に溜まっていきます。 約1週間の放電を続けた結果、フラスコの下部に溜まった物質中に、 グリシンやアラニンなどのアミノ酸をはじめとした、生体関連物質が存在することを見出したのです。 【“トンネル掘り”】 グリシンやアラニンなどのアミノ酸から、硫黄細菌などの化学合成細菌が誕生すると、 両方向から掘り進めたトンネルがつながったことになりますね。 「生物の分類」に戻る |
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