光る十字架

 

ペトロ 晴佐久 昌英

カトリック上野教会の目の前を、鉄道の線路が通っています。
何をいまさらと言われそうですが、「教会に秘められた可能性」という意味では、その立地の価値を、私たちは正しく理解していないかもしれません。
目の前を通っているのは、京浜東北線と山手線、東北本線、高崎線、それに常磐線。
いずれも、乗客数、運行本数ともトップクラスの大動脈ですが、では、ここを毎日どれくらいの人間が通り過ぎていると思いますか。
インターネットで上野駅の乗降者数を調べると、1日平均574,513人とあります。言うまでもなく、世界有数のターミナル駅です。
もっともこれは、上野駅で乗り降りした人の数にすぎませんから、乗り換えた人や、通過した人の数を入れると、さらに大きな数字になるでしょう。
逆に、新幹線など、地下を走っている線や、上野から南の利用客は教会前を通っていませんから、それらを相殺して考えるならば、教会前を通り過ぎる人間は、おそらく、1日平均50万人程度ではないでしょうか。
ちなみにこれを書いている今、平日の午後1時ですが、試しに数えてみると、10分間で16本の電車が通りました。
ということは、単純計算で1時間に約100本、1日だとおよそ2000本。1本の電車に仮に500人乗っているとすれば100万人にもなりますから、その半分としても、50万人というのは決して突飛な数字ではないでしょう。
1日50万人ならば、1年で約1億8千万人です。
それだけの人が、私たちの教会の前を通過しているということです。
救いを求める、神の子として。
教会前には広い道があって見晴らしがよく、線路は高架ですから、電車からは教会がよく見えます。
おそらく、東京の教会の中では、電車から最もよく見える教会だと言えるでしょう。
にもかかわらず、実際には、おそらくほぼすべての乗客が、そこに教会があると認知していないはずです。
壁の十字架は目立ちませんし、夜になれば真っ暗ですから。
このたび、委員会で相談して、教会の門の脇に立っている鉄製の大きな十字架を、通年で光らせることにいたしました。
実は、そこにそんなに大きな十字架が立っていることを、私自身も最近まで気づかなかったくらいで、まったく目立っていなかったこともあり、前面にLEDのライトを十字の形に取りつけて、電車から一目でわかるようにしたいのです。
もしも、乗客の50人に1人でも目にとめてくれるならば、1日1万人、年間では300万人以上の人が上野教会の存在を知ることになるわけですから、費用対効果は絶大です。
疲れた心と重い体を電車のドアに預けながら、ぼんやりと過行く街を眺めていると、目の前を光る十字架が通り過ぎていきます。
「あら、あんなところに教会あったかしら。・・・なんで今まで気づかなかったんだろう。・・・結構大きな建物だけど、どんな聖堂なのかな。何かいいお話とか聞けるのかな・・・今度、ちょっと寄ってみよう。場所も線路沿いで、分かりやすそうだし・・・」
光る十字架が、これから何人の人を救うことになるかと考えると、ワクワクします。

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