独断的JAZZ批評 488.

ENRICO PIERANUNZI
若干、叙情に流された趣がある
"PARISIAN PORTRAITS"
ENRICO PIERANUNZI(p)
1990年4月 スタジオ録音 (EGEA : SCA 137)

再発されたENRICOの2枚目。先に紹介した"YELLOW & BLUE SUITES"(JAZZ批評 487.)と同じ1990年の録音で8ヶ月早い4月の録音。
ENRICOについてはEVANS系だとか耽美的だという言葉を鵜呑みにしていたが、イメージを払拭させたのは2001年録音の"LIVE IN PARIS"(JAZZ批評 324.)で、HEIN VAN DE GEYNと ANDRE DEDE CECCARELLIとのトリオは激しくドライヴし刺激に満ちていた。
さて、このアルバムであるが、ソロ・アルバムである。ピアニストの実力はソロでは誤魔化しが効かない。本当の実力が厭でも表れてしまう。逆に、相当の実力者でないとCD1枚60分間をピアノ・ソロでもたすことは出来ないだろう。
僕が「manaの厳選"PIANO & α"」にピックアップしたアルバムをチェックしてみたら以下の通りだった。掲載順に
1.KEITH JARRETT "THE KOLN CONCERT" (JAZZ批評 3.
2.BRAD MEHLDAU "ELEGIAC CYCLE (JAZZ批評 2. & 278.
3.GIOVANNI MIRABASSI "AVANTI!" (JAZZ批評 60.
4.KEITH JARRETT "FACING YOU" (JAZZ批評 79.
5.JOERG REITER "CAPRICE" (JAZZ批評 87.
6.RAY BRYANT "ALONE AT MONTREUX" (JAZZ批評 173.
7.BRAD MEHLDAU "SOLO PIANO LIVE IN TOKYO" (JAZZ批評 219.
8.
STEFANO BOLLANI "SMAT SMAT"
 (JAZZ批評 249.
9.BILL EVANS "ALONE" (JAZZ批評 298.
10.KEITH JARRETT "THE CARNEGIE HALL CONCERT" (JAZZ批評 370.)
11.本田 竹広 "MY PIANO MY LIFE 05" (JAZZ批評 389.
12.小曽根 真 "FALLING IN LOVE, AGAIN" (JAZZ批評 436.
13.RICK ROE "MINOR SHUFFLE" (JAZZ批評 478.
以上13枚。意外と多いのでびっくりした。KEITHが3枚にMEHLDAUが2枚。やはり実力者が揃った。

では、本題。

@"LIGHEA" 
オープニングを飾るに相応しい美しいENRICOのオリジナル。
A"NEVER BEFORE NEVER AGAIN" 
多分に叙情的な演奏。洗練された品の良さを感じるが・・・。
B"FILIGRANE" 
雰囲気的には前曲と似ている。中音域を中心とした演奏で、静かな湖面にわずかに波立つ波紋のようだ。
C"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE" COLE PORTERの曲だが、フリー・テンポの抽象画的アプローチが施される。
D"MILADY (FOR ADA)" 
E"MY FUNNY VALENTINE" 叙情性たっぷりの美しいテーマ演奏で始まる。
F"PERSONA" 
同じイタリアのGIOVANNI MIRABASSIなんかと相通ずる美しさ、耽美性を持っている。
G"IMPROVISATION 1949" 
H"CANTO DELLA SERA" 
哀愁を帯びた演奏の中で情念の熱きを語っている。
I"IF YOU COULD SEE ME NOW" TAD DAMERONの名曲。静けさの中に垣間見れる熱き心。
J"FASCINATING RHYTHM" ENRICO得意の不協和音によるアプローチで始まる。切れのある演奏で、こういう演奏が一番ENRICOらしいと思うけど、いかがだろう
K"PER FORTUNA" 

CEIJ以外はENRICOのオリジナル。似たような曲想、似たようなアプローチで演奏にメリハリが欠ける。特に前半部は中音域を中心とした演奏スタイルで、もっと重低音や高音部があれば良かった。それとリズミカルな曲が少なく、躍動感という点で心沸き立つような演奏がないのが残念。先にあげた13枚のソロ・アルバムとの相違点を挙げれば、そういうところだろう。若干、叙情に流された趣がある。   (2008.06.27)