懐雲庵 ― 國重游のホームページ 本文へジャンプ
創作活動


 もともとは作曲家を志していましたが、高校時代、福永武彦の小説と接し、小説を書きはじめました。大学時代にはフォークナーやヌーヴォー・ロマンの影響下に実験小説を発表。
 また「小説とはroman (長篇)の謂いである」という中村真一郎さんの薫陶を受けました。

 詩作は2003年より開始し、現在にいたっています。日本の近・現代詩よりは、リルケやドイツの自然詩、パウル・ツェランやザラ・キルシュ、またイヴ・ボヌフォワやアンドレ・デ=ブシェ、ルイ=ルネ・デ・フォレなどフランス現代詩に親しみをおぼえます。

 小説 「焼尽」 (『VIKING』第655号、2005年7月)
 詩集 『静物/連祷―交響的散文』 (七月堂、2003年)
     『彼方への閃光』 (書肆山田、2006年)
     『過ぎていく鳥のまなざし―叙景詩』 (黒菅工房、2008年)

 詩、エッセイ、翻訳は、随時『ムーンドロップ』、『紙子』誌上などに随時発表しています。



  夜が時間を追い越していく
  地軸が傾き 天空へと沈んでいく
  闇は空から投網を投げる


  あなたの視線が
  旋律となって虚空に拡がる
  時の透明な輪郭を示して


  同心円を描いて明けていく朝
  あちこちで花が爆ぜる
  空が感光して蒼くなる


  晴れた日には
  海が空へと落ちていく
  眩暈を誘うように天地の青が反転する


  首を絞めつけられて屹立する視線
  垂直に落下する
  闇を凝視して


  割れた果実のみずみずしさ
  果肉の匂い
  体に鎮もる微熱

  ――以上 『過ぎていく鳥のまなざし』より (一部改作)


  雲の記憶
  空を渡り
  世界に飛散する沈黙


  引き裂かれたあなたの息
  偶然性にゆだねられて
  彷徨するあなたの声

  石が光に変容するまで


  あなたの面影をとどめた
  石の顔
  雪解け水に洗われ
  光となって空に昇っていく

     *

  空と大地の境界で雪を待つ
  風に雪が混じり
  石の丸みだけを残して
  大地が一面灰に覆われるまで

  雪の白
  灰の白
  微かな光を反射して


  雪のなかに浸透する光
  急速に回転しながら
  風の通り道を過ぎていく

  降り積もった雪のうえに さらに雪
  そして
  突如 世界に光が横溢する
  空の彼方から
  一つの約束のように
  ――そして消えていく


  雪がやんだ後の明るさ
  のなかで
  蒸発していく光
  空の青に吸い込まれていく――
  不在者の祈りのように
  澄んだ歌声のように

  ――以上 『彼方への閃光』より


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書肆山田