お御籤、つれづれ考  
第一大吉のお御籤

 ちょっと寄り道します。
 浅草観音様に寄った。長年恒例にしていた正月二日の初詣は混雑するので避けて、少々遅くなったが新年のお参りをした。
 お御籤を引いたら、一番札で大吉だった。十数年前、連続して三回、凶を引いたことがある。一度で止めておけば良かったのだが、吉が出るまで引いてみようと思った。凶の札三枚を手に持って、滅入ってしまい、後は引くのを諦めた。この年、定年後も継続して努めていた子会社の役員を退任した。また、東京で生まれ育った愛娘が、遠く沖縄に嫁いでしまった。大きな転機を迎えた年であったことは確かだ。特段にお御籤の吉凶を信じているわけではないが、やはり大吉が出ると、今年は何となく良いことがありそうだと、頬が緩むのだ。
 お御籤札の裏面に、「浅草寺観音籤」の由来と心得として、「観音籤には一番から百番まであり、吉凶判断には凶、吉、末吉、半吉、小吉、末小吉、大吉の7種類があります。」と書かれている。大吉があるのだから、大凶があっても良さそうなのだが、それが無い。あくまで噂だが、浅草寺のお御籤には凶が多いという。30%位の確率らしい。縁起の良い順番に並べるとどうなるのか。大吉、中吉、小吉、吉、半吉、末吉、末小吉、凶、次に大凶となるのが一般的だそうだ。浅草寺の由来に書かれた順番とは少し違う。寺院によって、それぞれ異なるのだろう。
 浅草寺のお御籤を見ると、「おみくじの習俗は中国より伝来したもので、比叡山において日本独自の吉凶を占う百番のお籤となりました」と、書いてある。そう云われれば、香港や台湾の寺院を紹介したテレビ番組で、お御籤に似た習俗を見たことがある。中国古代においては祭政に関わる重要事項の決定や、後継者を選ぶときなどには、占卦で決めることがある。お御籤にも共通した起源があったことは否めない。
 私は、西国33霊場、坂東33霊場、秩父34霊場の百観音を廻り終えている。気が向くと行く先々の寺院でお御籤を引いていた。いろいろな趣向を凝らしたお御籤があり、達磨の中に占籤を入れた達磨籤を時々見かけた。お御籤の吉凶を特別に信じているわけではないが、大吉を引くと気持ちが和む。大吉だけは信じることにしている。
 さいたま市大宮にある氷川神社のお御籤には、「平」というのがあるそうだ。幾つかの神社にもあるようだが、私はお目にかかったことはない。手元にある東洋易学学会総本部編纂の「沖縄琉球暦」に、中段の説明として、「昔の暦の八段目か九段目に「十二直」という暦注が記されている。この「十二直」は、移転、建築、増改築、造作、治療、就職、新規商売、旅行、井戸掘りなど、日常生活のありとあらゆる吉凶判断に用いられてきた。特に江戸時代は「かな暦」の中段として、今日の六曜より、こちらの方が重要視されたものである」と、書かれている。六曜とは、先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口の6種のことである。
 この十二直の中に「平」がある。建(たつ)、除(のぞく)、満(みつ)、平(たいら)、定(さだん)、執(しつ)、破(やぶる)、危(あやぶ)、成(なる)、収(おさん)、開(ひらく)、閉(とづ)の12種なので干支とも繋がりがありそうだ。「平」の欄には「物事の平等に成立する日。地固め、柱立て、種まき、旅行、婚姻その他すべて大吉。池、溝、穴を掘るのはやや凶」と書かれている。
 お御籤の「平」は、古くから明治あたりまで重用された暦の「十二直」が応用されているもので、今の大吉か中吉あたると考えて良いのではないか。
 今年の運試しに引いた浅草観音籤、第一番大吉には、「万事の行動をひかえ目に。油断すると思わぬ災いが起こることでしょう。」と、良いことばかりを宣託した後に、ちゃんと歯止めの文章が書いてあった。 
 (2012年1月25日 記)
 
 


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