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電子スピンは幻想である。
テレポーテーションのトリック。 (14/8/31)
テレポーテーションは よくフィクションの世界にでてきて、任意の離れた距離の地点に物体が瞬間移動するものである。
何と 1993 年、ベネットが量子状態のテレポーテーションが可能なことを示した。(Phys. Rev. Lett. 70, 1895 - 1899, 1993.)
それ以来、いろんな量子テレポーテーションの実験が報告されるようになった。
しかし、量子テレポーテーションは本当に起こりうるのだろうか?
このページでは、これらテレポーテーションが 単純に古典的な電磁波を使った古典力学の実験結果であることを示す。
(Fig.1) テレポーテーション?
この実験 (Nature 390, 575-579 1997) では、パラメトリック下方変換によって、エンタングルした光子ペア 2 と 3 を発生させている。
非線形結晶内にポンプ光が押し込まれ、それが2つの光子に分裂する。
これらの光子対は互いに直交する偏光を持つ。(水平 (H) と 垂直 (V) 偏光)。
私達は 光子2と3のどっちが 水平 (もしくは 垂直) 偏光か 分からない。
ただ、それらが互いに直交していることだけ分かっている。
( もちろん 光子が点状の剛体球だとしたら、偏光すること自体不可能なため、これらは単純に 偏光した古典的な電磁波であることはいうまでもない。)
2つの電磁波の偏光が互いに垂直(もしくはある決まった角度)であることが分かった時点で、これらの電磁波は 自動的に エンタングルした(もつれた)光子対 ということになってしまうのである。
つまり、”ミステリアス”な エンタングルメントの現象は 量子力学によれば 非常に簡単に発生し得るのである。
例えば、このページで示したように、2つのイオン粒子のペアを 同時に振動させたときでさえ、それらは 自動的に もつれたイオンペアになってしまうのである。
しかし、我々は そんなに容易に "ミステリアスな" エンタングルメントの状態を受け入れていいのだろうか?
このページ に示したように、もし 古典的な電磁波を用いると、これらの”ミステリアス”な エンタングルメント状態を 自然な現象に置き換えることができた。
これは つまり エンタングルメントという幻想 は 光子という 現実では存在しない ものによって生じることを意味している。
( 少しチェックしてもらうと気付かれるとおもうが、これらの実験は 必ず "光子" という言葉を用いており、"電磁波" とは絶対に表現していない。ここがトリックである。)
上で述べたように、光子2と3のエンタングルメント状態は EPR 光子対発生装置 で生成される。
次に、ビームスプリッター ( beam splitter ) を使って、光子1と光子2をもつれた状態にする。
UV-pulse が EPR 発生装置の mirror で反射されて 再び crystal の中を通り抜けると、また別の光子対が生成される。
そのうちの1つが 光子1 となる。(Fig.1 参照のこと。)
(Fig.2) ビームスプリッター (ALICE).
Fig.1 に示したように、光子1と光子2は 反対側から ALICE の ビームスプリッターに到達する。
光がスプリッターで 反射されると、電磁波の位相は 逆転する (= 固定端)。
光がそのまま通過するときは、その電磁波の位相もそのままである。
この実験は 次に示すように 古典的な電磁波の原理を用いている。
(Fig.3) ビームスプリッター (ALICE)。
ここでは 水平 (H) と 垂直 (V) 偏光の電磁波である。
電磁波の最初の強さ (intensity) を "10" として、光子検出器は それらの光の強さが ある閾値 (= 6 ) 以上のときに 1光子として検出できると仮定する。
つまり、強さ "10" の光は 1光子 で 2光子 (= 12 ) ではない。
また、光の強さが スプリッターで 6 と 4 (= 通過 もしくは 反射 ) に分離するとする。
( 5 と 5 に分離した時は、どちらの検出器にも光子として検出されない。)
反射したときは、電磁波の 位相が 逆転する。
そのため 2つの電磁波が同じ偏光 ( HH もしくは VV ) を持つ時、それらは互いに 打ち消しあい、両方の検出器において 光子として検出されない。( Fig.3 の 上部の場合である。)
また, 異なった偏光 ( H と V ) の電磁波同士は 互いに干渉しない。
そのため 光 1 と 2 が異なった偏光のときは、それら両方とも 検出器で 光子として検出できる。
つまり もし ビームスプリッターの両側の 検出器で 同時に 信号が流れると、それは 自動的に 光子1と光子2が 異なった偏光状態になったという具合である。
(Fig.3') テレポーテーション ??
上で述べたように、光子2と3は 互いに 垂直な偏光をもつ。( H と V。 )
そして、ビームスプリッターの両側の検出器に 同時に信号が流れると、光子1と2は互いに垂直な偏光を持つことを意味していた。
これは 光子1と2を 検出器で検出したと同時に、光子3が 光子1と同じ偏光状態 に変化したことを意味する ( photon 1 = photon 3 )。
そのため、彼らは いわゆる テレポーテーションが達成できたと主張しているのである。しかし本当にそうなのだろうか?
これらの結果は、単に 私達がそれらの波の偏光を人為的に操作し、光子1と光子3が同じ偏光を持つように調節したにすぎない。
つまり、これらの結果を シンプルに 古典力学的な視点から説明できる。。
( "ミステリアス"な 量子テレポーテーションというものを使う必要がないのである。)
(Fig.4) テレポーテーション?
上のセクションでは、彼らは 水平、垂直偏光した光子対をもつれた状態としていた。
このセクション (Science 282, 706, 1998) では、違う位相成分をもつ電磁波2つを もつれた状態として利用する。
(それらの偏光は 同じとする。)
(Fig.5) エンタングルした2つの電磁波 ( α1 と α2 )。
Fig.5 に示すように それぞれの波 (= 光子 ) は cosine (= x ) と sine (= p ) 成分の波の 重ね合わせ ( superposition ) として表現される。
Fig.5 では、α1 と α2 の cosine 成分は 同じ 位相である。 ( x1 - x2 = 0。 )
また α1 と α2 の sine 成分は 反対の位相である。 ( p1 + p2 = 0. )
ここでは、 α1 と α2 を エンタングルした光子対として使用している。
(すでに述べたように、量子力学は いろんな状況で "エンタングルメント" という言葉を使用するのが好きである。)
また、Fig.5 からは 光子の粒子性をイメージすることは ほとんど不可能に近い。
もし、光子を 古典的な電磁波の合計したもの をみなせば、Fig.5 の状態は 簡単に受け入れることができる。
レーザーは、位相のそろった 人工的な光 (= コヒーレント光 ) を発生する。これは "誘導放出" と呼ばれている。
もちろん、これらの同じ位相の電磁波を得るには、同時に動いている たくさんの電子が必要になる。つまり、1光子のみでは、この コヒーレント光になることはできない。
しかし、量子力学は 同位相の光を どうしても 1光子 と結びつけようとしている。
そのため、この先入観が 後で説明するような ”シュレディンガーの猫状態” という 幻想を生じることになる。
一方で 自然放出 においては、いろんな位相の光が混ざっている。つまり 同位相の光というのは 非常に人工的なものだということだ。
(Fig.6) 振動する電子が電磁波を放出する。
最初に、入力光の 2倍の振動数の 光を放出させる。
入力光が強いとき、振動する電子は、しばしば 振動範囲の限度地点に到達する。
その限度地点では、電子はストップするため、それらの動きは不規則になる。
そのため これらの不規則な電子から放射される 電磁波も不規則になる。
そして、それらの中に 最初の光の振動数の2倍 (= 2f ) の電磁波も含まれている。
この電磁波は ミラー間で反射させて干渉によって増強させる。
次に、元の光 (= 振動数 f ) と 上の 2f の光 ( Pump light ) を 振動する電子に入射させる。
これら2種類の光が 互いに干渉して 合わさったものは 電子を 振動数 f で振動させる。
これによって もう1つの振動数 f の光子を発生させる。
結果として、同じ位相と振動数 (= f ) を持つ 2光子 (= 電磁波 ) を得ることができる。
これらの同じ位相の光子対を ”スクイーズド光”と呼ぶ。
この発生場所は Fig.4 の optical parametric oscillator ( OPO ) に相当する。
また この発生メカニズムから、光子の粒子性を 想像することは不可能に近い。
次に 互いに "逆位相" の sine 成分を持つ 2つの電磁波を生成する。( Fig.5 )
これらの電磁波を得るには、2つのスクイーズド光 ( 合計 4光子となる ) を ハーフビームスプリッター に入射させる。(Fig.7)
途中で位相を調節して、これら2つの位相差を 1/4 にする。つまり、1つが cosine, もう1つが sine 波になる。
(Fig.7) sine 成分の波のみ 逆位相にさせる。
このスプリッターでは、下方から入射する光が反射するときのみ、電磁波の位相が逆転するようになっている。
結果、Fig.5 に示す エンタングルした2つの光子 α1 と α2 を得ることができる。
ここで、次のように cosine 成分を x、 sine 成分を p と表す。
(Eq.1)
これは 次を満たす。
(Eq.2)
不確定性原理によれば、我々は 同時に 1光子の2つの値 ( x と p ) を得ることはできない。
しかし、重ね合わせ状態を保ったまま、2粒子の 2つの情報 ( Eq.2 のような ) は知ることができる。
また、次のもう1つの 状態の不明な 入力波 ( Vin ) を用意する。
(Eq.3)
ここで、 xin と pin の値は分かっていない。
これら2つの電磁波 Vin と α1 が Fig.4 の Alice の地点にある スプリッター (splitter) に入射する。
そして、それらのうちの1つの反射のみ、波の位相が逆になる。
これら混合した電磁波は Fig.4 の Alice のところの 2つの ホモダイン測定器 Dx と Dp のところに到達する。
例えば、Dxのところでは、 local oscillator 光 (= LOx) は、Vin と α1 の混合波の cosine 成分のみと干渉して それを増強させ、cosine 成分のみ測定する。
そのため、Dx と Dp の測定器では、 我々は 次の2つの情報 (= ix and ip ) を得ることができる。
(Eq.4)
スプリッターで逆位相になったため、Eq.4 では 1つは和で、もう一つは差になっている。
上で述べたように、不確定原理のため、我々は 2つの粒子の2つの情報を得ることができる。
また、量子力学によれば、2つの分かった情報をもつ これら2つの粒子は いわゆる エンタングルした状態にあることになる。(そのため、これを "ベル測定" と呼ぶ。)
ix と ip の情報は、Fig.4 に示すように、古典的な (classical) 手段で Bob 側に伝えられる。
振幅と位相の調整器 ( Mx と Mp ) は この光情報 (ix と ip) を変換して、 ミラー mbob のところで、EPR 光子 の1つである α2 とミックスさせる。
こうして α2 は次のように変化する。
(Eq.5)
ここで g は Bob 側の”ゲイン”で 光情報を output に変換する際の調整に関与する。
Bob 側で、ix と ip の情報に基づいて、g の値を 調整する。
この g の値を 1 に近づけると、次のように Vin が output (= ρout) に "テレポート" される。
(Eq.6)
Eq.2 と g = 1 を Eq.5 に代入すると、Eq.6 の結果が得られる。
また、次の フィデリティー (fidelity) を計算する。
(Eq.7)
これが 0.5 を越えると、量子テレポーテーション を達成できた、というのが彼らの主張である。
しかし、古典力学的な視点からこの実験を見ると、別に この結果は 当然の結果である。
どうして、我々は これらの結果を "ミステリアスな" 量子テレポーテーションであると主張できるのだろうか?
量子力学によれば、これらの状態は 多世界様の重ね合わせの状態ということになる。
だから、これらの結果は 量子力学的な視点からすれば、重要かもしれない。
しかし、古典力学的な視点からすれば、これらの結果は 特に驚くべきことではない。(”あたりまえ”の結果である。)
(あなたたちは どう思われるだろうか?)
量子力学的な 重ね合わせ (superposition) によれば、1匹の猫は 箱の中で同時に死んでいる状態と生きている状態になることができる。(= シュレディンガーの猫 )
しかし、量子力学の言うように、シュレディンガーの猫は 本当に実在するのだろうか?
上で述べたように、同じ位相で安定なコヒーレント光を得るには、たくさんの電子を同時に 振動させるだけの十分 強いレーザーを入射させなければならない。ここから 同位相の電磁波が放射される。
(Fig.8) 同位相のコヒーレント光。
そのため、コヒーレント光は 次のように表せるように たくさんの光子を含んでいる。
(Eq.8)
Eq.7 では、n は 光子の数を表しており、ここでは ポワソン分布に従っている。
ポワソン分布に従うということは、各光子は互いに独立に運動しているということである。
そのため、物理学者達は、同位相の光は 非常に”自然”な状態であり、古典力学的な波のうちの1つであると主張しているのである。
しかし、この説明は 非常に”不自然”である。
前に説明したように、自然放出では さまざまな位相の電磁波を放出する。
そのため、同位相のコヒーレント光は とても "人工的"なものなのである。
つまり 電磁波の位相が異なっており、かつそれらが混合している状態が 自然な状態なのである。
(ご存じのとおり、古典力学的な視点から 古典力学的な波は 他の古典力学的な波と 重なることができる。)
量子力学の物理学者達は、1つの光子は シュレディンガーの猫状態であると主張している。
なぜなら、1光子の波の位相を LOx や LOp を用いて 測定すると、それらの位相は Fig.9 のように決定できないからである。
(Fig.9) 1光子 = シュレディンガーの猫状態??
Fig.9 に示すように、1光子の電場は sine や cosine のようなカーブにならない。
(しかし、この状態は自然だと私は思うが・・。同位相のコヒーレント光は 非常に特殊でかつ”人工的”なものである。)
そのため、彼らは 1光子は 多世界様の状態 (= シュレディンガーの猫状態) と主張している。つまり、様々な位相の光子群の”重ね合わせ状態”であるとしている。
しかし本当にそうだろうか?
量子力学の物理学者達は いろんな状況で、多世界様の ”重ね合わせ (superposition)”を使用するのが 好きである。
ところで、我々は Fig.9 の 1光子状態を どのように得ることができるだろうか?
上の場合のように、スクイーズド光 (量子力学によれば 2つの光子を含む) を optical parametric oscillator で生成させる。
しかし、この場合は そのスクイーズドレベルを 非常に低くしなければならない。
ようするに、この装置はまれにしか スクイーズド光 を放出しない。
この弱いスクイーズド光を ビームスプリッターに入射させる。このスプリッターは 数パーセントしか光子を通過させない。
そのため、通過した1光子を検出できたときは、理論的には 反射側でも 1光子を検出できることになる。
(もちろん、この説明は 量子力学をベースにしたものである。)
また、通過側の光子検出器なしで、我々はいつスクイーズド光が放射されるのか予知することはできない。
つまり、この現象は ランダムでかつ まれにおこるイベントといえる。
古典力学的な視点から考察すると、とても弱い入力光のために、それらは 電子のうちのいくつかを 弱くかつ ランダムに振動させる。
(多くの電子を同時かつ 規則正しく 振動させるには、強い入力光が必要である。)
そして、それらのうちのいくつかが 検出器閾値以上の電磁波を放出し、それらのほとんどは スプリッターで反射されることになる。
また、これらの放出される弱い電磁波は 0 から 2.9 の 光子検出閾値の間を ランダムに変化している。
結果として、これらの波の位相がランダムになるのは しごく当然なことなのである。
そのため、この実験のみで、1光子が シュレディンガーの猫状態であると主張することはできないのである。
(あなたたちは、どう思われるだろうか?)
例えば、Fig.10 の 1つの”古典的な”波束を例に挙げる。
(Fig.10) 1つの”古典的な”波束の1例。
Fig.10 の関数のフーリエ展開は、
(Eq.9)
Eq.9 に示すように、1つの古典的な波束でさえ、様々な波長の波の束を含んでいる。
(しかし、我々は この状態に "superposition" なる用語をわざわざ使う必要はない。)
つまり、Fig.9 の結果は 古典的な視点からすれば とても自然なものなのである。
実際に、これらの シュレディンガーの猫 (?) 状態の波を テレポートするときは、幅広い振動数のバンドを含むため、微小時間ごとに入力波を分割して出力時に再構築するという手のこんだことが必要になる。
(もちろん、単振動数のレーザービームをフィルターなどで弱めていけば、単振動数の光子(= 電磁波 ) が得られる可能性はある。しかし 上記の方法はこれとは異なっている。)
ウィグナー関数は これらの分野でルーチンとして使用される。
そして、その負の値は 非古典的な波を表すとされる。
しかし本当にそうだろうか?
ウィグナー関数は、
(Eq.10)
いわゆる シュレディンガーの猫の状態 (= superposition ) は 次のように表せる。
(Eq.11)
Eq.11 の密度演算子は、
(Eq.12)
Eq.12 は 負の項を含んでいる。そのため 物理学者達は これは 非古典的 (= nonclassical ) だと主張しているのである。
彼らは、古典的な密度演算子は 次のようになると主張している。
(Eq.13)
しかし、すでに述べたように、ミステリアスな 重ね合わせ (superposition) の状態は たくさんの微弱な電磁波が互いに重なり合っているという 古典的な状態として自然に説明できるのである。
要するに、量子力学なるものを考慮しなければ、シュレディンガーの猫のような 奇妙な現象を考える必要はないのである。
そもそも、有名な シュレディンガーの猫というのは、シュレディンガー自身が、量子力学的な重ね合わせ状態を 疑って考案したものである。
(このケースは、”スピン”の実在性を疑っていた パウリのケースに似ている。)
2011/4/29 updated This site is link free.