螺旋は続く
 
 
プロローグ
 すべては二年前のリングから繋がっていたのかもしれない。そう、リングの一端が切れてできた巨大な螺旋はまだきえていなかった。
 
 二年前の第21回大会で左手親指を傷めた数ヶ月後、右膝の裏側に妙な違和感を感じた。
 膝を深く曲げると痛くて一定以上曲げこむ事ができない。うかつに膝を着いてもズキッと痛む。
 右膝は学生時代に少し傷めたことがあり、その後たまに痛む事はあったのだが、こんな痛み方は始めてだった。
 第20回大会で捻挫して以降にひねったりした覚えはないし、負荷かけたのは前の週に家族で隣県の山へ遊びに行ったくらい。そういえば数日前に風邪引いたときに全身関節痛があったがその名残かな?っとか思い、まあ、ほっとけば直るだろうと、その日はそのまま就寝した。
 
 翌朝、痛みはまだ退いてなかった。
 ただ、痛みがずっと続くわけではなく、痛かったり痛くなかったり、っで普段どおり仕事へ向かったわけだが、通勤電車を下りて改札へ向かって歩いている時、急に激痛が走った。
・・ぅう、、、歩けない。。。
 膝に力を入れ関節を動かさないようにだましだまし歩いていると、自然と痛みが退き、普通に歩けるようになった。
 何だったんだろう?っと思いながらもそのまま出勤したのだが、仕事の途中でちょっと席を立って歩く時に再び激痛が・・・。
 トイレでンコする時も膝を深く曲げると痛いので右膝を伸ばして片足スクワット状態で手すりにぶら下がりながら雉撃ち。
 
 このままだと仕事に差し支えるため、とりあえず仕事を休んで病院で見てもらう事にした。
 
 まず膝のレントゲンをとって・・・
「ちょっとそこのベッドに仰向けになってもらえますか?」
っで右脚つかまれてぐりぐりとこねくり回されて・・
「ァンギャ〜※☆!★%@@@@!、この脚もういらんけぇ、持ってってくれ〜!!」
っと叫んでしまいそうなくらいな激痛が・・・。(すみませんちょっと表現がオーバーだったかもしれません。。。笑)
 
 医者いわく
「右膝関節が少し緩いみたいですね。膝の故障で普通疑われるのは半月盤か十字靭帯か液胞で、十字靭帯を痛めた時は内出血やひどい腫れがある。液胞の場合は触ると膨らんだところがあるのが分かる。それらが無いのなら半月盤ですかね?このままほおっておくと軟骨痛めていわゆる関節ねずみになることもありますよ。レントゲンだけではよくわからないのでMRIも撮って見ましょうね。」
っと翌週MRIを撮ることにしてその日の診断は終わったのだった。
 
 っで、不思議なことに、その晩からは激痛はすっかり無くなり、膝を深く曲げる事もできるようになった。ただ、膝を曲げ伸ばしする際にパキパキと音が鳴るのと体重をかけた際のぐらついた不安定感はそのまま残ったのだった。
 
 その年は幸いにも(当地のかたには不運な低気圧の災害で)第22回湧別原野オホーツク100キロクロスカントリースキー大会が中止となり、膝に負担をかけることなく一年以上静養することかできた。その間運動も釣りも控えヒアルロン酸を摂取し続け膝の違和感もかなり抜けてきた。
 そして今シーズンはこれまた幸いにも85キロメートルではなく50キロメートルで再開とのこと。この一年半、運動らしい運動を控えていた私にはちょうど良い復帰戦である。
 
 大会要項が届くや否やすぐにエントリーし、板のチューンアップもボチボチとすすめ、二年ぶりに北の大地を踏みしめることとなった。
 この時はまだ、螺旋が未だに自分を取り巻いているとは知るよしもなかった。
 
 
2月21日
 パインの散歩を済ませて公共交通機関を乗り継ぎ空港へ。お土産のもみじまんじゅうを購入し、スキップで保安ゲートと搭乗口をくぐり抜けた。
 フライトは快適。白山アルプス御嶽山、富士山まで見えた。千歳到着後、帰りに買って帰る土産物を探索し、地下に降りて快速エアポートで札幌へ。
 暖房効き過ぎで暑かったです。
 
 札幌に着いてまず行うのは遠軽往復切符の購入。
 駅裏のサンコスモは移転して少し遠くなっていた。
 外の風は結構冷たいが、風裏ではさほど寒くない。地下街に逃げ込む必要もない。切符を購入し、緑の窓口で指定席を確保して手袋も帽子も着用しないまま駅から南下。何時ものようにしばらくニッセンで油売って、ホテルへ移動しチェックイン。
 一休みした後にちょっと歩いて山岡屋へラーメンを食べに行った。
 山岡屋は北海道には珍しく豚骨ベースらしく、味は醤油、味噌、塩の三種類。脂の量、味の濃さ、麺の硬さが三段階に選べるのがgood!床ヌルヌルで期待させます。
 とりあえず醤油の普通を注文したが、脂少なめが良かったみたい。それと、もうちょっと切れのいい海苔使って欲しいね。堅すぎ。
 腹ごなしが済んだらコンビニで夜食と朝食を買ってホテルへ戻り洗濯して就寝。
 
 
2月22日
 7時起床。前日買ったパンとサラダを食べ一風呂浴びて8時過ぎにチェックアウト。遠軽に着くのが13時過ぎるので、昼飯用にパンかおにぎりを買って行こうかと悩んだが、今日は列車に乗って移動するだけなので特に腹も減らないだろうと思い何も買わずにホームへ上がった。
 ホームに上がってオホーツク3号を待つ。乗車口を示すプレートも眺めていてL特急ライラックがなくなってる事に気づいた。スーパーカムイってのがライラックの後継なのかな?(単なる改名?)
 オホーツク3号は定刻通り到着。乗り込んだらひたすら寝るのみ。途中目が覚めたのは深川、旭川、上川の三カ所だけ。
 っで、上川過ぎた所で何やら線路沿いの木の上に巨大な固まりを発見!
 一瞬子グマかと思ったが、なんとでっかいワシだった!感動の出逢い!(尾羽が白かったのでその時はオジロワシだろうと思った。・・ちなみにクマは冬眠中のはず・・・爆!)
 上川は以前にエゾシカの群れも見たことがある。自然度の高い地域なんですね。
 
 オホーツク3号は石北峠を抜け、白滝から丸瀬布へと進んでいく。白滝あたりでは特に感じなかったのだが丸瀬布以東は非常に雪が少ない感じ。
 それにしても遠軽でのJRとバスの乗り継ぎってなんで????。JR降りてバスターミナルへ行くと、交差点の信号で待ってる時にバスが発車してしまった。地元でも評判の悪いダイヤらしい。
 バス乗り損ねたのでしばし遠軽散策。次のバスで中湧別へ。ホテルに着くとおばちゃんがいつもの笑顔で出迎えてくれた。今年は冷えるばかりで雪がなかなか降らないらしい。
 晩ご飯はボリュームたっぷり!。食べ過ぎて寝付けなかったのは言うまでもない。
 
 
2月23日
 6時過ぎに目が覚めテレビを付けてみると何やら科学番組で海苔養殖、そのまま観ていると、次の番組で札幌国際スキーマラソンが放送された。96歳のスキーヤーも頑張ってました。
 わしが出場した頃に比べてコースも変更され、内容も良くなってる感じ。
 朝飯食べて8時からちょっくら練習に出かけた。
 なんと気温−2℃、雪温0℃。少し走るだけで汗が出てくる。
 これってはっきり言ってもみのき森林公園のが寒いで!。
 三十分走っただけで手袋が汗でびしょぬれになってしまったので、練習を止めてホテルへ退散。明日はもう少し冷えるという予報に期待したいところだ。ただ風は吹いてほしくないね〜。
 
 ホテルで少しワックスを高温よりに修正し、昼飯兼ねてチューリップの湯で湯治。ここって入ると肌がツルツルするアルカリ性だったんですね。これまで何度も入っていたんだけど、初めて気づきました。いつも大会当日のゴール後だったので、人が多くて有効成分が消費されつくしてたということかね?。
 
 この度、入浴前に体重を量り、風呂から出た後にたっぷり水飲んで再び体重を量ってみたのだが、十分に水を摂ったつもりでも体重が500グラム減っていた。これは自分で思う以上に水を補給する必要があるということ。レース本番も同様です。
 風呂から出て昼食を摂り、お土産を購入して文化交流センターTOMで受付を済ませる頃には吹雪はじめていた。しかし風が強いため降ってる割には積雪が増えない。言い換えれば吹き溜まりはかなり凄いことになってるということ。
 夕食後再びワックスを修正し、黒いのに塗り替えた。生塗りなので手軽にワキシングできるが、高価なワックスを何度も塗り替えて消費していることに気づきしばし落ち込む・・・・そのまま就寝zzzz・・・
 
 
2月24日
 未明から風が一段と強くなり風の音でよく眠れなかった。朝になっても相変わらずの吹雪。コース整備は行われているようだが大会は決行されるのだろうか?
 6時頃に大会の是非をサイト上で知らせるとのことなので、とりあえず朝食をとり食堂でテレビを見ながら情報を待った。
 6時前にフロントの電話が鳴った。時同じくしてモバイルサイトも更新された。
 5時55分中止決定
 
 明るくなるにしたがって外の様子が見えてきた。吹き溜まりは1m以上積もっている。道路の向こうの三台の車は揃って雪の三角帽子
 以降、やることないのでコーヒー飲みながらテレビ観てのんびり過ごす。あちこちで雪が猛威をふるっている様子。
 
 昼食を兼ねてチューリップの湯に行くため外に出るとむちゃくちゃ寒い。露天風呂に入ると、首から下はいいのだが顔が痛いし髪がパリパリに凍結。なんだか未体験ゾーンに突入した感じだ。。爆!
 
 昼飯を食い終わる頃には雲が薄くなりところどころ青空も見え始めた。風は相変わらず強く冷たい。チューリップの湯もTOMも例年の賑わいはなく、さびしい雰囲気。これが本来なんでしょうね。TOMの図書館で時間つぶしついでに、金曜日に上川で見たワシを鳥類図鑑で調べたら、オジロワシじゃなくてオオワシの方だった(上川で見たのは肩が白かったんですよ。)。
 晩ご飯はジンギスカン。この日も食べ過ぎたのは言うまでもない。
 
2月25日
 からりと晴れてマイナス25℃
 朝食後に宿の精算を済ませバスで遠軽へ移動。遠軽に着く頃には気温も上がってきたようで、歩道の雪も溶け始めていた。お日様のエネルギーってすごいですね。
 帰路のオホーツク4号は50分遅れで運行。昼飯用に十数年ぶりにおかむらのかにめしを買って乗車した。
 列車に乗り込みかにめしを食べた後はただひたすら寝て過ごす。
 列車は55分遅れで札幌駅へ到着。金曜日とはがらりと変わってすっぽりと柔らかい新雪に包まれた街路。交差点で発進するタクシーのリアタイヤから発するスリップ音。数日前には想像も付かなかった札幌の風景。とりあえずテムズへ行ってちょこっと買い物し、ホテルの向かいにあるラーメン屋で夕食。ここのメニューは越後とか尾張とか地名になってて面白い。しかもこれまで北海道で食べたラーメンの中でもトップクラスの味でした。「信玄」お勧めです!
 その後はホテルで世界卓球観ながら就寝
 
 
2月26日
 8時にホテルをチェックアウトし二条市場へ向かったのだが、狸小路のタイルはツルツル滑るし、交差点もツルツルテカテカで車も事故してるし、危険なので途中で断念。とはいえまだ時間が早いためポールタウンもオーロラタウンもまだほとんどの店が開店前。駅地下も同様にシャッターシャッターシャッターシャッターシャッター。とりあえず千歳空港行きの切符を買って本屋で立ち読みし駅ビルをうろうろ。リオンドールで早めの昼飯と考えていたのだが、開店まで時間があるのでマックでブランチ、腹が太ると一気にリオンドール行く気が失せたので、かなり早いが空港で時間をつぶすことにした。
 11時25分発エアポートに乗ろうとホームへあがると、なんと運行見送りだそうな。まあ、急いでるわけではないので次の快速エアポートを待って乗車、うたた寝しながら空港へ。
 空港に着いたらまずはお菓子の試食とワインの発送。
 
 千歳空港で時間を持て余したら到着ロビーで過ごすに限る。人少なくて静か。大きな水槽がいくつか置いてあって中に魚が泳いでいる。でも何故か南方の魚が・・・笑)。
 外を見るとかなり吹雪いてるようす。千歳だから大丈夫とは思うが少し不安(期待)がよぎる。前日のテレビで見た予想天気図には山陰に低気圧があったよな〜。
 搭乗案内の電光掲示板を見ると、飛行機は福岡か伊丹へ降りる可能性があるらしい。
 結局又低気圧に悩まされるのか????そういえば低気圧は渦巻き=螺旋だ・・・ぞぞぞ〜〜〜〜。
 っといらぬ心配したものの無事に広島空港へ着陸。その後もバス→JR→路面電車と順調に乗り継ぎ帰宅。
 ワシの帰りを一番熱烈に歓迎してくれたのはパイン君でした。可愛いの〜おまいは。。。
 
 
エピローグ
 二年連続で低気圧にやられました。
 大会の中止は非常に残念で、低気圧の通過が前か後ろに一日か二日ズレてくれていればという気持ちも無いわけではない。
 しかし、低気圧の通過が三日早ければ私は北海道へ来れなかった。二日早ければ札幌で足止めされ日程変更を強いられただろうし、一日早ければ私はいいが、現地入りできない参加者が沢山発生しただろう。一日遅ければ何年か前の二の舞。二日遅ければ札幌で足止めされ、広島へ帰れなかっただろう。
 低気圧の通過が大会当日だった事で、宿のおばちゃんをはじめ、この大会でしか会うことのない友人に二年ぶりに会うことができた。
 今回の中止は、もう少し体を休め、加えて、これまでに中湧別で得た人のつながりを大切に維持しなさいとの二つのメッセージとして受け止めようと思う。
 
 
 
20080227:up
 
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