このはなさくや図鑑 〜美しい日本の桜〜

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学名・種名
Cerasus maximowiczii (Ruprecht) Komarov
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ミヤマザクラ
深山桜・白桜

高木性
樹形は卵形状、傘状形
総状花序(長さ5cm〜 10cm)

 ミヤマザクラの仲間は、日本、中国南西部、朝鮮半島北部、ウスリー、アムール川流域、
サハリン、千島列島に分布し、6種が確認されています。
分布の中心は雲南・四川省ですが、内1種、ミヤマザクラ(深山桜)のみが、
中心分布地から離れ、日本の北海道から九州の山地に自生します。
・総状花序
・残存性のある苞葉
・果期にも苞葉はのこります。
・花色は白色〜淡紅色
・花径は1.5cm〜2.0cm(小輪)
・葉の展葉後、遅れて開花する
・花弁の先は二裂しない
・花床筒は、鐘形で有毛
・萼片は広い三角形で縁は、ほぼ鋸歯があり、斜上毛があります
・小花柄に斜上毛があります。
・葉身は倒卵形〜卵状楕円形
・葉身の先は尾状鋭尖形〜短尾状鋭尖形
・葉身の両面とも有毛
・葉縁の鋸歯は、三角形で粗い重鋸歯、先には腺があります。
・葉身の基部に蜜腺がある
・葉身の基部はくさび形
・葉柄には開出毛がある
果実は、直径0.7cm〜0.9cm位、
黒紫色で苦みがあります。

樹皮は紫褐色〜灰褐色、横に裂けやすく、皮目は目立ち横並びです。


 Prunus maximowiczii Ruprecht in Bull.Acad.Sci.St.Petersb.15:131(1857)
 -Cerasus maximowiczii(Ruprecht)Komarov in Komarov et Klob-Alis.,Key Pl.Far East.Reg.USSE 2:567(1932)



 本種の変種は、野生においては他の桜との交雑種は確認されていませんが、
北海道松前町においては、本種とサトザクラを交配させた栽培種が存在します。
 また、このサクラは、一見すると「桜」には見えません。
 花弁の先は2裂することはなく、花序も総状で、果実には苞葉が残ります。
 その他、展葉後に開花するというヤマザクラに見られるようなタイミングではなく、
完全に展葉が完了して後、暫くして美しい白い花を咲かせます。
 その人知れずひっそり咲く容姿は、深山の短い春を飾る美しい「桜」であり、
私は野山でこの「桜」に出会うたび、女王の風格すら感じます。
 本種は、他のサクラとの形態の相違から、
日本に自生するサクラ属の中でも最も原始的な「桜」と推定され、
分子遺伝学の見地からも、日本に自生する類縁の他9種のサクラとも
遺伝子が最も離れていることが確認されています。
 日本の桜の中では、最も遅くに開花します。



文・撮影:藤原 このはなさくや図鑑〜美しい日本の桜〜
桜樹学・桜の世界1 野生種編 P61-62

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