独断的JAZZ批評 927.

ATZKO KOHASHI
3拍子揃った素晴らしいアルバム
"LUJON"
小橋敦子(p), FRANS VAN DER HOEVEN(b), SEBASTIAAN KAPTEIN (ds)
2014年3月 スタジオ録音 (CLOUD : DDCJ 4016)


小橋敦子は初めて聴く。
アムステルダム在住の小橋は翻訳家、エッセイストとしても活躍している。今までにデュオを中心としたフォーマットで何枚かのアルバムを出しているが、トリオというフォーマットは8年ぶりということだ。
本レーベル"CLOUD"も女手一つで育て上げた日本のレーベルだ。そして、本アルバムがMAGNUS HJORTHの"SOMEDAY, LIVE IN JAPAN"(JAZZ批評 609.)から数えて5年目の記念すべきアルバムとなった。ヨーロッパ、とくに、デンマークのジャズに魅せられて、レーベルまで立ち上げてしまったプロデューサー・米山女史に熱い拍手を贈りたい。

@"ICEBREAKER" これから始まる本アルバムを暗示する前奏曲のようなトラック。
A"SMILE" 
CHAPLINの書いた原曲の美しさを留めながらテーマを崩している。音数少なめ目で一音一音が心に沁みる。インタープレイを噛み締めたい。
B"FOOTPRINTS" 
多くのミュージシャンが採り上げるW. SHORTERの佳曲。一捻りしたアレンジも面白い。身震いするような緊迫感が堪らない!
C"FRAN-DANCE" 
M. DAVISの曲。選曲がなかなか面白い。"SMILE"と"EMBRACEABLE YOU"以外は結構マイナーな曲だ。
D"LUJON" 
HENRY MANCINIの曲。マレットを使ったドラミングに乗った少し怪しげなきな臭さが堪らない。ピアノの一音一音に味わいがある。
E"MAGNOLIA" 
「モクレン」のことらしい。
F"GENTLE PIECE" 
静かに躍動している。静謐感・・・。そして高揚感。
G"E.S.P." 
Bに続いてW. SHORTERの曲。少ない音数で回すインタープレイ。演奏に上質感がある。
H"SWEET LIES" 
「甘い嘘」 なんやら意味深なタイトルだ。3人のインプロビゼーション。
I"BERIMBAU" 
このベース音、堪らんなあ!それに絡むブラシ捌き!緊迫感とグルーヴ感溢れるデュオ。
J"QUIET NOW" 
精神科医でもあったDENNY ZEITLINの曲だという。3者のインタープレイに暫し耳を傾けたい。
K"LAST TRAIN" 
高速4ビートを刻んでグイグイ進むインプロビゼーション。最終電車には間に合ったのだろうか?
L"EMBRACEABLE YOU" 
何気にこういうスタンダードが入っていると心が和む。4分弱で終わってしまうけど、もっともっと聴いていたい・・・。
M"LUJON-ALTERNATE TAKE"
 一音一音に耳を澄ませたい。

瑞々しさに溢れたピアノ・トリオだ。静謐感もある。音数少なめで上質感がある。つまり、安っぽくないのだ。とても良い音楽を聴いたという気分になる。
ドラムスのKAPTEINは刺身のつまのように控え目ではあるけど、なくてはならない彩りを添えている。3人それぞれがなくてはならない存在としてリスペクトしている。
併せて、記しておきたいのが録音の良さ。ベースの箱鳴りの太い音色、ビート感のあるピチカート!繊細なブラシやハイハットの音色!そして瑞々しいピアノの響き!
極上のピアノ・トリオの音色がここにある。可能な限りの大音量で聴くことをお勧めしたい。立体的と思える音像が目の前に立ち上がってくるはずだ。
上質感たっぷりのジャケット・デザインもこのアルバムに相応しい彩りを添えてくれた。
本アルバムは演奏の良さ、録音の良さ、ジャケットの良さで、3拍子揃った素晴らしいアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
CLOUD、5年目のマイルストーンとして記憶に刻んでおきたいアルバムだ。    (2015.03.27)

試聴サイト:http://www.atzkokohashi.com/lujontriallistening.htm



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