第64番加納院(かのういん)

      山号 長谷山(はせざん)
      住所 台東区谷中5-8-5
      参詣 2012年2月27日
 
朱塗りの山門が映える

 
 もと来た方向に少し後戻りをすると、右に入る小路がある。シックな色調で綺麗に舗装されている。小路の右側には観音寺の築地壁が続いていて、寺町の雰囲気を伝えてくれる。平成4年度に台東区から「まちかど賞」が贈られ、谷中寺町の風情を伝えるシンボルとなっている。塀の長さは凡そ40m位で、高さは2m以上はある。
 築地塀の切れた先に加納院の朱塗りの山門があった。周辺の地味な佇まいの中で、この一角だけが華やいで見える。ただ、頂けないのは側面の横木に住居表示板が取り付けられていた。小さな表示板だけど折角の山門に取り付けるなんて、ちょっと無粋ではないのかなぁ。民家の軒下ではないんだから・・・。山門の価値を落としてしまう。境内の樹木は手入れが行き届いて、気持ちが良い。静かだ。
 縁起によると周辺のお寺と同じように、慶長16年(1611)神田北寺町に創建されて、他の寺院とともに慶安元年(1648)、谷中清水坂に移り、のち延宝8年(1680)に、現在地に移転してきたそうだ。本尊は阿弥陀如来で、台東区の文化財として登録されている。拝顔することは出来なかったが、寄木造で漆箔の玉眼、通肩定印(つうけんじょういん)という姿の坐像であるとのこと。両肩を衣で覆い、両手の指を阿弥陀定印に結んだお姿である。私の知る限りではオーソドックスな阿弥陀如来像だ。
 仏像は手指の形で、自らの意志を表現している。その手の形が印相である。掌を上に向けて、お臍の前で重ね、両人差し指を合わせて立て、その指先に親指を載せて結ぶ印相が、阿弥陀定印である。阿弥陀如来が瞑想しているときの姿を現したものでだろう。
 馴染のある印には、大日如来だけが結ぶ智拳印がある。胸の前で左の人差し指を立て、その指を右手で握る。子供の頃に見た忍者映画や、漫画でよく見たシーンだが、あの忍者が胸の前で結び、どろどろ〜ん、と消えていく、あの印結びと似ている。智拳印は、最高の覚りを意味するものだそうだ。
 他に、よく見かけるのが来迎印である。右手は掌を外に向けて胸の前に上げ、左手は掌を外に向けて下に垂らすようにする。両手とも親指と人差し指をくっつける印相である。手が左右逆のこともあるが、この印相も阿弥陀如来像が結んでいる。印相を覚えておくと、ある程度は仏様の見分けが付く。友人と寺院を訪ねたときに、ほんの少しだけ、もの知りになれるのだ。
 誰も居ない静かな境内で声を張り上げて般若心経を唱えた。今日のお遍路は、これで終わりにする。
(2012年4月11日 記)
 


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