徳之島に渡る

 下を見下ろすと断崖絶壁である。怖いと言うより、海のきれいさの方に目がいった。
 サンゴでできた岩には、複雑な形状が見て取れた。浸食されて穴が空いていたり、トゲのような出っ張りが無数に上に向かって伸びていた。

 ボーッとしながら夕焼けまで空を見ていた。
 入道雲の上に赤い夕焼け雲があった。
 夕焼けが見えると明日は晴れだが、この雲のかたまり、いったいどうなるのだろう。

 洗面をし、午後7時30分には横になってしまった。
 夜中、突然なにかのにおいで目を覚ました。奄美大島の飲み屋で聞いた、
「ハブが近づいてくると、くさい臭いがするよ。」
と言う言葉を思い出した。少し緊張した。隣の仙人を起こさない程度に、テントを揺らした。すると、本当に臭いにおいが遠ざかっていった。

 その後、夜中トイレに起きる頃、やはり何とも言えない不快な臭いがしたが、灯りを付けて、少し動作を大きくしていたら、消えた。
 本当にハブが近づいてきたような気がした。

 キャンプ場へ続く途中の道とは反対に、キャンプサイトは明るく素敵なところだった。車やバイクなどの足がないとこれない場所だと思った。
 テントが1つ張ってあった。40歳ぐらいの男性が1人いた。キャンプしていると言うよりは、ここに住んでいるといった感じだった。テントの出入り口にタープを張り、その下の椅子に座り、ドリンクを飲んだり読書したりして、徳之島の自然に染まっている感じの方だった。

 私が行っても、こちらに視線も向けてこなかったので、挨拶をし、ようやく少しだけ話をすることができた。
 もう3月ほどここで暮らしているという。時々海にはいるが、たいがいは、こうしてボーッとしているという。ガジュマルの木の下で暮らしていて、私が驚いたのは、木から下りてきた緑色のトカゲと遊ぶ姿だった。
 その仙人のような方と少し話をした段階で、ここでキャンプすることを決めた。どこにテントを張るか悩んだが、私もガジュマルの枝の下に設営した。芝が高くなってあるところは、下に砂が持ってあるので水はけがいいという。雨が多いというので、テントの上にブルーシートをタープ代わりに張った。

 幹線道路である県道83号線に戻ろうとして、いつものようにジグザグに道路を進んでいったら、大変なことになった。突然道路がなくなった。山を切り崩して、道路を作っているような場所に出てしまったわけである。
 ここで、来た道を覚えている段階で引き返せば何でもないことだが、私バボの悪いくせが出た。

「島の全ての道はつながっている」
 そんな哲学を、この場でも強行してしまったのである。民家がなくなってきた。誰も人がいない。そのうち、サトウキビ畑の真ん中に出てしまった。背の高いサトウキビの視界を妨げられて、何も見えなくなった。電灯もない。

 この徳之島は、奄美大島以上に毒の強いハブがいるという情報を携えてきたので、ここで夜を迎えたら命の心配もしなければならなくなる。バイクの燃料系を見た。ガソリンの量も気になる。行けども行けども、舗装道路にぶち当たらない。

トライアスロンのスタート&ゴール地点

倒木を食い荒らす野生のヤギ

 ようやく徳之島の海に入ったという満足感があった。

 3日目の朝が来た。  雨は降っていなかったが、どんよりした雲が空に浮かんでいた。
 今日徳之島を出ることに、何のためらいのなかった。どうも、徳之島の天気の神様に嫌われたようだ。

 洗面をすると、すぐにテントの撤収に取りかかった。今回は、荷物が多くなかったので、割合とスムーズに行った。テントとシートを乾かしている間、昨日買ったクロワッサンを食べた。
 キャンプ場のすぐ近くの海に入りたかったが、船の出航時刻は9時40分。万が一遅れると大変なので、今回は泣く泣くパス。

 まだキャンプ地を決めていないことに焦りを感じ始めた。 この徳之島に来て感じたのは、「自分の意志とは違った、何かの力がはたらいている」と言うことであった。 思い通りにことが進んでいないことに 、軽いいらだちを覚えた。

 もう寄り道をしないで、まずは与名間海浜公園に行き、テントを張ろうと決めた。徳之島上陸前の予定では、ヨナマビーチが、宿泊地として考えていたからだ。

 空港へアプローチする道もあったが、一生懸命北へ北へとバイクを走らせた。

 天城町の中心街を通ると、久しぶりにたくさんの車や人を見た。そして、ビルなどもあり、先ほどのサトウキビ畑との差があまりにも大きいので、不思議な気がした。同じ1本道なのに、こんなに違うのだろうか。地図の感覚ではもう到着しているはずなのに、思ったより時間がかかってしまった。

 どうにかお茶目なじいさんのおかげで、元の道に戻ることができた。  ほとんど道に迷った経験はないバボだったが・・・・
「恐るべし、徳之島の道」


 じいさんと別れようとしたら、「滝をみたか?」「展望台に行ったか?」「硫黄島の火山灰の地層を見たか?」と矢継ぎ早に質問して来るではないか!
 「道に迷っていて、そんな余裕はなかった」 というと、 「もう一度戻れ!」 という。
 あまり関わっていると、本当に行かされそうななったので、先を急ぐという事で、バイクを進めた。


 おもしろい欄干をした大きな橋が出てきた。これが「天城大橋」という。

 水浴びをする親子が目に入った。
 バイクを駐車場に停め、更衣室で着替えてから海に入る。最初は手前のタイドプールのような所に入り、その後環礁の外に行こうと思った。
 まずプールのようなところで泳いでみるが、魚たちの姿が見えない。シュノーケルをしていると、透き通った体の中に紫色の線や触手を持ったクラゲに遭遇する。未知の物だったので、水で遠くの方に追い払ったら、また私の方へやってくるではないか。もし毒を持っているクラゲだったら危ない。そう思い、細長い石で、クラゲと戦かった。

 土産物店が、こんなに早い時間なのに、すでに開いていた。本当は、中を覗きたいところだが、バイクを預ける関係で、いそがなければならない。と言うのも、この航路では初めての乗船であるし、バイクの預け方も今ひとつわかっていなかったからだ。
 1階に下りると、先ほど対応してくれた方が、待っていてくれた。荷札のようなものをバックミラーに取り付け、船の方へ向かえという。
 建物を出ると、荷物を運ぶフォークが何台も、陸上と船の間を行き来していた。東海汽船では、コンテナに積み込むのだが、このマリックスラインは、バイクに乗ったままフェリーの貨物の入り口から入るらしい。フォークリフトの間にうまく入るタイミングがつかめないでいると、赤いライトを守った人が、笛を吹きながら誘導してくれた。あわててバイクで坂を上った。まさに命がけのバイクの乗船であった。
 指定された場所にバイクを置くと、船室の方に誘導され、予想以上に早く船に入る羽目になってしまった。もう少し、切符売り場のあるところを見ていたかったのだが・・・ 

7月23日〜25日

 今回も自動車よりも先に誘導され、船に乗り込んだ。
 今度の行き先は、徳之島からさらに南下した沖永良部島である。

 徳之島に来るときも一緒だった40歳ぐらいのライダーがいた。話しかけると、奄美大島、徳之島と渡って、今度は与論島に行くという。沖永良部島はパスだという。最終目標地は、沖縄らしい。
 これから行こうとする沖永良部島は、そんなに魅力のない島なのかと少し不安になった。彼は、徳之島では素泊まりの安宿に泊まっていたらしい。1泊3000円で、テレビなしの部屋は、さらに500円安いらしい。
 彼には悪いが、ガジュマルの木の下で野営した私の方が遙かにすてきな島旅だったと思う。

 効を為したのかどうかわからないが、北東部にある畦プリンスビーチから、島の南東にある亀徳の方に行ったら、少しやんできた様な気がした。後ろを振り返ると、先ほどまでいた島の北部は、黒っぽい雲がいっぱい流れていた。今いる亀徳の雲の方が白く、薄く見える。 同じ1つの島なのに、こんなにも天候が違う発見に、驚きつつ、気づいた自分を「えらい!」とほめていた。

 安心したら、突然腹が空いてきた。夏なのに、温かいものをたくさん食べたくなった。雨で、体が少し冷えたようである。
 店を探すのが面倒くさくなって、エブリワンというコンビニに入り、大きめのハンバーグ弁当とスーパーカップの「つぶ明太」と言う九州限定のカップ麺を買った。弁当は温めてもらい、カップ麺にお湯を注いだ。少し量が多いかなと思ったが、ぺろっと食べきった。

 ようやく小雨になってきたのは、それこそ、午後1時・・・・長い長い、雨宿り生活だった。
 2泊3日と言えば、2日目が一番自由に動けて充実するはずなのに・・・

 突然こんなことがひらめいた。  山が高いところでは雲が発生しやすく、雨になることが多い。昨日だって伊仙町はそれほど天候が崩れなかったではないか。
  少しでも高い山のある、この付近から逃げだそう・・・・そう思い、ひたすら東側の道を南下していった。

 予定では、徳之島にいられる時間は最高でも2泊3日。徳之島は、1周回ると、約80kmあると聞かされた。地図を見ると、まだ徳之島の5分の1程度しか走っていない。観光地に顔をを出すのはあまり好きではないが、観光案内所でもらった小冊子にはまだ見所がたくさんあった。
 名残惜しいが、水シャワーをしっかり浴び、西側の道を北上することにした。

 その後、奄美大島と同じだと思い、軽い気持ちで島の観光ガイドを求めたら、おいてないという。観光案内所に行けばあるというので、その場所を聞いたら、亀徳というあの港の建物の中だという。後先を考えずに行動したことを後悔しつつ、亀徳新港に戻る。

 島の観光案内の小冊子をもらい、それを見る。自宅にいるとき、ネットで調べた情報と同じだった。目新しいものはなかった。

 徳之島では、世名間ビーチでテントを張る予定だった。それまでに、2,3カ所キャンプサイトを覗き、その近くの海でいいところがあれば泳ごう、そんなアバウトな考えであった。

 それでは出発しよう! と言うことで、港を出たすぐの交差点を左折した。本当は、右折しなければいけなかったのだが、予定していた方とは反対方向に進むことになった。間違いだと気付いたのは、ずっと先に進んでからであった。

 北上して畦プリンスビーチという所に出るはずだったのに、南下していたのである。なぜか、体内コンパスが狂っていた。

海の色に見えない桟橋前

今話題の九州電力「火力発電所」と暗雲

奄美大島Top

 私のバイクが一番最初に下船ことが許可され、念願の徳之島上陸を果たした。先ほどまで乗っていた「クィーンコーラル8」の姿が見えたとき、うれしくなって、早速バイクで島の中を走ってみることにした。 初めて見る町の景色が新鮮だった。何か食べ物がほしい。何も考えず、心のおもむくまま走っていたら、コンビニがあった。あの奄美大島で何度となく通ったエブリワンであった。徳之島にもチェーン店があることを知り、感心した。ここで、フランクフルト入りのチャーハン弁当を食べる。

 どうにか亀徳新港の待合所に着いた。すぐに沖永良部島への乗船券(1500円)とバイク代(1650円)を払った。人間よりバイク代が高いことに、何か違和感を持った。
 続いて、ジェラードを買った。島ミカン味のアイスだ。香りが良かった。

 県道629号線は、徳之島の北部の海岸線近くを走る道路である。
 徳之島で一番好きな道だが、今回はまだ通ったことのない県道618号線という山越えの道にトライした。途中から80号線と合流し、花徳の3差路に出る道である。不思議なことだが、山道を通っているとき、また雨に降られてしまった。しかし、花徳の近くに来たら、道さえぬれていなかった。「徳之島の天気は、恐るべし!!」 肝に銘じておこう。

 キャンプ場に戻った。たいして動いていないのに、疲労困憊だった。じめじめした気候が、体に合わないようである。
 何も作る気が起きなかった。 今夜はパンを中心に簡単な食事にした。
 ぼーっとしていたら、空は少しずつ変化し、きれいな夕焼けになっていた。 さらに、ずっと見ていた。あたりは、すっかり夕闇に支配されつつあった。

 夜、テントから出て空を見ると、すごい星空が見え感動した。

 なんと、雨はもっと強くなった。風も吹いてきた。

 カッパを着て対抗するが東屋の中にも、しっかり雨が入り込んでくる。芝生の上全体にガスがかかったようになり、視界も悪くなった。
 ここにいてもぬれるだけなので、移動しなければ・・・
 周りを見回した。白いコンサート会場のようなものがあったので、そちらに移ろうとした。すると突然、6台の軽自動車が、一斉にそちらに向かったではないか。あっという間に、白い野外コンサート会場は、子ども達の雨天遊び場として、占領された。

 やれやれ・・・と思いつつ、更衣室があることに気付き、そちらへ逃げることにした。ロッカールームなら、まさか雨は吹き込んでこないだろう。

 私が手放した東屋には、男性3人組がのり込んできた。貝殻を交換する、ヤドカリと同じでおかしかった。
 もっと大きい東屋には、男女7人組が集結し、なんとバーベキューを始めたではないか。恐るべし、若者パワーーー

 一通り準備を済ませた。少し時間があるので、海で泳ごうと思った。すごいことに、このキャンプ場から海にエントリーする道ができていた。それこそ、テントから50mで海へ入れるのだ。 30分ほど、一人でシュノーケリングを楽しんだ。曇り空だけが、残念だ。

  いつもなら、すぐシュノーケルを持って海に突入していくのだが、今回はテントを張るという大事な勅命を承っている。水場やかまどを確認する。トイレもシャワーもOKだ。夏場のテント設営に当たって、日陰も大事な要素だ。
 一番気に入ったところがあったので、町の職員に聞くと、そこは明日から来る団体に許可を与えてので、遠慮してくれと言う。大きなプールすべり台の下辺りが、ベストの場所になってしまう。それに、今日は私以外のテントはない。バイクも、公園内進入禁止になっていた。ここでキャンプしたいという気持ちが、急激に萎えてしまった


 どうしよう。選択肢は3つ。
@ここヨナマでテントをはる
A伊仙に戻り瀬田海浜公園でテントを張る
B畦プリンスビーチに行く
 まずAは却下した。Bの畦プリンスビーチに行き、そこが良かったら、そこでテントを張る。嫌だったら、またここに戻ってこよう。

 県道83号線をさらに北へ向かって進む。
 亀徳新港を出発点にして、徳之島を約半周したところにあるのが、「犬之門蓋(いんのじょうふた)」である。徳之島は、犬という地名がやたらと目につく。なぜ「犬」という漢字の地名が多いのか、考えながらバイクを進めた。地図で見ると、亀徳新港が使えない時使う平土野港(へとのこう)の近くである。

 山では、とりあえずどこも曲がらないでまっすぐ進めば、川や民家にたどり着く。ところが、ここでは、まっすぐな道は存在せず、2,300m行けば曲がらなければならなくなる。

 牛糞の匂いを感じた。どこかで牛を飼っている民家があるはずだ。・・・その匂いをたどっていくと、民家が1軒あったが、人の気配はなかった。

 1時間近くさまよっていただろうか?突然、舗装した道路に出会った。しかし、どう進めば、この悪夢から逃げ出せるかわからない。
 しばらく待っていたら、ようやく白い軽トラックが通りかかった。思わずそのトラックを停め、幹線への道を尋ねた。すると、そのトラックに乗っていたじいさんが、笑いながら、「ずっと同じ所を走っているのが上から見えたんだけど、何をしているのかと思ったよ」
と意地悪っぽく言ってくる。さらに「ついてこい」といいながらアクセルを踏んだ。原付バイクはスピードが出せないのに、あっという間にそのじいさんの車は視界から消えてしまった。焦りながらついて行ったが、別の車が来ないかなと密かに祈っている自分がいた。

悪夢の道

 船は、黒い煙を吐きながら出発した。名瀬の町は、少しずつ朝が広がっているような気がした。
 ゆったりと船は進んでいった。こんなに遅くても大丈夫なのかと心配するほどである。名瀬新港の入り口である、赤灯台の付近を通過していった。

 朝4時15分に起きた。洗面を済ませると、荷物を持って、名瀬にあるたつや旅館の玄関から出た。まるで夜逃げのような感じでおかしかった。実際、外はまだ暗かった。千鳥足の人が歩き、タクシーが何台か走っていた。
 これからバイクで名瀬新港に行き、船で徳之島に向かう予定だ。出帆の時間は5時50分なので、それまでに、乗船券を購入し、バイクを船に乗せる必要がある。

沖永良部島へ

 亀徳の旧の港を見ていたら、たくさんの雨が降り続いたため、土砂が海の流れ込み、きれいな海がどろんこ色になっていた。体温のこともあるし、今日は海に入るのを早々にあきらめた。そして、バイクで、島の散策をすることにした。まさに「休海日」である。

海に入ることをあきらめ・・・

松原闘牛場

高橋尚子ロードの碑

徳之島空港

西郷隆盛上陸記念碑

濁っていなければ素敵な海

重ぐるしい雲につぶされそうな平土野の灯台

 夕日のメッカらしいが、案内板を見ると、恐ろしいことが書いてあった。
「昔大飢饉の時、犬が群れをなして人畜に危害を与えたため、これを捕まえて海中に投げ捨てた」
そんな内容である。

 この橋の近くで、変わったものを見つけた。
 フラフープのような金属製の棒が3つ集まって、球体を形成していた。それが、赤い8本の柱の上に設置されていた。この球体が動く物かどうかわからない。、個人的に言えば、とても好きな形だ。この形状が気に入り、しばらく眺めていた。
 これは何だろう。何の目的があって、これをここに建立したのだろうか。

 宇宙のエネルギーを、全てここに集められる装置なのではないかと、想像をどんどんふくらませていった。

 私のは、橋の欄干よりも、こちらの方が気にいってしまった。

 立派な公園があった。この岬からは、徳之島の海が見渡せた。やや曇りがちの空だったのが、残念である。
 水色の東屋から左の方へ降りていくと、大きな2本の柱のようなモニュメントが見えた。かなり背が高いものであった。これが、あの有名な「戦艦大和慰霊碑」であった。近くへ行き、そっと手を合わせた。

 「犬田布岬(いぬたっぷみさき)」 とりあえず、次の私が目指す地名が出てきた。 幹線道路を左折する。
 次の分岐点で、きれいな海の色をした船着き場を見つけ、思わず寄り道。こんな色の海を見たかった・・・・・。釣りをしたり、浮き輪に浮かんだりして、思い思いに自分の時間を楽しんでいる島人を見た。

犬田布(いぬたっぷ)岬

 いつの間にか伊仙という集落に入った。ここは、徳之島南部の中心の町である。家がたくさん並んでいた。スピードを緩めながら、町並みを見ていた。そこに、見慣れた看板を見つけた。 なんと「キャンドウ」という名前の100円ショップがあった。予想外の出来事に驚くとともに、忘れていたキャンプ用のライターを購入した。
 さらに、「伊仙町の闘牛場」という表示に導かれて、闘牛場を視察した。この島には、何個か闘牛場があり、それぞれの横綱がいるという。

 天候が今一つだし、闘牛場の水たまりを見ていたら、今日は海に入れないかもしれないという、不安感に駆られた。

 急激に道路の景色が変わってきた。都会だと思ってバイクを走り始めたが、どうやらそれは、亀徳の町周辺だけのようだ。
 気がついたら、周りはサトウキビばかりだった。行けども行けども、サトウキビばかり目に入ってくる。県道80号線は、海岸線からずっと内地の方を進む道のようだ。
 少しでも海のそばを走りたいと、海岸線を目指したら、舗装道路ではなく、どろんこ道に変わった。しかも、牛の香がプーーーンとしてくる。さすがに参った。なかなかこのにおいになれることができなかった。
 仕方なく、また幹線道路に戻る。
 

奄美大島2へ

今回縁がなかったヨナマビーチ

亀の卵の産卵地

Good-bye 徳之島

 亀徳の町まで出て食事しようと思っていたが、途中のスーパで、半額になったウナギの弁当を見つけたので、思わず買ってしまった。ラッキー!!? しかし、皮が固く食べにくかった。
 海の見える防波堤の上にこしかけて、食べた。風がすごく気持ちよかった。涼しいだけでなく、優しく肌をなでていく感触があった。

 水シャワーを浴びた。食事ができるところを仙人に聞いたら、亀徳の町に行かなければダメダという。ガソリンの残量も心配だ。そこで、帰りは夜になることを覚悟して、バイクで出かけることにした。そう言えば、まだ徳之島1周も果たしていない。
 花徳という名前の交差点を左に行く。まもなく、キャンドーという100円ショップがあった。ラッキーと思いながら、非常食用のお菓子と、予備のブルーシートを買った。キャンプの大雨で痛い目にあっているからだ。きょうも天気はそれほど良くなさそうだ。
 続いて、ガソリンを入れることに成功。何でも、この徳島はガソリンスタンドは早く閉まってしまうと言う。もうやっていないかもしれないと、言われたからだ。1L=168円 は、伊豆諸島よりも安い。32円もだ。

ようやく見つけた民家

 海の雰囲気も悪くない。奄美諸島によく見られる奇岩も、徳之島に来たという雰囲気を醸し出してくれた。
 沖に向かって右端の岩場に行き、ようやくたくさんの生き物たちと出会うことができた。シャコガイ君、おはよう!クロナマコ君もアカヒトデさんも元気そうだね!等と、ウキウキした感情を隠せなかった。

瀬田海浜公園

 港に着いた。一方通行で迷わなければ、5分ぐらいでつくはずであった。10分近くかかってしまった。まだ真っ暗で、電灯の明かりだけが光っていた。

 昨日の話では、最初にバイクを預けるという話だったが、船に積み出しをする人に、乗船券を先に購入するようにと言われた。
 慌てて、建物の裏側の階段を使い2階に行く。
 鹿児島と沖縄を結ぶこの航路は、マリックスーラインとマルエーフェリーという2つの会社が、1日おきに船を走らせている。今日7月23日は、マリックスラインという会社の、「クィーンコーラル8」という船だそうだ。どうせ3時間ほどでつくので、2等という一番安い乗船券を購入した。2900円である。予約をしていなかったが、離島間では、特に必要ないという話であった。窓口で、原付バイク50ccのお金も払った。1940円だった。いつも乗っている、東海汽船よりは安いなと思った。

 かなり高いところにかけられた橋のようで、下を見ると、高低差を感じた。この橋がなかった時代は、人々は山道を上り下りしていたのだろう。「天城」という名前に込められた人々の気持ちが少しわかる様な気がした。まさに、天空に立ちそびえる「城」のように見えたのだろう。

あずまやで雨宿り

 県道83号線という表示になっていた。このまま北上すると言うことは、空が暗い方に進むと言うことである。少し気が重いが、晴れている南部に別れを告げ、徳之島1周の島旅を進めることにした。途中、右に曲がれば、長寿で有名な泉重千代翁の象があるらしいが、今回は寄り道をしなかった。

 少し行くと、水色の立派な橋が架かっていた。 「鹿浦大橋」という名前が書かれていた。道の橋にバイクを停め、橋の上から下を眺める。下には、海を寸断する様な古いサンゴの道ができていた。天気が今一つなので、こんな高い場所から海を見ても、海の輝きは今一つであった。   もったいないなと思いつつ、先に進む。

 きれいに生えそろった芝。トイレもきれいだし、水も確保されている。
・・・と言うことは、ここでもキャンプができるではないか!と思った。海の中もなかなかいい。。
 白い壁の屋根がやたらと大きい建物は、宴会やダンスでもされたらうるさくて困るが、雨が降ってきたら、とりあえず雨宿りの居場所になる。
 後は何か火を使うかまどはないが、それはどうにでもなる。ガスバーナーを使えば問題ない。
 買い出しも、伊仙の町中に行けば、スーパーも100円ショップもあったし・・バイクという心強い相棒もいるし。。。
 強力なキャンプの候補地になった。 

 朝日が山から完全に出てくると、今度は海水面にオレンジ色の道ができた。 朝日へと続く、黄金色に輝くプロムナードである。

 周りには誰もいない。自分だけ、こんな光景が見えて、ラッキーだと思った。これだけでも、船に乗って良かったと思った。
 空が完全に明るくなるまで見つめていた。

沖永良部島に向かう
徳之島撤収
7月25日
キャンプ場の夕暮れ
7月24日
買い出し&ツーリング
金見のソテツトンネル

 ヨナマビーチに到着した。美しい海岸だと思った。何でも、今年度のトライアスロンの会場でもあるらしい。
 子供用の流れるすべり台もあった。ディキャンプの方が似合いそうな場所の気がした。

与名間海浜公園
犬之門蓋
天城大橋
サトウキビと牛の香
徳之島上陸
徳之島到着

 船は、ゆっくりと右の方に曲がっていった。
 そこで、思いがけない光景に出会った。東の方の山が、少しずつ明るくなり始めた。じっと見ていたら、なんと朝日が顔を出したのである。まさに、日の出の瞬間だった。海から出てくる朝日ではなかったが、それでも感動しながら見ていた。

朝の名瀬新港
7月23日
徳之島へ
沖永良部島へ
奄美大島Top
奄美大島2へ
畦プリンスビーチキャンプ場
バイクの島旅は続く

 事前の調査で、この徳之島は「牛相撲」が盛んだと知っていたが、すぐに黒光りした牛相撲の像が目に入った。それも、屋根付きの立派な建物で、雨から守られている感じである。何か荘厳な雰囲気を感じた。

 今回もマリックスラインの船だ。「クィーンコーラルプラス」と言う、新型の大きな船だった。到着すると、車が乗り降りする扉が開いた。 最初に出てきたのは、ヤギさん御一行だった。けもの臭が、目の前を通り過ぎていった。すごい臭いだった。

 薄いサンダルを履いていったので、とがった岩の上を歩くと痛かった。子どもの頃遊んだ秘密基地を思わせるような光景で楽しかった。全部を見学するのは無理なので、先を急ぐことにした。

 ドリンクを口にしながら、観光協会でもらった徳之島の地図を開く。島の真南から西の方の海岸線に沿って走っていくと、瀬田海浜公園という名前があった。
 ネット上で、2,3枚の海岸写真しか記憶していなかったが、とりあえずそちらを目指す。

 ようやく、きれいな海と遭遇することができた。北の方の空は相変わらず暗いが、ここいらへんでは、少し日射しも刺している。
 「そうかそうか、海には入れという暗示か・・・・・了解」、バボはここで入ることを決意する。

 目が覚めると同時に、徳之島に到着するというアナウンスが流れてきた。
 デッキに行き、島影を見る。 あれが、徳之島か?白い灯台が、歓迎してくれているように見えた。
 その後、アナウンスに従って、バイクを置いたところに行く。 バイクはまだ、しっかりロープに結ばれていた。まもなく到着するというのに、係員が誰もいないので、自分でロープを外した。

 畦プリンスビーチ周辺は、雨を呼ぶ場所かもしれない。急いで南下したら、雨から免れた。無人のフルーツ売り場があった。

 隣のテントに寝る仙人から、畦プリンスビーチの海の方がいいと聞いていたので、まずそちらで泳ごうとした。
 一通りの荷物をバイクに乗せると、急な雨に備えてテントのカバ−をし、9時前には出発した。目指す浜辺は、わずか5分の距離である。ところが、そのわずかな時間の中に、雨が落ちてきた。空は、すっかり灰色になっていた。

 しかし、それほど心配していなかった。南国の島では、スコールはつきものである。
「1時間ぐらい我慢していれば、すぐにカラッと晴れるさ
 昨日も夕焼けが見られたし!
 また、スコールの後は、今まで以上に素敵な日射しが出てくるだろう。ゆっくり地図を見ながら、回るコースを頭に入れておこう・・・・・。とりあえず、バイクも東屋の屋根の下に入れた。
  <長い沈黙・・・・>
 なかなか、やまない・・・・まあ、ゆっり休めという神の思し召しだろう・・・。  横になったら、いつの間にか寝てしまった。

 そして、顔に当たる冷たい雨のしぶきで目が覚めた。時計を見る。すでに約束の1時間が過ぎているじゃないか。どうしたんだ、雲のやつ。今日は出血大サービスかな???
 余裕があったのはそこまで。 さらに雨が降り続け、時計はすでに11時近くになった。

 徳之島2日目の朝を迎えた。
 すっきり起きられて、気持ちよい。
 夜中、ブルーシートをたたく音がしたので雨かと思っていたら、ガジュマルの実であった。「ガジュマルの木の下でテントを張る」といった、他の人ができないような、素敵な体験ができた喜びがあった。
 朝は、昨日のスーパーで買ったパン2個と野菜ジュースである。ガスコンロの燃料は飛行機で没収されるので、こちらで買おうと思っていたが、結局今日まで買っていない。九州や沖縄は物価が安いので、何か買って食べた方が安上がりなのである。

 一応心配事がなくなったので、ゆっくり景色を楽しみながらバイクを進めた。 少し天候が持ち直してか、ややきれいな海の光景が見えた。  後は、私の夕食だけである。 少し先を行くと、久しぶりにたくさんのヒマワリを見ることができた。

 このキャンプ場は、幹線道路からかなり中まで入っていくところだ。 言い方を変えれば、静かなところだった。
 最初人影が全然見えないので、ここはあっさり却下しようと思った。それでも、キャンプサイトだけは見ておこうとバイクを走らせた。キャンプ場に行くまでの道が、暗い木々に覆われ、じめじめした感じがする。不気味な感じがした。途中で、ヨナマに引き返し、そこで泳ごうと思った。
 しかし、最後まで行かないと後悔しそうなので、先を進んだ。

 このトンネル、予想以上に良かった。時間があれば、もう少し先まで進み、海の見えるところまで行きたいところであった。だが時間がない。あの迷子事件が、今となっては大きい。
 腕時計をちらちら見ながら、この素敵な空間の中に自分の身を置いておける時間の限界まで粘った。
 も・う・ダ・メ・ダ。 
 バイクをスタートさせた。畦のプリンスビーチにむけて、徳之島の北側の海岸線に近い道を進んだ。

 荷物を解かずに、徳之島町にある畦プリンスビーチのキャンプ場に向かうことにした。まっすぐ行くつもりだったが、どうしても気になるところがあった。夜になるとハブが出てくる危険性もあるが、金見のソテツトンネルも見たい。時間との勝負で、とりあえず寄っていくことにした。

 自然が織りなす岩の芸術が無数にあって、どれが観光のメインスポットなのかよくわからなかった。
 しかし、メガネ岩のことは事前の下調べでも頭に入っていたので、これだけは見ていこうと思った。
 何か不思議な空間のような気がした。

 海の方を見た。サンゴが隆起してきたような、ゴツゴツしたようなものが海岸線に広がり、握り拳を思わせるような奇岩が幾つかあった。

 写真を撮って気付いたが、この光景は、今回観光案内所からもらったパンフレットの表紙と同じだ。と言うことは、徳之島観光の顔」だと言うことである。

 道路を走っていたら、「喜念浜海浜公園」という表示板が見えた。ここはきれいな海岸だというリサーチから、最初に泳ごうと思ったら、急に空が暗くなり、少しポツポツを振ってきた。雲のためか、全然海は美しくない。
 雨は一向にやまない。 結局遠くから海を眺めるだけで、ここはスルーした。

 船内に戻り、少し船の中を散策した。絵画が並んでいて、なかなかオシャレな船だと思った。

 それでも飽きてしまい、自分の席に戻る。朝が早かったためか、船に揺られていたら、急に眠くなってきた。2時間ほど熟睡してしまった。

 船室は、鹿児島行きの人が乗る部屋と、他の島行きの部屋とに別れていた。
 徳之島という表示が出ている部屋に入った。がらがらだった。自由席だというので、荷物もあることだし、端っこをキープした。マットのような布団が2つ折りにセットされ、上に毛布が乗っていた。またまた東海汽船と比較してしまうが、マットもなく、毛布もオプションで借りていたので、えらくサービスがいいなと思った。空いていて、私の四方5mに誰もいないのはラッキーだった。

 横になったが、なかなか寝付けない。少し興奮しているようだ。仕方ないので、トイレに寄った後デッキに行き、景色を眺めることにした。