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バスで行く「奥の細道」(その24)  ( 「念珠ケ関」: 山形県)



(写真は、念珠ケ関の関所跡)  

前回の「酒田」に続き、今回は「念珠ケ関(ねずがせき)」
です。

我々の「奥の細道」バス旅行は、山形県の酒田市を出た後、
バスで40分で、同じ県内の鶴岡市に着きました。

「藤沢周平」が愛した故郷の「鶴岡」の風景は、しばしば小説
の舞台の「海坂藩」として登場します。


車窓から上の写真の鶴ヶ岡城跡を見物したあと、鶴岡の市街地を
少しだけ散策します。

鶴岡の街は、写真の様に、少し寂れていますが、でもレトロな
感じで雰囲気があります。


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上の写真は、荒れ果てていますが、鶴岡城下の庄内藩士「長山
重行宅」跡で、芭蕉はここで3日間を過ごしました。

下の写真は、「内川乗船地」跡です。

鶴岡城下の長山重行宅を出た芭蕉は、近くの内川の船着場から、
船で酒田に向かいました。

我々のバス旅行は、鶴岡市の郊外の温海(あつみ)町で、下の
写真の塩俵岩(しおたわらいわ)の「芭蕉句碑」を見るために
下車します。


 ”あつみ山や 吹浦(ふくうら)かけて 夕涼み”

 (折からの暑さに縁のある名の「あつみ山」が彼方に見え、
暑気を吹き払うという名の「吹浦」も見渡され、この眺望を
見渡しながらの夕涼みは気持ちのよいことよ。)


 (塩俵岩)




次に、我々のバス旅行は、同じ温海町の鼠ヶ関(ねずがせき)で
下車して、上の写真の「念珠ヶ関(ねずがせき)」跡を見学します。

実は、ここ鶴岡市の温海(あつみ)町の鼠ヶ関には、関所跡が
二ヶ所あります。

古代の関所址である「古代・鼠ヶ関(ねずがせき)」と、江戸時代
に設置されていた上の写真の「近世・念珠ヶ関(ねずがせき)」
です。

同じ「ねずがせき」と読みますが、古代と近世で字が異なり、
また場所も少し離れていて違う場所です。

「古代・鼠ヶ関」は、平安時代には、白河関、勿来関(なこその
せき)と共に「奥羽三大関所」と呼ばれました。

もともとは、蝦夷(えみし)の侵入を防ぐための関でしたが、
出羽国(山形県)と越後国(新潟県)との国境に位置していたので、
東北地方への玄関口となりました。

1186年、兄の源頼朝に追われた源義経の一行は、奥州・平泉を
目指して、京から琵琶湖を渡り、越前、越後と日本海を北上、
ここ念珠ヶ関に着きました。

歌舞伎の名場面「勧進帳」の舞台となったのは、一般には、
現在の石川県の安宅関(あたかのせき)とされています。

しかし、石川県の海岸線に安宅という地名はあるものの、
平安〜鎌倉期に、この安宅関が実際に在ったかどうかは疑わし
いとされています。

逆に、ここ鼠ヶ関には、義経から伝えられた矢立て、扇、般若心経
が残っているらしいです。

更に、ここには、関守の富樫左衛門と同じ富樫姓が多いことなどから、
「勧進帳」の関所は、実はここ「念珠関」だと、地元の温海(あつみ)
観光協会は主張しています。


上の写真は、ここ「念珠ケ関」跡が、「勧進帳」の「本家」だ
と主張する看板です・・・ 

「勧進帳」とは、寺院建立の資金集めの趣意を記した巻物で、
山伏などが、民衆から寄付を集めるときに読み聞かせます。

義経の一行が、山伏姿で「安宅の関」にさしかかり、関を
越えようとしたその時に、関守の富樫に見とめがられ、詮議が
始まります。

弁慶は、白紙の巻き物を広げ、あたかも勧進帳であるかのように
朗々と読み上げます。

しかし、顔が義経に似ていると食い下がる関守の富樫の前で、
弁慶は、「義経に似ているお前が憎い!」と、主である義経を
打ちすえます。

その弁慶の忠義の心に感じた富樫は、その嘘を見破りながらも、
義経一行を通してやります。

現在の「念珠ヶ関番所跡」は、弁慶の勧進帳の時代のものでは
なく、江戸時代のもので、「近世・念珠ヶ関」と呼ばれ、
明治5年に廃止されました。

そして、大正13年に、内務省が「史蹟・念珠関址」として
指定史蹟に認定しました。

上の写真は、その内務省が認定した際の石碑で、正面には
「史蹟念珠関址」、右側面には「内務省」、左側面には
「昭和二年三月建設」と刻まれています。




我々は、次に、念珠ヶ関の近くの温海町の弁天島へ向かいます。

源義経は、舟で念珠ヶ関に着き、海に突き出したこの弁天島に
上陸しました。



写真は、「源義経碑」(源義経の上陸記念碑)で、昭和41年の
NHK大河「源義経」放映の際に、「源義経」の作者で直木賞作家の
「村上元三」の揮毫により建てられたものです。








我々のバス旅行は、念珠ケ関跡・弁天島を出た後、日本海の
海岸沿いに南下します。


やがて、山形県から、新潟県の村上市に入り、村上市の
笹川集落の「笹川流れ」の絶景の海岸線に沿って進みます。





見事な景観を誇る延長11キロメートルの「笹川流れ」は、
海水が日本屈指の透明度を誇る国の名勝天然記念物です。

海水浴、釣り、キャンプ、遊歩道散策はもちろん、遊覧船から、
海岸にそびえ立つ雄大な造形美の岩を眺めることも出来ます。


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