独断的JAZZ批評 928.

TAMIR MILER TRIO
「ひとりよがり」
"WALK IN SPIRIT"
TAMIR MILER(p), GILAD EPHRAT(b), ROY OLIEL(ds)
2013年8月リリース スタジオ録音 (DISK UNION :DUJ- 123)

最近のイスラエルのグループの活躍ぶりといったら枚挙に暇がない。御大・AVISHAI COHEN(JAZZ批評 921.)のトリオをはじめ、YARON HERMAN(JAZZ批評 898.)、OFIR SHWARTZ(JAZZ批評 843.)、ROY ASSAF(JAZZ批評 892.)、SHALOSH(JAZZ批評 907.) ってな具合だ。
またまた現れたのが本アルバムのピアニスト、TAMIL MILERだ。8歳から音楽を学んだというし、既に2枚のリーダー・アルバムをリリースしているらしい。
最近のイスラエル・ブームに、柳の下のドジョウはいるだろうか?全曲、オリジナルというのが引っ掛かる・・・。

@"JORDAN VALLEY" 流れるような美メロのテーマでスタートする。まるでクラシックを聴いているかのよう。
A"NO GRAVITY" 
これも似たような雰囲気で、少々大仰なピアノ・プレイではある。どこかエキゾチックな匂いのするアルコ奏法も拍車を掛ける。
B"YAARA" 
リリカルな演奏だ。即興プレイの意外性みたいなものがない。全て「お約束事」みたいな・・・。
C"OVERTURE" 
仰々しい演奏。このあたりまで来ると、全11曲オリジナルで埋めた弊害が出てきている。似たような彩りばかりで次第に飽きてくる。
D"DESTINATION" 
今度はラテン・タッチのリズミックな曲想だ。
E"CLEAR" 
軽やかなタッチで美旋律を紡いでいく。美メロファンには堪らない?
F"WATERFALLS" 
クラシカルなアルコ奏法とピアノのインタープレイ。
G"TEARS" 
美メロピアニストなのでゴツゴツした演奏でも美メロになってしまう?
H"WALK IN SPIRIT" 
ベースのアルコがフィーチャーされる。ピアノはあくまでも美しい。
I"YOU'RE BACK" 
J"PASSION FRUIT"
 タンゴ調。手を変え、品を変えてみたけれど・・・。

案の定と言うべきか、全てオリジナルで埋めた選曲は同じような色彩の演奏で固まってしまった。若いミュージシャンが自分だけのオリジナルで全てを埋めたくなる気持ちは分からないではないが、それは良いオリジナルを書けてからのこと。
世の中には「スタンダード」という、何十年もの歴史の中で皆から愛されてきた素晴らしい曲がある。こういうスタンダードで腕を磨いてからオリジナルにトライしても遅くはない。残念ながら、全11曲の中に「スタンダード」に勝る曲はなかった。こういうのを「ひとりよがり」というのだけど・・・。
とは言え、美メロのヨーロピアン・テイストを好む方には受けるかも。   (2015.03.30)

試聴サイト:
http://tamirmilertrio.bandcamp.com/
       
このサイトでは全曲フルに試聴できる。



.