ENRICO PIERANUNZI
美しさ、そして、溢れる躍動感と緊密感
ジャズはこうありたい
"YELLOW & BLUE SUITES"
ENRICO PIERANUNZI(p), MARC JOHNSON(b))
1990年12月 スタジオ録音 (CHALLENGE RECORDS : CHR70131)

少し古いがENRICOの1990年頃のアルバムが再発されたので2枚ほど購入してみた。先ずは、その1枚。いまやヨーロッパを代表するジャズ・ピアニストとして押しも押されぬ存在になったENRICOのMARC JOHNSONとのデュオ・アルバムだ。MARC JOHNSONとはオリジナル・トリオとして発売されているアルバムも多い。そういう点でも気心の知れているプレイヤー同士のデュオと言える。
興味深いのは1995年録音の名盤、"SEAWARD"(JAZZ批評 352.)でも演奏されている曲が3曲(
@AF)ほど入っているので、聴き比べてみるのも面白い。因みに、"SEAWARD"ではHEIN VAN DE GEYN(b)とANDRE CECCARELLI(ds)が参加している。(なお、このトリオでは、僕が1番の傑作と推奨する2001年録音の"LIVE IN PARIS"(JAZZ批評 324.)がリリースされている)

@"JE NE SAIS QUOI" ENRICOのオリジナル。ドラムレスを意識させない分厚い演奏。美しさ、そして、溢れる躍動感と緊密感。ジャズはこうありたい。

A"I HEAR A RHAPSODY" しっとりしたピアノのイントロ、じっくりと耳を傾けたい。やがて気持ちの良い4ビートを刻んでいく。やはりこういう躍動感がなければジャズとは言えまい。
B"I SHOULD CARE" 
フリー・テンポのピアノとベースのテーマで始まり、徐々にイン・テンポに移行していくそのさまがいい。後半部では4ビートを刻んだかと思えば、倍テンになったり、また、フリー・テンポに戻ったりスリリングな展開で終わる。
C"FRAME LINE 1"  
Bから連続して突入。JOHNSONのアルコ奏法にピアノが絡む。
D"PRINCES AND PRINCESSES" 
これも途切れることなく"SOMEDAY MY PRICE WILL COME"のテーマに入っていく。テーマ崩しのENRICOの面目躍如。後半部では超高速4ビートを刻み激しくドライヴする。JOHNSONの激しいベース・ソロのままEに雪崩れ込む。
E"FRAME LINE 2" 
「繋ぎ」の44秒。
F"YESTERDAYS" Eから連続でテーマに入る。お馴染みのテーマ崩しで入るスタンダード・ナンバーだが、これぞPIERANUNZI・WORLDとも言えるものだろう。Aからこの曲までが"YELLOW SUITES"と呼ばれるスタンダード中心の編成で途切れることなく一挙にこの曲まで進む。

G"SINGING ALL TIME" 
@とこの曲以降が"BLUE SUITES"と呼ばれるオリジナル中心の編成になっている。この曲以降は一転して抽象画的色彩やグルーヴ感のある演奏が主体になってくる。
H"MINDING NO TIME" 
3分弱の次の曲への「繋ぎ」
I"BLUE IGOR" メロディアスな演奏は影を潜め、グルーヴ感のある演奏へとシフトしていく。丁々発止の展開が面白い。
後半には、グルーヴィな4ビートを刻む。フ〜ム、やるねえ!
J"BLUE MONK" 
1分強のエンディング。

僕がENRICO PIERANUNZIに目覚めたのは2001年録音でリリースは2006年の"LIVE IN PARIS"で、それ以降、"SEAWARD"や"LIVE IN JAPAN"(JAZZ批評 426.)をゲットした。今回のアルバムもそれを遡る形になった。しかし、今から遡ること18年も前にこのような素晴らしいアルバムを残していたとは知らなかった。ENRICOの素晴らしさに気づくのが少々遅かったようだ。でも、今日、出会えてよかった。名盤は何十年と時間が経とうが色褪せることがない。
このアルバムとの出会いを感謝しながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加しよう。   (2008.06.18)



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独断的JAZZ批評 487.