映画とともに
小説 の舞台
小説「花と龍」は、1952年6月20日~1953年5月11日まで読売新聞に連載された火野葦平の自叙伝小説です。

「花と龍」の舞台
© 新潮社映画 の舞台
映画「花と龍」の脚本は松竹大船の池田忠雄と「七人の侍」の橋本忍の合作で、日本映画における異色ある存在を示していた佐伯清が監督しました。 キャストは玉井金五郎を藤田進が、お京を島崎雪子が演じました。写真は若松南海岸通りでのロケの撮影風景です。

若松南海岸において
左から、藤田進、島崎雪子
© 若松探検隊
若松南海岸において
左から、島崎雪子、藤田進
© 若松探検隊若松ロケ の礎
若松で映画のロケが盛んに行われるようになったのは、大きく3つの要因が挙げられるのではないでしょうか。①火野葦平が拠点を若松(河伯洞)に置きながら、東京の阿佐ヶ谷(鈍魚庵)で文学活動を続けていました。 いわば若松と東京をエネルギッシュに往来しながら活動していました。②若松で起きた現実の出来事をとりあげて小説にしていました。③今も昔もそうですが、映画界と文学界は密接につながっていることです。 それに加え、葦平が人とのつながりを大切にする人柄にあったことは残された寄稿文などで察することができます。若松の市民がロケに積極的に協力、参加したことも手伝って「若松ロケの礎」を築くことになりました。

河伯洞での懇親会
© 河伯洞最後列左から、池田忠雄(脚本)、一人おいて火野葦平(原作)、佐伯清(監督)、星美智子(君香)、岩下俊作(作家)
後列左から、栄田清一郎(企画)、マキノ光雄(企画)、
前列左から、藤田進(玉井金五朗)、山根寿子(マン)、島崎雪子(お京)、母堂マン、波島進(玉井勝則)
映画・ドラマ化 された作品
2022年現在、火野葦平の原作で映画化された作品は23本*1で、この他にテレビドラマが36本*2存在します。数が多い背景には戦後の映画ブームにあると思います。1956年は日本映画が大量に量産された年で、映画館への来館者が1958年には11億27百万人と過去最高を記録、その後は一般家庭へのテレビの普及とともに減少に転じることになりました。
しかし、葦平の作品が人気が高かったことは紛れもない事実です。
戦後に初めて映画化された葦平原作の映画は、1951年の「新遊侠伝(前篇)」,「遊侠往来(後篇)」で、「新遊侠伝」が若松を「遊侠往来」が東京を舞台にしており、葦平はこの映画で役者デビューしました。
その後の1954年に映画化された「花と龍」の第一部,第二部もストーリーこそ違いますが、若松と東京を舞台にした二本立ての構成の映画で、ともに佐伯清監督による作品です。
この後に続く「花と龍」の映画は6本、映画のリメイクでTVドラマ化されたものを含め6本あり、主役の玉井金五郎を演じた役者は古い順に、藤田進,鶴田浩二,石原裕次郎,辰巳柳太郎,村田英雄,高倉健,渡哲也,高嶋政宏でした。

若松市街において
左から、火野葦平、山根寿子(馬上)
© 河伯洞
愛知時計店において
左から、佐伯清、玉井マン、山根寿子、火野葦平、藤田進
© 河伯洞精霊若松マップ について
郷土史の記録の中に映画やドラマのロケ地が記録され、図書館等に保管されることは少ないと考えられますが、出演する俳優とロケ周辺の建物などの映像は、各時代を写した記録として非常に有効であるため、
ロケ地を貴重な郷土史の一部としてとらえることにしました。特に地図の緯度・経度は不変ですが、ロケで撮影された日から時間の経過とともに周辺の環境が変化していくからです。
また、歴史資料の記録(情報)は紙媒体で残されることが一般的ですが、いまや誰しもがスマホを持ち、それを使って情報を入手する時代に変貌しています。
このような理由により、いつでも・どこでも・だれでも・簡単に、いつ・どこで・だれが・何のロケを行ったかという情報が入手できるよう、Googleマップを利用してマッピングしたものが
「 映画・ドラマのロケマップ」です。
また、郷土資料を調査していて1970年以降の文化的な記録が少ないことに気がつきました。ゆえにそれを補完するためにマップをメモがわりにして、
「 失われた映画館(解体)」や
「 史的建造物、来若した著名人等」
を作成しました。
なお、映画業界の関係者やその企業向け情報として、1951年~2022年までの「 若松ロケ地リスト」を作成しておりますので、過去の映画作品や今後の若松でのロケの参考情報としてご活用ください。
以下、利用にあたる注意点です。
- 一つの映画、テレビドラマに若松の複数の場所でロケが行われていますが、原則一つの場所をマップに表示しました。
- ロケを行った正確な日付がわからないため、作品の公開日、放送日を採用することにしました。
- 文献にロケの記録があるものの、映像から場所が特定できていないものは詳細不明と入れています。
- このサイトのリンクは原則として自由です。事前の連絡は必要ありませんが本ホームページへのリンクである旨を明示してください。
- 掲載している情報は、「個人の調査」や「個人の所見」に基づくものであり、使用にあたっての被害、損失について何ら責任は負いません。
- 掲載している情報は、「私的使用のための複製」や「引用」など著作権法上認められた場合を除き、無断で複製・転用はご遠慮ください。
- 本サイトは、予告なしに内容を変更または削除することがあります。特にマップの説明欄に yotubeの共有リンクを入れていますが、投稿者の削除で映像切れすることがあります。あらかじめご了承ください。
【出典】
*1 日本映画情報システム ( Linkで作品詳細ページへ)
公開日 | 制作 | 作品名 | 監督 | 主演 | |
1 | 1939年10月14日 | 日活多摩川 | 土と兵隊 | ||
2 | 1942年1月14日 | 大都映画 | 戦陣訓 母と戦場 | ||
3 | 1944年12月7日 | 松竹大船 | 陸軍 | ||
4 | 1951年5月5日 | 新東宝 | 新遊侠伝(1951) | 佐伯清 | 小堀誠、藤田進、本人出演 |
5 | 1951年5月18日 | 新東宝 | 遊侠往来 | 佐伯清 | 藤田進、森繁久彌、本人出演 |
6 | 1951年12月7日 | 東宝 | 赤道祭 | 佐伯清 | 藤田進 |
7 | 1953年7月22日 | 東映京都 | 残侠の港 | 佐伯清 | 藤田進 |
8 | 1954年3月3日 | 東映東京 | 花と竜 第一部 | 佐伯清 | 藤田進、本人出演 |
9 | 1954年3月24日 | 東映東京 | 花と竜 第二部 | 佐伯清 | 藤田進、本人出演 |
10 | 1954年11月17日 | 大映東京 | 馬賊芸者 | 島耕二 | 京マチ子 |
11 | 1956年10月16日 | 東宝 | 裸足の青春(1956) | 谷口千吉 | 宝田明 |
12 | 1957年5月21日 | 松竹・京都 | 伴淳・森繁の糞尿譚 | 野村芳太郎 | 伴淳・森繁、本人出演 |
13 | 1957年9月15日 | まどか | ただいま零匹 | 藤原杉雄 | 佐野周二 |
14 | 1958年10月21日 | 歌舞伎座 | 人魚昇天 | 田口哲 | 三橋達也、本人出演 |
15 | 1958年10月21日 | 松竹・京都 | 女侠一代 | 内川清一郎 | 清川虹子、本人出演 |
16 | 1962年12月26日 | 日活 | 花と竜 | 舛田利雄 | 石原裕次郎 |
17 | 1965年11月20日 | 東映京都 | 花と龍 | 山下耕作 | 中村錦之助 |
18 | 1966年1月13日 | 東映京都 | 続花と龍 洞海湾の決斗 | 山下耕作 | 中村錦之助 |
19 | 1966年11月20日 | 日活 | 新遊侠伝(1966) | 斎藤武市 | 小林旭 |
20 | 1969年4月10日 | 東映京都 | 緋牡丹博徒 二代目襲名 | 小沢茂弘 | 藤純子 |
21 | 1969年5月31日 | 東映東京 | 日本侠客伝 花と龍 | マキノ雅弘 | 高倉健 |
22 | 1970年12月3日 | 東映京都 | 日本侠客伝 昇り龍 | 山下耕作 | 高倉健 |
23 | 1973年3月17日 | 松竹 | 花と龍 青雲篇 愛憎篇 怒涛篇 | 加藤泰 | 渡哲也 |
*2 テレビドラマデータベース ( Linkで作品詳細ページへ)
放送日 | 放送局 | ドラマ名 | 演出 | 出演 | |
1 | 1953年8月21日 | NHK | 河童譚 | 木馬座、語り手:小島洋々 | |
2 | 1953年9月18日 | NHK | 河童潭 | 木馬座、影絵:藤城清治 | |
4 | 1957年8月6日 | NHK | 怪談宋公館 | 永山弘 | 浜田寅彦12、西村晃12、福原秀雄12… |
5 | 1958年4月8日 | NTV | からたちの花 | 安藤勇二 | 荒木玉枝、鈴木光枝 |
6 | 1958年4月8日 | RKB | 博多人形師 | 谷川清明 | 下川辰典、下川辰平 |
7 | 1958年5月5日 | NHK | 花だらけの街 | 和田勉 | 林美智子、谷口完 |
8 | 1958年9月7日 | NHK | 虹の仲間 | 田村毅、細谷一郎 | |
9 | 1958年11月28日 | RKB | 消防芸者 | 谷川清明 | 筑紫あけみ、龍崎一郎 |
10 | 1959年2月22日 | KR | 軍艦 | 岡本愛彦 | フランキー堺、南原伸二 |
11 | 1959年3月16日 | NET | 星みがき | 松本克平、水谷八重子 | |
12 | 1959年4月6日 | NET | プリンス岩戸を開く | 山本隆則 | 佐野周二、南美江 |
13 | 1959年6月14日 | NHK | 最後の橋 | 井上博 | 山田五十鈴、里見京子 |
14 | 1959年8月16日 | NHK | 女の剣 | 古閑三千郎 | 清川虹子、松本克平 |
15 | 1959年11月17日 | 花と竜 | 鶴田浩二、三条美紀 | ||
16 | 1960年1月23日 | KTV | 河豚 | 梶川武利、千典子 | |
17 | 1960年2月8日 | NHK | 黒い歌ある石炭仲士 | 和田勉 | 日高澄子、万代峰子 |
18 | 1960年2月14日 | NET | 大砲と撫子 | 柳永二郎、市川翠扇 | |
19 | 1960年2月17日 | NTV | 悲恋瓦屋節 | 香川京子、外山高士 | |
20 | 1960年5月8日 | CX | 花環 | 尾上松緑、吉川満子 | |
21 | 1961年2月24日 | NHK | 山吹の歌 | 角田嘉久 | 河野秋武、福田公子 |
22 | 1961年3月29日 | NTV | 河豚 | 丹波哲郎、津島恵子 | |
23 | 1961年7月6日 | RKB | 山さん | 世良周三 | 宮口精二、松下沙稚子 |
24 | 1961年9月1日 | KBC | 山吹の賦 | 藤間勢之助、花柳和光 | |
25 | 1962年3月16日 | NTV | 糞尿譚 | 井上至久 | 多々良純、藤田進 |
26 | 1962年6月15日 | NHK | 最後の枝 | 岸田利彦 | 清川虹子、三津田健 |
27 | 1963年2月24日 | RKB | 河豚 | 久野浩平 | 鈴木瑞穂、奈良岡朋子 |
28 | 1963年6月21日 | RKB | ただいま零匹 | 世良周三 | 永井智雄、富士真奈美 |
29 | 1963年12月1日 | NET | 花と竜 | 辰巳柳太郎、島田正吾 | |
30 | 1964年9月19日 | TNC | 珍遊侠譚 | 人見きよし、青島幸男 | |
31 | 1964年10月25日 | NTV | 村田英雄の花と龍 | 野崎元晴 | 村田英雄、久邇京子 |
32 | 1964年11月10日 | TBS | 女侠一代 | 山本一夫 | 美空ひばり、林与一 |
33 | 1966年4月9日 | CX | 花と龍 | 村田英雄、大江美智子 | |
34 | 1966年10月2日 | RKB | 秋霜 | 小部正敏 | 小山明子、清水まゆみ |
35 | 1970年3月19日 | NET | 花と龍 | 舛田利雄 | 渡哲也、倍賞美津子 |
36 | 1992年1月4日 | TBS | 花と龍 | 久野浩平 | 古手川祐子、高嶋政宏 |
ロケ地マップ 制作
若松探検隊
北九州市若松区を個人的な立場で紹介するサイトです。1999年に開設しました。 2022年に若戸大橋が国の重要文化財に指定されたことを機に、今まで配信していたロケ地の情報をマップにまとめてみました。
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