針尾弾薬庫の近代化構想
「前畑返還」口実に米軍のもくろみ

 4月9日、佐世保市長は米海軍佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)の針尾弾薬庫への移転近代化構想の素案を公表しました(長崎新聞報道)。3月30日に防衛施設庁が佐世保市に提示したものです。これらは2年前に朝日新聞が報道した内容と基本的に同じものですが、前畑の移転を口実にして針尾弾薬庫を近代的な施設に作り替えるものであることがいっそう明確になってきました。

 素案では、針尾弾薬庫に面した二つの入り江のうち北側の安久ノ浦を全面的に埋め立てて弾薬保管エリアに、南側の牛ノ浦周辺は、弾薬処理施設や補修施設など作業施設エリア及び管理施設エリアにするといいます。弾薬保管方式は既存の建物式よりも安全性に優れるという、構造物を土で覆った地上覆土式。また埋め立て地そばに、針尾弾薬庫にはなかったトンネル式保管施設を複数設置。
 さらに安久ノ浦と牛ノ浦が交わる陸域先端に弾薬輸送のための係船施設を整備することにしています。当初は大型艦船による弾薬の直接積み下ろしができる岸壁を整備することを検討していましたが、素案では台船が係留できる埠頭を設け、台船を介した弾薬の積み下ろしを行うことになっています。防衛施設庁は「台船で弾薬を運んだ方が、効率的に安全を確保できる」といいます(朝日新聞)。

 長崎新聞報道では両者の弾薬庫の構造や性能の違いについて次のように解説しています。「前畑弾薬庫の保管施設は造りレンガやトンネル式など頑丈で性能も近代化が図られてきた。しかし針尾弾薬庫は除湿などの空調施設を持たないアルミ製簡易倉庫が中心で、環境に左右されにくい低感度の弾薬や部品しか保管できない」。つまり針尾弾薬庫は使い勝手が悪く、むしろ前畑の方が性能が高いというわけです。日本が「前畑返還」を望むのであれば針尾を前畑並みに近代化せよ、というのが米軍の要求です。

 今後、日米両国は6月末に「基本構想」をまとめ、日米合同委員会施設調整部会で前畑弾薬庫返還の基本合意を行うとみられています。針尾地区の住民の声にはいっさい耳を傾けることなく「基本構想」がまとめられようとしています。

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