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| 『原子力戦争』['78] | |||||
| 監督 黒木和雄
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| 先頃『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』['85]を観て、『人魚伝説』は観ているものの『原子力戦争』『聖母観音大菩薩』は未見なので、いつか観られるといいなと書いていたら合評会主宰者が提供してくれたものだ。だが、観始めると既視感があって確かめると、二十九年前にビデオ鑑賞をしていた。お話は概ね知っていたのだが、観ていたのであればもっともな話だ。 折しも最も危険な立地条件にあると言われていたように思う浜岡原発の再稼働審査に係る不正データ提出問題がニュースになったところでもあり、今なお続く電力会社のブラック体質に、長らく汚れきった足を洗うことの難しさを改めて思い知らされるような気がした。 本作でフィクションとして仕立て上げられた「死人に口なし」の隠蔽工作からすれば、地震想定に関するデータを不正に操作することくらい朝飯前ということなのだろうか。田原総一朗による原作が小説となっているところからは、ノンフィクションやルポルタージュとしては書けないような闇を抱えているということなのだろう。 学会や労働組合、地域の有力組織、警察、報道機関までもカネと利権の圧力で雁字搦めにしていることを偲ばせて、鯛は頭から腐ることを映し出していたように思う。そういう意味では、今なお非常にアクチュアルな問題を扱っているわけだが、ドラマとしての運びや筋立て、人物造形には、かなりの無理があるように感じられた。斯界の権威たる神山教授(岡田英次)を乗せた高級車で教授に侍っていた 原発技師未亡人の明日香(山口小夜子)の実に謎めいた造形は、いったい何だったのだろう。拉致されたはずの青葉翼(風吹ジュン)が姉の遺品となる日傘を差してトンネルを抜けていくイメージショットの企図するところも掴み兼ねるところがあった。 だが、それらを補って余りある原発プロジェクトのアウトローな問題構造の摘示がなされていたような気がする。本社からの圧力に屈して助手から見限られる新聞記者の野上(佐藤慶)の有り体は、偽装心中を施されたと思しき風俗嬢である青葉望のヒモ坂田(原田芳雄)が原発施設に立ち入ろうとして職員から制止される場面での、撮影自体の制止を捉えた動画を映し出しているドキュメンタルなインパクトには及ばないまでも、然もありなんという気にはさせられる。原発施設の職員による撮影制止場面は、当然ながら許可を得ての作品使用ではないだろうから、今だと問題視されるに違いない。当地では公開に至らず未見である『Black Box Diaries』問題のことを想起した。 すると、学友から「黒木和雄が『竜馬暗殺』『祭りの準備』に続いて原田芳雄と組んだ映画だったので、ヤマさんがご覧になってないというのは不思議だと思ってたんですが、やっぱり観てらしたんですね。僕は封切りで観たっきりなんで、ずいぶんと記憶が薄れてますが、今見ると当時の社会状況が反映されてて、ドキュメンタリー的な生々しさが余計に際立つんじゃないかと想像します。あの入り口で撮影を断られちゃうシーンは、たしか福島第一原発ですよね。」とのコメントが寄せられた。むかしは、ビデオ鑑賞やTV視聴は観賞済みにカウントしていなかったからなのだろう。モニター画面が大きくなり、ノーカット放送が増えて事情が大きく変わってきた今は、観賞済み作にカウントしているが、季刊誌に『本物の味の贅沢な味わい方』との拙稿などを寄せていた三十余年前には、スクリーン観賞作のみを以て既見としていた覚えがある。学友が触れていた原発は、僕も福島原発だと思った。3.11.以後、随分と見慣れた佇まいと同じだったからだ。崖の上で、これに勝る臨海はないだろうと思われると同時に、この高さを越えてきたのかと驚きを与えてくれる立地が映し出されていた。 | |||||
| by ヤマ '26. 1.12. DVD観賞 | |||||
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