米原子力空母リンカーン
佐世保寄港に抗議する!

 5月25日早朝、米海軍原子力空母エイブラハム・リンカーン(4226人乗り組み)が佐世保に寄港しました。米国が「長期戦争」宣言を行なった直後の入港であり、米軍と自衛隊の軍事一体化をおしすすめる在日米軍再編のもとでの佐世保寄港です。いよいよ佐世保が米世界戦略に深く組み込まれ、原子力空母の準母港化への第一歩となる危険性をはらんだものです。

 リンカーンは予定よりも30分以上も早い午前8時前に湾口に姿を現しました。臨戦態勢のまま甲板には戦闘機など65機を搭載しています。佐世保市野崎町の高台で開かれた緊急抗議集会で、佐世保原水協の山下千秋理事長は「寄港は米軍の武力行使に日本が深く関わることを狙ったもの」と指摘。参加者は「原子力空母の寄港反対」「米軍と自衛隊の一本化反対」「憲法9条を守れ」と、怒りの唱和をつづけました。

 今回の寄港ではかつてない異常なできことが起きています。

 海上では市民団体のメンバーが乗り込んだ漁船19隻が「入港反対」と書いたのぼり旗を掲げ、海上デモで抗議しました。米軍はテロ対策として2隻の警備艇を配置し、そしてあろうことか、そのうちの1隻はデモの船団に向けて機関銃の銃口を向けるという、威圧的な行動を繰り返したといいます。また出港する海上自衛隊の「イージス艦こんごう」「まきなみ」の2隻の護衛艦がデモの隊列に入ってきました。海上デモは1週間以上も前から佐世保海上保安部と協議してコースや時間、隻数を確認したものだったそうです。海自は海上保安部からの「調整」を拒否していました。あえて海上デモを妨害しようとした?

 佐世保原水協と平和委員会は市内のアーケードで抗議の街頭宣伝を行ない、「市民の安全を脅かす佐世保寄港に反対を」というビラを配りました。このとき制服の警察官が道路使用許可の件でクレームをつけてきました。また私服の2人がビデオとカメラで宣伝行動を撮影していました。身分を尋ねると「長崎県警」というだけでなかなか警察手帳を見せようとしません。1人はとうとう氏名の確認ができませんでした。

 外務省から佐世保市への事前通知によると、寄港目的は「休養、補給、メンテナンス」ですが、艦上で記者会見した空母攻撃群司令官のジョン・グッドウィン少将は「佐世保寄港は、テロ対策などに対するわれわれの決意を日本と地域に示すためだ」と述べています(西日本新聞)。何が何でも在日米軍再編構想を実現させるんだという米軍の圧力です。そして海自も連絡官を同乗させています。

 リンカーンは03年3月、「イラクの自由作戦」に参戦し、艦載機の出撃数は延べ1万6500回、首都バグダッドなどへの投下弾薬は726トンにのぼったといいます。03年5月にブッシュ米大統領が艦上で、イラク戦争の「終結宣言」を行なった空母でもあります。

 リンカーンは今年2月末、ワシントン州エベレットを出港。イージス駆逐艦など3隻と空母攻撃群を構成し、朝鮮半島有事を想定した米韓合同演習「フォール・イーグル」に初参加したほか、タイでタイ海軍と演習を行なっています。

 リンカーンの随伴艦のうちイージスミサイル駆逐艦ラッセルとイージスミサイル巡洋艦モービルベイは24日、それぞれ高知県宿毛港、神奈川県横須賀基地に入港。イージスミサイル駆逐艦シャウプは26日、静岡県清水港に寄港します。当初はモービルベイが23日に清水港に寄港の予定でした。

 リンカーンは、5月29日に佐世保出港後、6月に米ハワイ沖で別の米原子力空母2隻とともに合同演習に参加する予定といいます。

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