病院だより

当院では、開院当初より毎月病院だよりを発行しています。ここでは、直近数回分の病院だよりの主要な記事を掲載いたします。今月号に関しては院内で配布しています。バックナンバーをご覧になりたい方は、スタッフまでお気軽にお声掛けください。

168号(2023年4月発行)国家資格「愛玩動物看護師」の誕生!

動物病院には主に2職種の人間が働いています。ひとつ目は獣医師。獣医学部のある大学で6年間学び、獣医師の国家試験で合格しなければいけません。当院では院長と牧獣医師の二人ですね。ふたつ目は、動物看護師です。今までは、各専門学校や団体が認定資格試験を行っていましたが、国家資格ではなかったため、資格を持っていなくても「看護師」と名乗って仕事をすることも可能でした。

しかし動物医療も様々進化をとげる中、しっかりとした知識・技術を兼ね備えた「動物看護師」の地位を確立すべく、令和元年6月に愛玩動物看護師法が制定され、新たな国家資格「愛玩動物看護師」が誕生しました。今後動物病院で看護師として働くためには、指定された大学や専門学校などを卒業し国家試験に合格することが必要となります。今年の2月には第1回目の国家試験が実施され、当院から受験した内山・山本・依田・山﨑4名全員合格しました!

今回の法律の制定により、獣医師の指示のもとに行う採血、カテーテル採尿、マイクロチップの挿入も行うことができるようになりました。今後、当院の看護師さんたちは、勉強を続けさらに進化していきます。ちょっとした不安でも気軽に相談してもらえる存在であると同時に、しっかりした知識・技術をもとに適切なアドバイスができる存在になれればと思います。

167号(2023年3月発行)鍼灸・漢方薬治療って実際どんな感じ?

今回は、漢方薬治療についてご紹介したいと思います。当院では動物用の錠剤の漢方薬「Qanpow」を主に使っています。これは「日本ペット中医学研究会」に所属している病院でのみ購入できるものになります。錠剤ですので苦みなどが少なく、また全部で15種類ありますので、体質・体調に応じて細かく使い分けることができます。錠剤でも投薬が難しいケースでは、塗る漢方「神気」も処方しています。こちらは生薬の成分を抽出した100%植物由来の漢方薬草製油です。人用・動物用を含めて20種類以上のオイルがあり、それを組み合わせて調合することで、その子だけの「塗る漢方」を処方することができます。漢方薬治療はどんな効果が出ているかというと↓↓↓

尿モレ(Mちゃん15才)
2週間の漢方内服で効果を実感。さらに2週間の内服で尿モレはみられなくなり、投薬終了。

脱毛(Rちゃん8才)
皮膚炎がありステロイド剤などで痒みはコントロールできていたが、大腿部の脱毛があり漢方薬を併用。飲み始めて1ヶ月目にはステロイドの減薬ができ、2ヶ月くらいで発毛し始めた。4ヶ月目には漢方薬を終了、その後脱毛なし。

特発性てんかん発作(Kちゃん10才
痙攣を抑える薬をいくつも試したが発作回数が増え、漢方薬を開始。月に2、3回あった発作が、漢方薬を始めてからピタリとおさまった。1年たった今も痙攣は一度も起こっておらず、漢方薬を継続しながら西洋薬を減薬中。

他にも分離不安症、尿石症、おなかが弱い、歩きがヨタヨタしている、などの子でも漢方薬治療は効果が出ています。いろんな治療をしてみたけれど良くならない、なるべく薬に頼らない生活をしたい、自分が漢方薬で効果を実感したことがあるのでうちの子にも試したい、などの理由で漢方薬治療を始める方も多くいます。興味がある方は、どうぞご相談ください。
中獣医鍼灸師・中医漢方獣医師 稲葉牧

166号(2023年2月発行)かわいい!だけで選ばない

短頭種の犬や折れ耳の猫、新たな飼育禁止へ オランダ
【AFP=時事】オランダのピート・アデマ(Piet Adema)農相は20日、短頭種の犬や折れ耳の猫など、見た目はかわいいが健康に「悲惨な」問題を抱える「デザイナーブリード」と呼ばれるペットの新たな飼育や広告・ソーシャルメディアでの写真掲載を禁止する方針を明らかにした。 アデマ氏は「『かわいい』と思う気持ちが、罪のない動物を悲惨な目に遭わせている」「だからこそ、オランダはペットが見た目のせいで苦しまずに済む未来に向けて、大きな一歩を踏み出していく」と述べた。   
                     
先月1月21日に配信されたニュースです。オランダでは短頭種の健康上の問題についての意識が高く、すでに2年前には「安静時に呼吸音がしない・鼻孔(鼻の孔)が開いている・鼻の上のしわが目に触れない、などの6項目すべてを満たさなければ、繁殖に用いてはならない」と法律で定めています。日本でも短頭種は非常に人気があり、バグやフレンチブルなどの来院は近年とても多くなっている印象があります。しかし上記の記事にもあるように、短頭種は呼吸器などに問題があることが多く、「健康に悲惨な問題を抱える」子も多く見られます。
特に呼吸器の問題に関しては深刻なケースも多々あり、病院での手術や預かり時には、他の犬種以上に神経を使います。夏の暑い時期には、少し運動しただけでもハアハアとパンティングすることで呼吸困難、熱中症になってしまう子もいます。ですから夏期を中心に、短頭種の飛行機への預かりをしていない航空会社も多いのです。短頭種を飼う場合にはこれらの先天的な問題を知った上で、おうちでも室内の温度管理には他の子以上に注意したり、興奮させないようしつけたりすることも必要不可欠です。
鼻ぺちゃの子犬はかわいい!でも生まれつき障害がある子を、私たちが見た目のかわいさで選んでしまっていることが問題の根底なのだと思います。日本では超小型犬も人気があり、2kgにもならないチワワ、5㎏しかない豆柴など、近年わんちゃんの小型化はさらに加速していて、それに伴う弊害(膝蓋骨脱臼や心疾患など)も問題視されています。オランダのように飼育を禁じられてしまう前に、まずは私たち飼い主が意識を変えなければいけません。「かわいい♥」だけではなく、どんな犬種でも健康な体で生まれ、それぞれの人生(犬生?)を全うできるような社会でありたいですね。

165号(2023年1月発行)大国主(おおくにぬし)は獣医師だった??

2023年は卯年。「うさぎ」で一番有名なお話といえば「因幡の白兎」ではないでしょうか。『サメをだました仕返しに毛皮を剥がれた上に、海水で身体を洗って痛がる白兎に、大国主命(おおくにぬしのみこと)がガマの花の上に転がるように教え、傷が癒された』小学校の国語の教科書にも採用されている「因幡の白兎」は古事記に収録されている物語です。この神話の中で大国主命が白兎に行ったのは「皮膚再生治療」。これは獣医療としての日本最古の文献でもあり、大国主命は獣医師の始祖とも言われているのです。実際に、ガマの穂に含まれる花粉は「蒲黄(ホオウ)」と言って、止血、通経、利尿などの働きのある生薬として現在まで使われています。
話は変わりますが、当院院長は卯年生まれ。家では辰、寅、亥年生まれの妻娘たちに囲まれて日々過ごしています。同じ卯年生まれの方いらっしゃいましたら、ぜひ、勇気づけてあげてくださいね♪

164号(2022年12月発行)猫エイズは感染してても検査で陰性になるって本当?

山本看護師による ♪ちょこっとお勉強時間♪ 
~「猫エイズ」は感染してても検査で陰性になるって本当?~

先月号では、ネコちゃんの感染症の中で、発症すると完治が難しいもののひとつ、「猫白血病ウイルス感染症」をお勉強しました。今月は「猫免疫不全ウイルス感染症」についてです。
「猫免疫不全ウイルス感染症」は、一般に「猫エイズ」といわれますが、ネコちゃん同士でしか感染は成立せず、ヒトやイヌなどには感染しません。猫白血病ウイルスと同じく、感染しているネコちゃんとのケンカや交尾などの濃厚接触によって感染します。感染しても発症せずに一生を過ごせる子もいますが、発症した場合には発熱やリンパ節の腫れ、口内炎の悪化などがみられたり、免疫力が低下し健康な時にはほとんど症状が出ないような感染症にも感染しやすくなったります。
猫エイズに感染しているかは、検査キットを使い院内で10分程で調べることができますが、抗体検査となる為、実際には感染していても陰性の結果が出てしまう期間が存在します。抗体というのは、病原体に感染したとき、それに対抗するために体内で作られるのですが、作られるのに1~2ヵ月くらいかかります。ですから感染直後に検査をしても陰性という結果が出てしまうことがあるのです。なので、お外のネコちゃんを保護して新しく飼いはじめる場合には、厳密には保護してから1~2ヵ月後に猫エイズの検査をして陰性だったら大丈夫。お家のネコちゃんと同居させるのであればそのあと、というのが一番安心です。それまでの間、可能であれば、ネコちゃん同士が接触しないようにケージ越しに会わせたりしながら、住み分けられるといいですね

163号(2022年11月発行)自宅療養のススメ!!

当院では、手術や治療で入院が必要となった場合、なるべく入院日数を短くするように努力しています。動物の場合は、「病気について理解・納得し、治療したらよくなると信じて希望をもって入院する」ということは不可能で、「訳も分からず知らない人に捕まって、監禁されている」という心理状態だろうと想像されます。そのような心理状態での入院治療より、自宅療養のほうが絶対によいと思うのです。もちろん病気にもより、その子の状態にもよりますが、安心できる自宅で、大好きな家族のもとで療養生活を過ごすほうが、本人(本犬?本猫?)のやる気や元気が引き出され、治癒力がアップすると考えています。そんな当院の考えを証明してくれるような自宅療養の様子を報告してくれたJちゃんを今回はご紹介します。

Jちゃんは15歳の柴犬のおじいちゃん。前日まで元気に歩いていたのに、急にぐったりして歩けず呼吸も苦しい、という状況での来院でした。少し体の向きを変えるだけでも呼吸困難になるような状態で、検査の結果、重度の肺炎が認められ、入院治療をすることになりました。入院治療で肺炎は良化し、寝たきりの状態ではありましたが、ご飯も流動食を口の中に入れれば飲み込んでくれるようになったため、おうちでの受け入れ準備が整うのを待って、自宅で療養生活をスタートすることになりました。退院時はケージの中に寝たきり、横臥した状態でした。が!!数日後連絡をいただいたところ、退院翌日には立ち上がった!とのこと。入院中は立たせようとしても全く力が入らず、立つ気力を失っていたJちゃんだっだので、まさか~~と思っていたのですが、一週間後には元気に、と言ってもおじいちゃんなのでヨタヨタはしていますが、歩いている姿を見せてくれました

やっぱり自宅療養の力は素晴らしい!でもご家族に無理がかかりすぎては元も子もないので、自宅療養が大変な時は、一時入院や日帰りホテルなども利用していただけますので、遠慮なくご相談くださいね♪

162号(2022年10月発行)鍼灸・漢方薬治療って実際どんな感じ?

当院では西洋医学を中心に、漢方薬(動物用の錠剤・塗る漢方オイルなど)鍼灸治療などの中医学も合わせて行う「中西結合医療」を行っています。鍼治療というと「痛そう」イメージをお持ちの方が多いと思いますが、痛がる反応をみせずにやらせてくれる子がほとんどです。ここでは、実際に中医学的治療を行った子について、飼い主さんにご協力いただいたアンケートも一緒にご紹介したいと思います。

4歳の誕生日前に椎間板ヘルニアを発症し、外科手術を受けたRちゃん。手術から1ヶ月後、両後肢の麻痺が残り、歩けない状態での鍼治療スタートでした。初回刺鍼後から自ら立ち上がるそぶりを見せるなど、鍼に対する反応はよく、週1回約45分間、飼い主さんとは離れての施術。全8回の治療終了時には、しっかりと立てるようになり、左後肢は少し引きずることもありますが、4本足で歩けるようになりました。その後は月に1,2回のペースで鍼治療を続けています。先日は長野へドライブ&お散歩に出かけ、くたくたになるまで元気に走り回ってきたそうです♪

~Rちゃんの飼い主様アンケートより~
鍼治療に興味を持たれた理由は?
できることは何でもしたい!
鍼治療を始める前に不安はありましたか?
自分も鍼をしたことがあるのでそんなに抵抗はありませんでした。
鍼治療を始めて良い変化はみられましたか?
手術をして退院後に鍼治療をして立てたので、続けてあげたいと思いました。少しずつ良くなっているので、このまま続けてもっと回復したらいいなあと思います。


159号(2022年7月発行)ハーネスと首輪 どっちがいいの?

私が子供の頃、30年ほど前は、服を着ているわんちゃん・ネコちゃんなんてほとんど見ることはなく、キラキラしたかわいい首輪をしているだけでも、『このおうちはお金持ちなんだな~』なんて思ったものでした。『犬に服を着せるなんてかわいそう!』という考えが主流でもあったと思います。

今では暑さ・寒さ対策や、皮膚の弱い子が皮膚を守るためにと、わんちゃん・ネコちゃんに服を着せることへの抵抗感がなくなり、可愛いお洋服を着て来院される子も多くなりました。しかしわんちゃんやネコちゃんを飼い始めたとき、首輪を買おうかハーネスタイプにしようか、悩みませんでしたか?今回は、首輪とハーネス、それぞれの長所短所を考え、状況に応じて使い分けができるようにしてみましょう。

わんちゃんを飼い始めてワクチン接種が終わったらお散歩デビューとなりますが、お散歩というのは自由に好きなように歩かせればいいというものではありません。飼い主さんを見ながら、人と歩調を合わせて歩けるようにしつけていく必要があります。そのためには、飼い主さんの合図が伝わりやすい首輪+短めのリードが必須です。また首輪はハーネスに比べると、不意な行動をしたときに制御しやすいという利点もあります。しかし、イタグレやシェルティー、我が家のロックのような頭が小さくて首が太い犬種では、首輪が頭から抜けやすい、という欠点があります。また、強く引っ張ったときに首への負担になるというのも欠点の一つです。一方のハーネスは、肩や胸に力が分散されるため、体への負担は小さいというメリットがあります。しかし、飼い主さんの合図は伝わりにくいため、しつけには不向きです。

ここでひとつ、誤解していらっしゃる方が多いと思うのですが、『うちのこは引っ張りぐせがあって首が苦しそうなのでハーネスにしています』というケースです。しかしグイグイ引っ張って歩く子にハーネスでは、飼い主さんの合図はより伝わりにくくなり、わんちゃんの引っ張りを助長することになるのです。

でもゲホゲホせき込みながら首輪でお散歩するわけにもいきませんよね。そんな子には引っ張りを解消させるしつけグッズがあります。我が家のロックが使っているのはイージーウォークという商品です。ハーネスタイプですが、軽くリードを引くだけでその合図がわんちゃんに伝わり、引っ張りをやめさせながら安全にお散歩することができます。通販サイトなどでみてみると、他にも引っ張りぐせ解消ハーネスなどがたくさんありますので、調べてみると良いかと思います。

このように首輪、ハーネスの特徴を見てみると、しつけには首輪が必要!しつけができたら、首輪でもハーネスでもOK!首のヘルニアや気管虚脱など、首まわりの疾患がある子はハーネス、というのが正解です。しかし、病院などわんちゃんやネコちゃんが興奮してしまう可能性がある場所へのお出かけの場合は、普段はハーネスでお出かけの子も、ぜひ首輪をプラスして付けてほしいと思います。不意に逃げ出そうとしたり、興奮して咬みつこうとしたりした場合は、首輪の方が軽い力で動物を制御しやすいのです。安心して受診していただくためにも、ご来院の際は首輪を付けてきてくださるようお願いします。

158号(2022年6月発行)ひなを拾わないで!

暖かくなってきた今、身近な鳥たちが卵を産み育てる時期でもあります。
毎年この時期になると『道端にいたヒナを拾ってきてしまったけれど、どうしたらよいですか?』と相談を受けることがあります。
しかし、野鳥のヒナを保護して一時的にエサを与えることができたとしても、飛び方・エサの取り方・身の守り方など、今後生きていく手段を私達人間が教えてあげることはできません。
それは親鳥にしかできないことなのです。本当にヒナを助けたいと思ったら、ヒナには手を触れず、そっとその場を立ち去りましょう。
必ず近くに親鳥がいるはずです。
車や猫などの危険がある場合は、なるべく近くて安全な場所に移動させてあげましょう。

野鳥はペットではなく野生動物です。
いつも自分の力だけで生きている力強い動物です。その生きる力を親鳥から学ぶ機会を奪わないように、その子育てを見守ってあげましょう。


155号(2022年3月発行)今月の中医学的養生法 ~第8回 3月(弥生)~

本格的な春がやってきました。花が咲き始め、草木が芽吹き、虫も動き出し、鳥のさえずりもきこえてきて・・・。全ての生命が動き始める素晴らしい季節です。とはいえ、花粉症でお悩みの方は「春なんて大嫌い!」かもしれません。目鼻喉の不快感でイライラもMAX!!でもそのイライラは、気の滞り=気滞が原因かもしれません。

前回ご紹介したように、春は「木=肝」の季節。養生をしないと「肝」の不調が出やすいと言われています。「肝」は、全身の気の流れを調節する働きがあり、気は全身の生理活動を調節しているため、「肝」が傷つき気が滞ると、様々な悪影響が出てしまいます。特に「肝」が司る精神活動や免疫機能は大きな影響を受けます。

怒りや緊張、不快な思いなどのストレスは「肝」を傷つけます。すると「肝」に気が滞ってしまい、胸の辺りがつっかえるような違和感が生じます。またイライラしやすくなり、不安や不眠、ちょっとしたことで怒りの感情があらわれます。この気滞の状態が続くと、「肝」が燃えあがって、上半身、特に頭に突然に激しい症状がおこります。例えば、激しい頭痛、目の充血、耳鳴りなどです。

わんちゃんやネコちゃんが急に怒りっぽくなったり、触られるのを嫌がったり、涼しいところで一人になりたがったりするなど、イライラしている様子があったら要注意!イライラを鎮めるおススメのものは青いもの。食べ物でいえば、春菊、ほうれん草、小松菜、など、春の青野菜です。滋陰(体の水分を補う=火を消す!)作用のある鶏卵で、ゆでて刻んだ春の青野菜を卵とじにして、フードにトッピングするのはどうでしょうか。また、青々とした木々に囲まれた早朝のお散歩や森林浴もおススメです(花粉症の飼い主さんには無理しないでください・・・)。

イライラが「肝」を傷つけ、「肝」が傷つくとまたイライラする、そしてまた「肝」が傷ついて・・・こんなふうに「肝」を傷つける無限のループに陥ってしまう前に、これは「気滞」のせいなんだ、と思って、一度イライラをリセットしてあげましょう♪

154号(2022年2月発行)マイクロチップ装着の義務化について

マイクロチップの装着を義務づける改正動物愛護管理法が、今年6月に施行されることになりました。これから販売される子たちに対しての義務ですので、現在飼育されている子はその対象外ではありますが、その必要性や認知度は上昇していて、病院でマイクロチップの装着を依頼される件数は年々増えています。それでも「痛そう」「かわいそう」「保護されたときに住所とかが知られてしまうのでは?」など、まだまだ心配の声も聞かれます。今回はそんな不安を少しでも解消してもらえるよう、マイクロチップに関するQ&Aをご紹介します。

①マイクロチップとはどういうものですか?
マイクロチップは、直径2mm長さ12mm程度の円筒形で、外側に生体適合ガラスを使用した電子標識器具です。長期埋め込みでも、健康上の問題がないことが確認されています。

②マイクロチップを埋め込むのは麻酔が必要ですか。
いいえ。ワクチン接種よりは太い専用の針での注射が必要ですが、診察台の上で、看護師の保定で、皮膚の下に埋め込みます。当院の猫は、フードを食べているときに装着しましたが、気が付かずに終わってしまったくらいで、ほとんど痛みはないようです。

③マイクロチップにはどのような情報が記録されていますか。
マイクロチップには世界で唯一の15桁の数字(ISO規格の個体識別番号)が記録されています。この番号を専用のリーダー(読取り器)で読み取ります。リーダーは動物病院や愛護センターなどにあり、迷子の子などが保護された場合には必ず確認し、読み取った番号をデータベース管理団体へ届けます。保護した人やリーダーで読み取った人に、飼い主さんの住所などの情報が知られるという心配はありません。なおGPS機能はありませんので、迷子の子の位置情報を調べることはできません。

④マイクロチップはどんなときに役立ちますか。
犬や猫が迷子になったとき以外でも、地震や水害などの災害、盗難や事故などによって、飼い主と離ればなれになったときに、皮下に埋め込まれたマイクロチップをリーダーで読み取ることで、飼い主の元へ戻すことができます。首輪は脱走中に抜けてしまうこともありますが、マイクロチップは抜け落ちる心配がありません。

マイクロチップに関しては、環境省のHPで詳しく紹介されています。ぜひご確認ください。

153号(2022年1月発行)ロックの特技を披露します♪

ドッグランではわんちゃんの上に飛び乗ってしまい、小さいわんちゃん相手だとうまく遊べないロックなのですが、大きなわんちゃんの上は飛び越える!という技を披露するようになりました。見てください、この真剣な表情!まるでオリンピックのハードル競技を見ているようです♪でも、調子に乗ってぶっ飛びすぎて、ミラクルショットも撮れてしまいました。その後はもちろん着地失敗。おなかも泥んこになったロックでした。名も知らぬわんちゃん、遊んでくれてありがとうね!

151号(2021年11月発行)山本看護師による~ちょこっとお勉強時間~

毎年寒い時期になると「おしっこのトラブル」が多くなります。

・トイレに行く回数が多くなった
・おしっこの色が赤い、濁っている
・トイレに行くがおしっこの量が少ない

など、このようなおしっこトラブルは「膀胱炎」によって引き起こされる事が多くあります。膀胱炎は環境の変化、細菌感染、尿路結石など、様々な原因や体質なども絡み合っておこります。特に冬場は、お散歩に行く回数や時間が減りがちになり、また寒いとあまり動かずお水を飲む量が減ります。そうすると、おしっこの量が減り、濃いおしっこが膀胱内にたまる時間が長くなります。濃いおしっこは尿中のミネラルが結晶化して尿石ができやすくなり、膀胱炎を引き起こしやすくなるのです。

そこで!
☆お水を飲ませる工夫をしましょう☆
・ウエットフードを利用したり、フードをふやかしたりして水分を取る
・お水の器を増やし、何か所かに置く
・こまめに新鮮なお水に変える
・お水に味をつける(お肉の煮汁や、ウエットフードの汁など)
猫ちゃんの場合、トイレの場所が寒いと排尿間隔が遠のいてしまう事があるので、トイレを暖かい部屋に設置するのもおススメです。
膀胱炎以外でも、上記のようなおしっこトラブルが起こることもあり、なかには緊急性の高い病気もあります。おしっこトラブルが気になった場合には、早めに受診するようにしてください。

 

 

148号(2021年8月発行)ロック本栖湖デビュー!

コロナでなかなかお出かけが難しい夏休みですが、我が家はここ数年、↑↑こんなところへお出かけしています。どこの南の島かって??いえいえ山梨県です。富士山がみえていますね。富士五湖のひとつ、本栖湖です♪

本栖湖は水深121.6mもあり、「本州No1の透明度」を誇る湖だそうです。かつてはジェットスキーなども乗り入れが可能だったようですが、今は動力船の乗り入れが禁止されたことで、サップボードやカヌー、カヤック、ウインドサーフィンなどを安心して楽しめる、とても自然豊かで素朴な雰囲気のところです。また、川のように流れがあったり、海のように塩でべたついたりすることがないのも魅力で、子供と一緒にゆっくりまったり楽しめる場所です。わんちゃんも来ていますよ!!今年は、ロックも本栖湖デビューしようと思っているところです♪

皆さんも、県内のおすすめスポットあったら、ぜひ教えてくださいね。

 

146号(2021年6月発行)お薬を上手にのませるために

わんちゃん、ネコちゃんのフィラリア予防が始まりました。お薬をのむのが苦手な子、のませるのが苦手な飼い主さんにとっては、月に一度のこととは言え、憂鬱かもしれません。錠剤をどうやってのませたらいいですか?と聞かれることも多いのですが、おやつなどの好物に混ぜる方法が有効です。「おやつにくるんでも、うちの子はお薬だけ上手に出してしまいます」という方!あきらめる前に次のポイントに注意してもう一度試してみてください。

①くるむおやつは丸のみするくらいの大好物を用意する!
②お薬はこっそり仕込む。お薬の雰囲気も悟られないように!!
③まずは好物だけをいくつかあげる。
④わんちゃん、ネコちゃんが「コレおいしい♪」と喜んで食べているすきに、間髪入れずお薬入りもあげる!!!そして最後にもう一度好物だけあげる。

飼い主さんは極力「お薬オーラ」を出さないことが重要です。ぜひ試してみてください。
当院では、投薬用のおやつもいくつかご用意しています。「ちゅ~るちゅ~る♪」のCMでおなじみのCAOちゅーるには「投薬用ちゅーる」というのがあります。通常のものより粘度が高く、お薬をくるみやすくなっています。やわらかいお肉タイプでフレーバーの種類も豊富な「ピルバディ」もおすすめです。チューブに入っていて一回量を調節しやすい「おくすりちょーだい(チーズ味)」もあります。おうちの子が好きなものを選んでいただけますので、投薬に苦労している方は、スタッフまでお気軽にご相談ください。
しかし大人になった子に、魔法のようにお薬をのませる方法はありません。小さいころから口の周りを触ったり、口の中に手を入れる練習をしておくことがベストです。仔犬を飼い始めた方にはぜひ、日ごろからスキンシップとして口周りを触るトレーニングをやってもらいたいと思います。しつけの相談にものっていますので、困ったことがありましたら一緒に解決方法をみつけていきましょうね♪

143号(2021年3月発行)中医学的体質分類 ~第2回 血虚~

中医学では、気・血(けつ)・津液(しんえき)の3つが、体を構成して生命活動を維持する基本物質と考えられています。これらが過不足なく調和し、上手く体の中を流れている状態が健康状態です。どれか一つが足りなくなってしまったり滞ってしまったりして、全体のバランスが崩れると、体に不調があらわれま今回は血の不足「血虚(けっきょ)」についての勉強してみましょう。
「血(けつ)」は、基本的には血液と同じと思っていただいていいのですが、その作用には少し違いがあります。血は、全身に栄養を与えるだけでなく、全身の臓器や被毛に潤いを与える作用もあります。また、精神を落ち着かせる作用もあるとされています。胃腸虚弱や偏食などの栄養不足、出産や出血・病後など血の消耗が激しい場合に、「血虚(けっきょ)」となります。ふらつきや血色が悪いなどの貧血症状以外にも、皮膚の乾燥・毛づやの悪化・爪がもろくなる・目が乾く・かすみ目などの潤い不足の症状、不安感や不眠などのメンタル面の症状があらわれます。
血虚の治療としては、まずは食事内容を改善し、しっかり食べることが重要です。フードにレバーやほうれん草、漢方薬などをトッピングして補ってあげるのもよいですね。また体をあたためるのにお灸での養生もおすすめです。漢方薬や鍼灸治療に興味のある方は、スタッフまでお気軽にご相談ください。



 

140号(2020年12月発行)肛門腺て、定期的にしぼらないといけないの?


先日、『お散歩中にウンチをしたら、すごく臭い液が出た。ネットで調べたら、どうやら肛門腺の液で、定期的にしぼって出さないと、肛門腺が破裂して死んでしまうと書いてあった。』と、慌てて受診された方がいらっしゃいました。この方以外でも、肛門腺は人為的にしぼらなければいけない、と誤解していらっしゃる飼い主さんが多いように思います。確かに肛門腺破裂は、治療が必要な病気ですが、当院では年に数例ある程度のまれな病気です。そこで今回は、そもそも肛門腺って何だろう、というところから説明したいと思います。


肛門腺は犬、猫の肛門の左右に一つずつある腺で、そこで作られた液が袋状の肛門嚢に貯められます。肛門嚢の開口部は肛門のナナメ下、時計の4時と8時の方向にあります。肛門腺液は独特なにおいがあり、特にスカンクのにおいが強烈なことは皆さん聞いたことがあると思いますが、スカンクの肛門腺液のにおいには、肉食動物さえも驚いて逃げ出すといわれています。わんちゃんネコちゃんの場合は、相手を威嚇するために出すことはありませんが、驚いた時や普段の排便時に一緒に出てきます。また、わんちゃんやネコちゃん同士が、お尻のにおいを嗅ぎあっているシーンはよく見られると思いますが、あれは、肛門腺液のにおいを確認していると言われています。肛門腺液のにおいは個体ごとに違うので、それをもとに、個体識別をしているのです


このように、肛門腺の液は排便時に一緒に出てくることが普通で、毎日の排便時に一緒に出ていれば、おうちや病院で必ずしぼらなければいけない、というものではありません。特にネコちゃんや、柴犬などの中型犬以上のわんちゃんでは、しぼる必要はほとんどありません。実際我が家の愛犬くっく(17kg)もロック(12kg)も、一度もしぼってあげていませんが、問題になったことはありません。


では、どの子も全くしぼる必要がないかというと、そうでもありません。肛門腺液の性状は、個体差が大きく、サラサラの液状の子もいれば、ブツブツした塊状の子、ねっとりとしたクリーム状の子もいます。硬い性状の子や小型犬では、物理的に出にくいケースもあり、出が悪ければどんどん液が溜まり、その不快感からお尻を気にしてなめたり、お尻を床にこすって歩く、いわゆる「お尻歩き」をしたりするようになります。また、肛門嚢炎をおこし、血の混ざった液が出てくることもあります。これらのケースでは、肛門嚢の破裂をおこすこともありますので、早目の処置が必要です。おうちでしぼれない場合やしぼっても出ない場合は、肛門内に指を挿入してしぼる必要がありますので、早目に受診してください。


お尻はとてもデリケートな部分で、肛門腺しぼりの処置は、わんちゃんネコちゃんにとってはストレスの大きな処置です。ですから、必ずしも毎月しぼらなければいけない、と考えず、必要な時に受診することをおすすめします。ワクチン接種時などに相談してもらえば、溜まっているかどうか、性状がどうか確認しますので、お気軽にご相談ください。


136号(2020年8月発行) 午後の診療時間変更のお知らせ

診療時間変更のお知らせ
2020年9月より、午後の診療時間を午後3時半~午後6時半とさせていただきます

東京や都市部などでのコロナ感染増加、山梨でも少しずつ感染者数が増えている中、子供たちの夏休みもスタートしました。例年よりだいぶ短縮された夏休みを、感染を防ぎながらどのように過ごしたらよいのか、親としても悩む今年の夏です。

さて、冒頭で書かせていただいたように、2020年9月より、午後の診療時間を変更させていただくことになりました。動物病院は、女性スタッフが多い職場で、当院も例外ではありません。開院からも時がたち、子育て中のスタッフが増えてきました。家庭や子育てと仕事に、と頑張っている先輩たちに倣って、今後結婚や出産後も仕事を続けたいというスタッフもいてくれます。病院としては、経験豊富で有能なスタッフに長く働いてもらえることは、とても有難いことです。病院としてだけではなく、病気のわんちゃんネコちゃんや飼い主さんにとっても、良いことだと思っています。しかし、実際には保育園の開園時間などの兼ね合いもあり、今の診療時間では、フルタイムでの勤務は難しいのが現状です。また、働き方改革、と言われる昨今、いろいろな勤務形態を模索していますが、その一環としても、診療時間を変更させてもらうことにしました。

2020年9月より、午後の診療時間を
午後3時半~午後6時半
とさせていただきます

皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、どうぞご理解いただけますよう、よろしくおねがいします。

子育て、ということで、世のお母さんお父さん方、何が一番苦労するかといえば、夜泣き、泣き止まない、すぐ泣く、などなど、子供の泣き、ではないかと思います。しかし、ヒトに最も近いと言われるチンパンジーでさえ、動物の赤ちゃんはほとんど泣きません。なぜかというと、母親にくっついでいるからです。たいていの哺乳動物の赤ちゃんは、母親にしがみついて、母親を真似して成長していきます。ではヒトの赤ちゃんはなぜ泣くか、というと、周囲に自分の存在を知らせるためなのだそうです。ヒトは、進化の過程で集団生活を選び、火や道具を使って脳を発達させました。巨大になった脳を、他人と集団生活するための脳=協力的な知能へと十分発達させるためには、母親だけでの保育では不十分で、父親や集団の大人など、血縁・非血縁に関わらず、多くの大人が関わっての保育が必要となったのだそうです。

もし周りに、子供の夜泣きなどで疲れているお母さんお父さんがいたら、『あなたの赤ちゃんは今一生懸命脳を発達させているんだよ、社会に順応するために泣いているんだよ』と、伝えてあげてください♪

131号(2020年2月発行) マダニの通年予防を!(SFTS対策に)


今年のような暖かい冬は快適ですよね。しかし、快適に過ごせるのは人間だけではありません。多くの動物にとって、勢力拡大のチャンスです。(逆に、地球の温暖化によって北極の氷が融けたり、オーストラリアの森林火災などが起こり、生存場所を奪われ、絶滅の危機に瀕している動物がたくさんいいるのも事実ですが…。)暖かい冬に勢力を拡大しているものの中で、動物病院とかかわりの深いものといえば、マダニ・蚊などの病害虫や、それらが伝搬するウイルスです。当院では、蚊が伝搬する「犬フィラリア症」の予防期間を、一昨年までの「5月から11月まで」から「12月まで」と改めておススメするようにしたのも、そんな観点からです。

今回は、マダニの話です。マダニは、外気温13℃以下になると、吸血活動をやめて、木のうろなどで冬眠して冬を過ごします。ですから通常は、冬の間はマダニ駆除薬を使わなくてもよいのです。しかし、今年のような温かい冬であれば、冬眠せずに、吸血・産卵を続けている可能性があるのです。

マダニに吸血されること自体にも問題はありますが、マダニは、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの病気を伝搬します。SFTSは、マダニに吸血されることで人・犬・猫などが感染する病気です。日本では2013年にマダニから人への感染で、初めての死亡者が確認されて話題になりましたが、2018年にはSFTSに感染し衰弱していた飼い猫から、猫を治療した獣医師・看護師への感染があったという、動物病院関係者にとっては驚愕の報告がされました。その後の報告では、感染猫の体液が獣医師の目に入ったことで、感染したのではないかと推察されています。人では、2019年5月末までに421人以上のSFTS感染があり、致死率は約27%と報告されています。これは今話題の「新型コロナウイルス」の致死率の5倍以上の数値です。犬猫での感染も報告が相次ぎ、致死率は犬で30%、猫では60%と言われています。現段階では、関東以北ではSFTSの発症はありませんが、山梨で捕獲されたマダニからも、SFTSウイルスは検出されており、SFTSに対する警戒は山梨でも必要と感じています。

人、犬、猫ともに、マダニ感染のリスクはどこにでもあります。マダニは森林や山などだけではなく、街中の草むらなどでも、動物への吸血の機会をねらっています。今後、温暖化による気温の上昇や、野生動物の生息域の変化に伴い、マダニの活動期間が増えれば、マダニ感染=SFTS感染のリスクはさらに増えると考えられます。

SFTSを防ぐには、まずはマダニに寄生されないようにすることが重要です。ヒトは長そで長ズボンや長靴で防ぐこともできますが、犬猫ではそれは難しいですね。ですから、マダニの駆除薬を定期的に投与することが重要です。月1回のスポット剤(背中にたらすお薬)や飲み薬のほか、1回の投与で3ヶ月間、新規のマダニ寄生を防いでくれるお薬もあります。特に、今年のような温かい冬は、冬の間も投薬する「通年予防」がおススメです。必要な予防は、住環境などにより様々ですので、ぜひご相談ください。