実践の人

 

ペトロ 晴佐久 昌英

突然ですが、晴佐久神父が日常の足として使っている車の名前をご存知ですか。
知っている人にとっては何をいまさらでしょうが、答えは、○○です。
では、現教皇フランシスコが日常の足として使っている車の名前をご存知ですか。
答えは、驚くなかれ、○○です。
しかも、他の車と比較した末にご自身で選んだということで、日産も大喜びとか。
もちろん、それを知った晴佐久神父も大喜び。
だれかを乗せるたびに、「これ、教皇さまもお気に入りの車なんだよ」と、鼻高々。
付け加えて「たぶん、ぼくの真似をしたんじゃないかなあ・・・」。○○に乗り始めたのは2013年です。
エコロジカルな車に乗り換えたいと思っていた矢先に発売された、「100パーセント電気自動車」というのがあまりにも魅力的で、それまでの車が壊れたのをきっかけに、近くのディーラーに行って試乗させてもらったのです。
初めて電気自動車を運転したときの感動は、一生忘れることができません。
信号待ちで車が止まったとたん、無音になり、道端で鳴いている小さな虫の声が聞こえてきたのです。
何しろモーターですから、アイドリングというものがありません。
モーターが止まってしまえば、スイッチを切ったラジコンカーみたいなもので、完全静音なのです。
さらには、モーターならではの加速力!大容量リチウム電池とモーターとアクセルが直結なので、踏めばそのまま、グン、と走り出すわけです。
しかも、いくら踏んでもエンジン音がしない。
まさに異次元の加速感覚でした。思わず、助手席の試乗担当者に「すごいですね。なんだか別の乗り物みたいです」と言ったら、さらりと、「まあ、いわば電車ですから。
エンジンと違って、ギアもありませんし、新幹線と一緒です」と言われ、感動のあまり、その日のうちに契約してしまいました。
電気自動車は、排出ガスゼロです。
当然のことながら、お尻にパイプが付いていません。
電気自動車に乗るようになってから、他の車がガスを吐きながら走っているのがやたらと気になってしょうがないのが何かに似ていると思ったら、禁煙したとたん、他の人のタバコの煙が気になってしょうがないという、あれでした。
教皇フランシスコは、一昨年、エコロジカルなテーマの回勅、「ラウダート・シ」を発表して、全世界にこう問いかけました。
「わたしたちの後に続く人々、今成長しつつある子どもたちのために、わたしたちは一体、どのような世界を残していきたいのでしょうか」。
教皇フランシスコは、自分で運転することもあるそうで、周りの人はひやひやしているとか。
大衆向けの電気自動車を自ら乗り回す教皇の姿は、まさに「実践の人」なのです。

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