長い長い冬が過ぎ、待ち遠しかった桜の便りが聞こえると、居ても立ってもたまらず、
近所の桜の木を眺める毎日が続きます。
桜が満開になるのを待ち兼ねて散水を始めると、紅葉の美しさそのままの巻柏たちが
一斉に目を覚まし、愛しい巻柏たちは私に微笑みかけてきます。私の一番嬉しい時です。
「幸せだな−、僕は君(イワヒバ)と居る時が一番幸せなんだ、死んでも君を放さないよ。」
(いい年こいて恥ずかし気もなく、ぬけぬけと、よく言うよ)
その花に目をやると、茶色の花びらを広げ蘇生しようと頑張っていました。
若葉の季節になり、他の巻柏たちは甦り、秋の名残も消えて新しい斑色を現し始めた
のとは裏腹に、焦げ茶色から黒へと変色して、とうとう力尽きて朽ち果ててしまいました、
あれは紛れもなく巻柏の花でした。
ほかの巻柏たちが、金襴の衣装を身にまとい、その美しさを競っても、あの華には
及ばない、あれは千年に一度しか咲かない幻の花だったのです。
え、うちの「峯乃雪」もそうなったって、
そんなこと言わないの、せっかくのムードが壊れるでしょう。
如何なる品種でも長年愛培していると、「え、これってこんなに綺麗になるの」と思う
答えが帰ってくるのです、その奥深さに魅せられて。
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