RICK ROE
軽妙な語り口でエンターテイメント風に楽しませてくれる
肩の力を抜いて心地よいピアノの音色に身を任せたい
"MINOR SHUFFLE"
RICK ROE(p), JOSEF DEAS(b: B、E、I), THADDEUS DIXON(ds: B、E、I)
2007年1〜8月 スタジオ録音 (UNKNOWN RECORDS )


初めて聴くピアニストだ。最近は初めてのピアニストでも輸入JAZZ・CD専門のショップでは試聴サイトへのリンクが張ってあったり、数曲が試聴できたりするが、これは本当に有難い。このアルバムも数曲を試聴し、これならOKと思って購入した。試聴できなければ、購入することはなかっただろう。今までのジャズ人生の中でも全く名前の記憶のないピアニストなのだから・・・。
アメリカのミシガン州界隈で活躍するピアニストだという。日本ではほとんど無名と思われるピアニストがこれほどの腕前を持っているとはアメリカのジャズの懐の深さを感じさせる。かつて紹介した"ROMAN SUN"(JAZZ批評 167.)のJHON HARRISON Vもそういうピアニストの一人だった。

このアルバムは基本的にピアノ・ソロ・アルバムだ。3曲(
BEI)あるトリオ演奏も素晴らしく、アルバムに花を添えている。ほとんど無名に近いピアニストがこれほどのソロを展開するとは!やはり何といってもピアニストの実力を遺憾なく発揮できるのはソロだと思うし、その分、粗も見つけ易い。それ相当の実力がないとソロ・アルバムを作ることは難しい。実際、超一流と言われるピアニストしかソロ・アルバムを残していないものだ。CD、約60分を飽きさせずに演じきるのは、並大抵の実力では到底かなうことのない離れ業なのだと思う。

@"MINOR SHUFFLE" 最初の一音を聴いて、先ず、音が良いと思った。ブロック・コードといいシングル・トーンといい、いい音色だ。そしてテーマが良い。このテーマを聴いただけでこのアルバムの素性の良さというものが認識できる。
A"BEDOP" ひょうきんな出だしから珠を転がすようなピアノ・プレイにシフト。中盤以降には左手がベース・ラインを刻み躍動感が増してくる。
B"NIGHT AND DAY" ソウルフルなイントロから始まるトリオ演奏。中盤からは結構ヘヴィーな4ビートで躍動する。
C"GELISPIE'S COMIN' TO TOWN" 
D"PROFESSER SWEETMUSIC" 
E"THE ISLAND" トリオ演奏。この曲を聴くとSTEVE KUHNの"OCEANS IN THE SKY"(JAZZ批評 82.)を思い起こさせる。良い演奏だ。
F"LUCKY TO BE ME" 軽妙な小憎らしいタッチ。
G"LUSH LIFE" この人、和音の音色が本当にきれい。音色がいいというのはピアニスト、いや、プレイヤーにとってはとっても重要な要素だ。
H"CECELIA" 
I"KNOW NOW" 
J"APRIL IN PARIS" 
K"MOMENT'S NOTICE" JOHN COLTRANEのこの曲が入っているのが嬉しい!ブロック・コードで弾くテーマが素晴らしい。
L"THE MORE I SEE YOU" さらにアフター・ビートで指でも鳴らせば、ご機嫌だ。
M"EMBRACEABLE YOU" 聞き古されたスタンダード・ナンバーをさらりと弾いてみせた。この爽やかさが売りのひとつだろう。

RICK ROEの提供するオリジナルは@、A、C、D、Iの5曲。それぞれどの曲も個性的で楽しめる。あとは1度や2度は聞いたことのある曲がずらりと並んだ。曲のバランスも良い。
このRICK ROEというピアニストは写真で見る限り、黒尽くめの服を着、黒のハットを被り、黒いサングラスをしている。こういうキャラクターで売っているのだろう。演奏が素晴らしいのでそういうことが嫌味に感じない。
こいつは掘り出し物だ。ソロ・ピアノとして十分素晴らしいし、3曲入っているトリオ演奏も楽しめる。全14曲、軽妙な語り口でエンターテイメント風に楽しませてくれる。肩の力を抜いて心地よいピアノの音色に身を任せたい。とっても得した気分で、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2008.04.14)



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独断的JAZZ批評 478.