西川神父様から松谷先生へのお手紙

 

セバスチャン 西川 哲彌

寒さが一段と厳しくなってまいりましたが、先生いかがお過ごしでしょうか。
どんなに寒くても一日に一度はアトリエに下りて作品に手を入れておられましたね。
さて、最近、先生にお伝えしたいニュースがあります。
それは、聖堂の十字架の道行きのレリーフを写真に撮る作業が行われているというニュースです。
話しの発端は四句節の信心業である十字架の道行きのテキストを自前で作ろうという事でした。
出版されているものは、どれも使い勝手が悪く、いいテキストはないかという意見がでたことでした。
それが自然と、せっかく聖堂にすばらしい道行きのレリーフがあるのだからこれを使っていいものが出来ないかという案でした。
早速、その話題が司牧評議会にかけられ、形にしてみようという運びになり、具体化されることになりました。
幸い、信者さんのご主人で写真家の平賀茂さんがいらしゃりますので広報部のほうから交渉が始まりました。
忙しい方なのでどうなることかと思っていましたが、引き受けて下さることになり、先月あたりから作業を始めて下さいました。
そして今月九日、作品の一部を教会委員の眼で確かめるという運びになったのです。
写真で見るレリーフは、まるで、十字架を背負ってゴルゴタの丘へ登るイエズス様が生きているように見えたのです。
撮影は夜間に行なわれ、真暗らになった聖堂でレリーフにライトをあてて行われました。
するとレリーフの人物や風景が陰影をもってくっきりと浮かびあがり、実物の雰囲気が再現されたのです。
いつも聖堂の電気の明るさで漫然と見ていた道行きは、平面的で、レリーフでありながらも立体感がない状態でした。
それが写真になってはじめて作品のすばらしさと奥深さを教えられたのです。
撮影作業はほぼ終了し、あとは製本作業に入ることになります。
四句節に教会での道行きの祈りに参加できない方でも、このテキストを見ながら自宅でも教会にいるような気持ちでお祈りが出来るでしょう。
レリーフを改めてよく見ると無数のひびが入っており何十年の間に起きた地震が記録されているような状態です。
聖堂との壁に密着して設置されている作品ですから取り外して修復すということは出来ないと聴いています。
この作品は祭壇と同様、上野教会そのものであります。
でもこのたび道行きのレリーフが写真としておさめられたことは、この作品が後世に末長く伝えられるということでもありますので、ひと安心です。
上野教会の聖堂は先生の作品で満ちています。
ごミサをささげるたびに若き先生が教会にそそぐ情熱を感じさせて頂いています。
ありがとうございます。
写真が出来あがったら早速にお届けしようと思っています。
一段と寒い日々が控えています。
どうぞお風邪など召されませぬようご自愛下さい。(松谷先生は現在95歳ですが、お元気で製作にむかっておられます。)

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