第6番不動院(ふどういん)

     山号 五大山(ごだいさん)
     住所 港区六本木3-15-4
     参詣 2011年6月15日
 
不動尊の像

 住宅街の坂を上ったり下ったりを繰り返しながら、六本木通りに出た。六本木交差点から外苑東通りを東京タワー方面に向い、住居表示を頼りに左折したら、すぐに突き当たってしまった。小さな公園があった。公園の奥に下り坂になった細い道が続いていて、左下に墓地が広がっている。ここでも先入観が働き、墓地に接してお寺があるのだろうと思い、墓地を取り囲むようにして続いている路地を歩いた。なれど、それらしき寺院が見当たらない。
 墓地を一回りして先ほどの小さな公園まで戻ってきた。どこかで入口を見落としたのかも分らないと思い、もう一度同じ道を辿ったのだが、無駄だった。犬の散歩に付き合っていた男性が、怪訝な表情で私を見ていた。
 小さな公園に続いた下り坂の途中から、墓地とは反対に向って路地が延びていた。その先に五大山不動院はあった。茶系の濃淡でコントラストされた真新しいビルである。船の舵に似ている輪宝紋が燦然と輝いていた。建物の横から眺めると、マンション寺院だということが、はっきりと分る。玄関の左側に石造りの不動尊があり、そこだけは不動院の伝統が息づいている。
 不動院は江戸時代に五色不動のうち、「六軒町の目黄不動」として信仰を集めたという。しかし、文献によると、目黄不動は江戸川区平井の最勝寺、台東区三ノ輪の永久寺を指すことが一般的のようだ。
 五色不動とは、五行思想の五色、つまり、白、黒、赤、青、黄の色にまつわる縁起を持つ不動尊を指し、目黒不動、目白不動、目赤不動、目青不動、目黄不動の総称である。目黒不動は、目黒区下目黒の瀧泉寺であり、目白不動は豊島区高田の金乗院である。目赤不動は文京区本駒込の南谷寺で、目青不動は教学院と言い、世田谷区太子堂にある。目黒と目白は、地名にまでなっている。
 万物は、木、火、土、金、水、の五元素から成り立っているというのが五行思想で、古代中国の自然哲学の思想である。凡人には縁遠い学問であり、森羅万象、この世に起きる全ての事象は、五行思想に帰結していくのだ、とだけ理解しておく。
 辺りには人影は無い。般若心経を声高に唱え、先ほど来た道と反対方向に向って歩いたら、直ぐに外苑東通りに出た。入ってきたときは、一本手前の道に迷い込んだのだ。
 ここから一番近い地下鉄の駅はどこかと、ヤクルトのおばちゃんに尋ねたら、六本木1丁目駅までの道順を親切に教えてくれた。ふっと、四国を歩いたときの感覚が蘇った。  (2011年9月4日 記)

 

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